多機能型特別公衆便所 ==特便==

辻 野乃子

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case1 ~人形少女と虚空リーマン~ #2

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 ペタンと座り込み、真っ直ぐにこちらを見つめるそのは「おばさん」と呼ぶにはあまりにも可愛らしく、それどころか"女性"と呼ぶにしても些かに幼く見える。3秒ほど思考が止まる―――。イヤホンを外し、「お気に入り」フォルダを閉じて、スマホをしまい現実と向きあう。

 ......⁉。。ん?ここ特便だよな?何で?・・・美少女...⁉はい?何故に?whyにこんなトコに? え! 未成年⁉ アレ...おかしくね??ここ特便やんな??? 
オレがを隠せずにいるとソノ"美少女"は立ち上がり俺に話し掛けてくる。

「ええと…はじめまして。あの・・・大丈夫ですか?」

 ハッ!! 透きとおるような美しいお声で、オデの魂(ソウル)は現世ゑと引き戻される。

「ああ…!大丈夫だよ・・・。あ、あまりに綺麗なお嬢さんだったから…つい驚いてしまってね...」必死にを装い

「えっと・・・君って、そのー・・・」
 脳内を検索して何とか次の言葉を搾り出そうとするが、上手くネットワークに接続できない。すると何かを察した様子の彼女がこう切り出す。

「あ…こう見えて成人済みなので…その・・・」
「そ・・・そっか!そりゃあそうだよね‼ハハハっ...」

 そうかそうか、合法か。当然だ。【清掃員】は公的な手続きを踏んで初めてなれるものだし、冷静に考えると未成年な訳がない。。。

 改めて目の前の美少女をじっくりと観察する。そのご尊顔には、まだあどけなさが残るが、見るからに育ちのよさそうな上品な雰囲気もあり、ギリギリ20歳...いや、18歳にも見えなくはない。

 艶のある滑らかな髪、、きめ細かいシルクのような肌、、、スラっとしたしなやかな体躯・・・。溜息が出るほど美しい。。。もはや浮世離れしたそのお姿は、少し力を入れるだけであらぬ方向へ曲がってしまいそうな関節も相まって、西洋人形を彷彿とさせる美しさである。

 ・・・・・いや。改めて冷静に考えてもおかしい。ここは間違いなく【特便】だぞ。だがそれでは!! この美しい少女が【清掃員】だということになってしまう...
 断じてあり得ない。。。アンビリーバブルである。
【清掃員】といえば、ブス・地雷・BBA・・・あるいは、それらの化合物だと相場が決まっている。「美しい」や「可愛い」などといった類の形容詞を付けることが許される【清掃員】など存在しない筈だ!そんなものはペガサスやユニコーン、天馬やグリフォンになどといった空想上の生物に等しい―――。

 "妖精"...!! そうか!それならば合点がいく。その方が、この"美少女"=【清掃員】などと考えるより遥かに自然である。。。

「あのぉ...どうかされましたか?」
 妖精さんが少し困ったように語り掛けてくる。
 しまった!!ジロジロと見つめ過ぎた・・・。

「ああ、ゴメンね!君があまりにも可愛くて、つい見とれちゃったんだ。」
(し...しまったぁ~~~!!!)
 下手な誤魔化しは通用しない気がしたとはいえ、ありがちで気持ちの悪い本音が口をついて出てしまう。ドン引き待ったなし――かと思いきや、、、

「あ..ありがとう…ございます?...」
 そう言うと so cute な はにかみsmile をこちらに向けてきた。それを見た俺は、即座に180℃回転しその場にうずくまる。

(か、、、かわえぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!!)
 目頭が熱くなり鼻の奥がツンとする。視界が徐々に白く染まってゆき、俺の意識は天へと昇っていくのであった・・・・・・。

「ええっ⁉ だ…大丈夫ですか!!」

 ――慌てた様子で使が脳内に直接語り掛けてくる。天使様が俺の肩を揺らす度、その御言葉の残響が脳内でこだまする。。。そうしてフッと正気に立ち返る――。

 ・・・ふう、あぶないあぶない。危うく我の精神(スピリット)が fly away(フライアウェイ) するところだった―――。一呼吸置き、再び少女の方へと向き直る。
 ・・・・・。ファンシーな羽根も、頭上の光輪も見当たらず、、後光も差していない。。。ふむ…やはり人間のようだ。

 一人で納得する俺を他所に、彼女は驚きと困惑に満ちた様子である。クリクリしたお目々が心配そうにこちらを見つめている…。早く自然な流れに戻して、安心させてあげなければ...。

「はっはっは。びっくりさせてすまなかったね。少し――天界と交信していただけだから…何も心配はいらないよ――。」
「・・・(?)そうですか(??)。それならよかったです...(???)」
 うむ、上手く軌道修正できたようだ。彼女も安堵の表情を浮かべているのが分かる。

 ...しかし何度見返しても、純情可憐なその少女の姿は、下世話でアダルトな雰囲気の漂うこの空間に、全くと言っていい程マッチしていない。

 妖精や天使の類ではないとして、現実的に考えるならば何かの詐欺や質の悪いドッキリといったところだろう。だが、先ほどのを見てしまった後では、この娘に「他者を陥れてやろう」などといった悪意があるとは全くもって思えない。

 あまり考えたくはないが…むしろこの娘の方が、何かの犯罪に巻き込まれ利用されている可能性も否定できない。【清掃員】の個人情報についてあれこれ訊くのはルール違反ではあるが...もし本当にそうならば確かめる必要がある。深入りしない程度にそれとなく尋ねる。

「ところでお嬢ちゃん・・・なにか困ってることはないかな?おじさんで良ければ助けになるよー。」
 それを聞いた彼女はキョトンとした様子で、何が何だか分からないといった顔をしている。フム...どうやらそういう訳ではなさそうだ。一先ずは良かった良かった――。

「私は大丈夫ですよ?... それより…おじさんは、私に何かして欲しいこと...ないですか…?」
 彼女は少し俯いて、モジモジしながら訊いてくる。頬はポッと赤く染まり、伏し目がちにチラチラとこちらを見ている。

 ・・・シて欲しいこと、、、?彼女が自らの意思でここにいるという事実や、恥じらいに満ちたその態度から察するに...それはつまりアノ性的なご奉仕のコトだろう。

 全身の血液が下半身へと流れていくのを感じる。この美少女とあんな事やこんな事が出来る...?あまりにも魅惑的な申し出が脳内を侵食し、思考力を奪っていく―――。

 素性も目的も一切分からぬ美少女からのお誘い・・・何か裏があると考えるのが順当だが...頭の中は目の前の少女の事でいっぱいになり、考えがうまくまとまらない…。

 未だ謎に包まれた『その少女の正体』を、辛うじて機能している脳内ネットワークから、ようやく探し当てた "訳あり" という都合の良い一言で片付ける。

 いや――この際、詐欺師でも幽霊でも死神だって構わない。そう、今はただ――この千載一遇の幸運に忌憚なくありつくことだけを考えよう―――。
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