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第2章 現実と仮想現実

第168話 いなくなった

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「……マジで殺されるかと思った」
「お疲れ様です。これ、飲んでください」
「お! アキちゃん、ありがとな」

 疲れ切ったみたいに、項垂れつつ切り株に腰掛けたジンさんへ、ポーションを差し出す。
 数はあんまり無いんだけど……こういう時はしかたないよね?
 そう思って、手渡したのはアルペ味のポーション。
 普通のだと、苦みで追い打ちかけそうだし。

「甘くて飲みやすい! アキちゃんがいて良かった……」
「お、大げさですよー」
「いやいや、そんなことは無いぜ?」

 瓶をしまいつつ、笑いながら話してくれるジンさんのおかげで、雰囲気が少し和らいだ気がする。
 良かった……でも、リュンさん、なんでいきなりあんなこと……。

「しかしさっきのは、アキちゃんの知り合いか?」
「はい……」
「普段からあんな……って顔じゃねーなぁ」
「……」

 リュンさんが戦いを好むってことは、なんとなく分かってたけど……あそこまで好戦的なのは知らなかった……。
 それに……まさか殺されそうになる、なんて……。

「アキ、大丈夫?」
「うん……ごめん」

 ジンさんの反対側から聞こえた声は、いつもの彼女とは違い、なんだか感情を感じられる。
 ラミナさんだけじゃない。
 声には出さないけど、ハスタさんも……リュンさんがこんなことをしてくるなんて、思ってもなかったんだろう。
 でも……。

「……よし! そろそろ作業再開しましょう!」
「だ、大丈夫か? アキちゃんだけでも、もう少し休んででも良いんだぜ?」
「いえ、大丈夫です。それに……たぶん体を動かしてる方が、良いですから」
「そうか……」

 「よし、じゃあやるか!」と気合いを入れながら、ジンさんは切り株から立ち上がる。
 そんな彼に続いて、僕も立ち上がり、インベントリから木斧を取り出した。



「そんなことが……。すまない、近くにいれなくて」
「い、いえ、大丈夫です! アルさんのせいじゃないですし……ジンさんも守ってくれましたから」

 申し訳なさそうに、頭を下げるアルさんに、慌てて手を振り、そう断る。
 それでも中々頭を上げてくれないアルさんに苦笑しつつ、僕は頬を掻いた。

「そ、それでアルさん。なんでこんなに遅く?」
「あぁ、そうだった。ヤカタ……だったか? そんな名前の人が、アキさんを探しててな」
「ヤカタさんが?」
「ああ。なんでももう1人のリーダーの……なんだったか」
「多分、シンシさんのことかな?」
「そうそう、そのシンシさんがいなくなったとかでな」
「え!?」

 シンシさんがいなくなった!?
 ログアウトしてるとか、用事でログイン出来てないだけとかじゃなくて?

「その、ログインしてないだけとかは……?」
「いや、一応そっちでは有名人みたいでな。フレンドからログインは確認出来てるみたいなんだが……」
「連絡が繋がらないってこと?」
「そういうことだ」

 それって、一体……。
 シンシさんには、ヤカタさんと一緒に、作業場の設備を任せてたはずなんだけど……。
 そのヤカタさんが困ってるってことは、本格的に見つからないってことなんだろう。

「えっと、でも僕も知らないですよ?」
「ああ。そうだろうと思って、一応伝えておくとだけ、あっちには言ってきた」
「あ、ありがとうございます……」
「しかし、リーダー格が見つからないというのは、結構問題だな」
「そうですよね……」

 シンシさんは服飾系のリーダーだったし、服飾は拠点の設備でも必要なところが多いはずだし……。
 でも、シンシさんが誰にも黙っていなくなるとは思えないんだけど……。
 あの会議の時でも、僕に対して胸を張ってチームの力を見せるって言ってたんだ。
 だから、シンシさん自身の意思で消えるとは思えない。

「となると、消えざるを得ない状況……?」
「む? 何か思いついたのか?」
「いえ、思いついたというか……。シンシさんがいなくなるとは思えないので、逆なんじゃないかなって」
「逆?」
「うん。シンシさんがいなくなったんじゃなくて、シンシさんがみんなの前に姿を現せれない状況になってる、とか」
「なるほど……」

 でも、普通……念話くらいなら使えるはずなんだよね……。
 それすら無いってことが、よく分からない。

「でも、今のところどうしようもないですね……」
「そうだな……。俺の方でも気にしておく」
「お願いします」

 そんな話をしながらも、ある程度の樹は伐ったし、伐採はここで一旦ストップかな?
 アルさん達も、明日はダンジョンに向かう予定だし、僕も明日は拠点で手伝えることをした方が良いかも。
 それに……森は、危険かもしれないからね。
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