多機能型特別公衆便所 ==特便==

辻 野乃子

文字の大きさ
9 / 57

case2 ~白リボンちゃんの受難~ #3

しおりを挟む
 ・・・作業開始まで後10分...そろそろ準備しないと…。

 清掃員と利用者間のトラブル防止のため、利用者は清掃時間の前後15分は、特便付近での 出待ち/入り待ち行為を禁止されている。お陰でその15は、利用者と接触することなく安全に現場に出入りできる。

(今のうちに、端末にログインして・・・)

 ちなみにその15分は、特便の入り口に設置してある電光掲示板上の赤いランプによって知らせることができ、現に今も、さっき予約を取り直したことでランプが点灯している。電光掲示板では他にも、SNSを見ていない通りすがりの人にも分かるよう、清掃時間やその内容、残りの人数等のアナウンスも出来る。

(条件はいつも通り...【Hand】と【Oral】で・・・時間の変更は無し…確認っと。)

 そんな清掃員・利用者の双方にとって有難い設備だが、地方や人の少ないエリアまでは行き届いていないのが現状で、そういう場所では、表札や貼り紙等を使ったアナログな手段でのやり取りが交わされている。

 それどころか"緊急通報ボタン"すら、【仮設型】にさえ設置されていない特便も未だに存在していて、清掃員の安全とプライバシー保護のため、早急な対応が求められている。

 "あんな事件"もあったことだし―――神経質になるのも分かるけど・・・正直、こんなバカげた政策そこまでして続ける価値ある...?とも思わなくもない…。
 本当にアタシたち清掃員のためというなら、こんな制度さっさと廃止して、浮いたお金でもっと健全な形での支援をした方がいいんじゃないの…?
 まあ...そのバカげた政策で食い繋いでるアタシが言えた義理でもないけどさ…。

 鍵を受け取り、解錠してから端末の返却口へ戻す。
(後は特便内でスタンバイするだけ...手慣れたもんだな・・・。)

 アタシが清掃員になって、もうおよそ半年...キッカケは、こちらに来て知り合った友達からの紹介だった。

 当時のアタシは、今と同じバイトをしながら、足りない分は地元で貯めてきた資金を切り崩すギリギリの極貧生活…。親とは、半ばケンカ別れみたいに家を飛び出して来たため、金銭的援助は望めず、貯金も底を尽きる寸前...そんな時に舞い込んだ話だった。

 高卒でネカフェ難民のフリーターを雇ってくれる所なんてそうそう無かったから、アタシはその誘いを受けることにした。もちろん抵抗はあったけど...それ以上に、住所や十分な生活費のある暮らしは魅力的に思えた。

 研修の期間はそのにいろいろ・・・それはもう色々と―――、
教えてもらってスキルを磨いた…。

 友達の教え方が上手かったのか、アタシに素質があったのか(全く要らない素質だけど…)は分からないけど、実戦投入されるまでそう時間は掛からなかった。

 その後は友達仕込みのテクニックと、掃女界隈では恵まれた部類の見た目を活かして順調に"思いやりポイント"を稼ぎ、割と早い段階で公営住宅への入居条件を達成できた。

 掃女用SNSアカウントの運営を始めてからは、フォロワーも獲得ポイントもうなぎ登りに増えていき、たちまち人気清掃員の仲間入りを果たし、今に至る・・・。


 本っん当に―――神様っていうのは、つくづく・・・皮肉めいた話が好きらしい…。
 やっぱり...何となくで、男の悦ばせ方が分かっちゃうんだろうな・・・。

「・・・・・・ハァ…」
 深い溜息を吐き、便器の蓋を下ろして、除菌シートで一拭きしてからその上に腰掛ける。

(・・・そろそろ入ってくる頃かな...)
 ノックの音が聞こえる―――。
 …始めますか・・・。

 重い腰を上げて緑のランプを灯した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...