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case2 ~白リボンちゃんの受難~ #3

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 ・・・作業開始まで後10分...そろそろ準備しないと…。

 清掃員と利用者間のトラブル防止のため、利用者は清掃時間の前後15分は、特便付近での 出待ち/入り待ち行為を禁止されている。お陰でその15は、利用者と接触することなく安全に現場に出入りできる。

(今のうちに、端末にログインして・・・)

 ちなみにその15分は、特便の入り口に設置してある電光掲示板上の赤いランプによって知らせることができ、現に今も、さっき予約を取り直したことでランプが点灯している。電光掲示板では他にも、SNSを見ていない通りすがりの人にも分かるよう、清掃時間やその内容、残りの人数等のアナウンスも出来る。

(条件はいつも通り...【Hand】と【Oral】で・・・時間の変更は無し…確認っと。)

 そんな清掃員・利用者の双方にとって有難い設備だが、地方や人の少ないエリアまでは行き届いていないのが現状で、そういう場所では、表札や貼り紙等を使ったアナログな手段でのやり取りが交わされている。

 それどころか"緊急通報ボタン"すら、【仮設型】にさえ設置されていない特便も未だに存在していて、清掃員の安全とプライバシー保護のため、早急な対応が求められている。

 "あんな事件"もあったことだし―――神経質になるのも分かるけど・・・正直、こんなバカげた政策そこまでして続ける価値ある...?とも思わなくもない…。
 本当にアタシたち清掃員のためというなら、こんな制度さっさと廃止して、浮いたお金でもっと健全な形での支援をした方がいいんじゃないの…?
 まあ...そのバカげた政策で食い繋いでるアタシが言えた義理でもないけどさ…。

 鍵を受け取り、解錠してから端末の返却口へ戻す。
(後は特便内でスタンバイするだけ...手慣れたもんだな・・・。)

 アタシが清掃員になって、もうおよそ半年...キッカケは、こちらに来て知り合った友達からの紹介だった。

 当時のアタシは、今と同じバイトをしながら、足りない分は地元で貯めてきた資金を切り崩すギリギリの極貧生活…。親とは、半ばケンカ別れみたいに家を飛び出して来たため、金銭的援助は望めず、貯金も底を尽きる寸前...そんな時に舞い込んだ話だった。

 高卒でネカフェ難民のフリーターを雇ってくれる所なんてそうそう無かったから、アタシはその誘いを受けることにした。もちろん抵抗はあったけど...それ以上に、住所や十分な生活費のある暮らしは魅力的に思えた。

 研修の期間はそのにいろいろ・・・それはもう色々と―――、
教えてもらってスキルを磨いた…。

 友達の教え方が上手かったのか、アタシに素質があったのか(全く要らない素質だけど…)は分からないけど、実戦投入されるまでそう時間は掛からなかった。

 その後は友達仕込みのテクニックと、掃女界隈では恵まれた部類の見た目を活かして順調に"思いやりポイント"を稼ぎ、割と早い段階で公営住宅への入居条件を達成できた。

 掃女用SNSアカウントの運営を始めてからは、フォロワーも獲得ポイントもうなぎ登りに増えていき、たちまち人気清掃員の仲間入りを果たし、今に至る・・・。


 本っん当に―――神様っていうのは、つくづく・・・皮肉めいた話が好きらしい…。
 やっぱり...何となくで、男の悦ばせ方が分かっちゃうんだろうな・・・。

「・・・・・・ハァ…」
 深い溜息を吐き、便器の蓋を下ろして、除菌シートで一拭きしてからその上に腰掛ける。

(・・・そろそろ入ってくる頃かな...)
 ノックの音が聞こえる―――。
 …始めますか・・・。

 重い腰を上げて緑のランプを灯した。
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