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case3 ~お父様~ #2
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マリエくんと出会ったのは一年と半年ほど前、特便が試験運用の段階だった頃からの付き合いだ。一般からボランティアの清掃員を募ることとなり、ワタシの崇高な思想と共に――開設したばかりの特便公式ホームページに掲載したところ、真っ先に志願してくれたのが彼女だった。
初めて会った時の彼女は、一言でいうと暗かった――。
服装は地味で、化粧っ気もない・・・常に何かに怯えた様子で、自分に自信が無いのが一目で見て取れた。彼女自身、そんな自分を変えたくて・・・何より――私の掲げる理想に強く惹かれ、居ても立ってもいられず応募してくれたという。
当時は予算など無いに等しく、碌な謝礼も用意出来なかった上、特便周りの環境は劣悪極まりないものであった――。…にも拘わらず、彼女は私の下で清掃員として献身的に働いてくれた。
それからしばらくして...特便の存在は徐々に世間に浸透し、彼女以外の一般の清掃員も増え始めた。だが...この頃になっても、清掃員の作業環境や待遇への配慮は十分とは言えなかった。無論――ワタシとて、幾度となく予算の増額を要求したが…頭の固い上の連中にはその必要性が理解できず・・・そして、"あの事件"が起こった――。
「運転手さん――ここで大丈夫ですよ。ご苦労様です。」
「いえ、仕事ですので・・・。いろいろ大変でしょうが、私も・・・一利用者として応援しています。」
「ああ、有難う…。難しい世の中ですがお互い頑張りましょう。」
料金を支払い、降車して、我が家までの道のりを歩み始める。
あの一件以来、ワタシの社会的な信用は地に堕ち、妻にも愛想をつかされ・・・そして"娘"を―――、家庭を失った。
それでも、ワタシは信念を曲げずに理想を追い求めた。多くの清掃員が離れていく中、マリエくんだけはずっと傍でワタシを支えてくれた。そして…我々の理想は遂に社会から認められ、特便は全国に設置されるまでに受け入れられるようになった。
ワタシも今では、『多機能型特別公衆便所設置・開発等推進課課長』などという、仰々しい肩書が与えられているが…ネットニュースで見かけた、『特便の父』の方が気に入っている。
思えば、ここまでの道のりはまるで――嵐の中の航海であった。雨風は容赦なく打ちつけ、荒波に揉まれ...幾度となく転覆の危機に見舞われた。それでも航海を続けるうち――同じ旗の下に志を同じくする船員たちが集い、特便という船は盤石なものへと変わっていった。今ならどんな嵐でも乗り越えていける――ワタシ達の夢見た理想郷はもう目前まで迫っている・・・。
ここに辿り着くまで…本当に多くの犠牲を払ってきた。だが今は...
ワタシの意志に共鳴して集まった、兄弟姉妹とも言うべき船員たち・・・
ワタシを慕ってくれている、掛け替えのないパートナーであるマリエくん・・・
そして・・・
カチャ―――。
「ただいま。」
「あ、お父さん!おかえりなさい。見て見てー、このクッキー私が作ったんだ!」
「おお!凄いじゃないか。ありがとうね、後で頂くよ。」
「ねえ、聞いてよパパ~。今日来たおっさんが最悪でさ~・・・」
「うんうん。大変だったね・・・」
「お父様...あのね・・・イマラチオの練習に付き合ってくださる…?」
「ははっ、イマラチオじゃなくてイラマチオだよ。夕食が終わってからね・・・」
港に帰れば愛しい"娘たち"が温かく出迎えてくれる・・・。
ワタシは今…幸せだ―――
初めて会った時の彼女は、一言でいうと暗かった――。
服装は地味で、化粧っ気もない・・・常に何かに怯えた様子で、自分に自信が無いのが一目で見て取れた。彼女自身、そんな自分を変えたくて・・・何より――私の掲げる理想に強く惹かれ、居ても立ってもいられず応募してくれたという。
当時は予算など無いに等しく、碌な謝礼も用意出来なかった上、特便周りの環境は劣悪極まりないものであった――。…にも拘わらず、彼女は私の下で清掃員として献身的に働いてくれた。
それからしばらくして...特便の存在は徐々に世間に浸透し、彼女以外の一般の清掃員も増え始めた。だが...この頃になっても、清掃員の作業環境や待遇への配慮は十分とは言えなかった。無論――ワタシとて、幾度となく予算の増額を要求したが…頭の固い上の連中にはその必要性が理解できず・・・そして、"あの事件"が起こった――。
「運転手さん――ここで大丈夫ですよ。ご苦労様です。」
「いえ、仕事ですので・・・。いろいろ大変でしょうが、私も・・・一利用者として応援しています。」
「ああ、有難う…。難しい世の中ですがお互い頑張りましょう。」
料金を支払い、降車して、我が家までの道のりを歩み始める。
あの一件以来、ワタシの社会的な信用は地に堕ち、妻にも愛想をつかされ・・・そして"娘"を―――、家庭を失った。
それでも、ワタシは信念を曲げずに理想を追い求めた。多くの清掃員が離れていく中、マリエくんだけはずっと傍でワタシを支えてくれた。そして…我々の理想は遂に社会から認められ、特便は全国に設置されるまでに受け入れられるようになった。
ワタシも今では、『多機能型特別公衆便所設置・開発等推進課課長』などという、仰々しい肩書が与えられているが…ネットニュースで見かけた、『特便の父』の方が気に入っている。
思えば、ここまでの道のりはまるで――嵐の中の航海であった。雨風は容赦なく打ちつけ、荒波に揉まれ...幾度となく転覆の危機に見舞われた。それでも航海を続けるうち――同じ旗の下に志を同じくする船員たちが集い、特便という船は盤石なものへと変わっていった。今ならどんな嵐でも乗り越えていける――ワタシ達の夢見た理想郷はもう目前まで迫っている・・・。
ここに辿り着くまで…本当に多くの犠牲を払ってきた。だが今は...
ワタシの意志に共鳴して集まった、兄弟姉妹とも言うべき船員たち・・・
ワタシを慕ってくれている、掛け替えのないパートナーであるマリエくん・・・
そして・・・
カチャ―――。
「ただいま。」
「あ、お父さん!おかえりなさい。見て見てー、このクッキー私が作ったんだ!」
「おお!凄いじゃないか。ありがとうね、後で頂くよ。」
「ねえ、聞いてよパパ~。今日来たおっさんが最悪でさ~・・・」
「うんうん。大変だったね・・・」
「お父様...あのね・・・イマラチオの練習に付き合ってくださる…?」
「ははっ、イマラチオじゃなくてイラマチオだよ。夕食が終わってからね・・・」
港に帰れば愛しい"娘たち"が温かく出迎えてくれる・・・。
ワタシは今…幸せだ―――
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