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case1 ~人形少女と虚空リーマン~ #8
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「いいかい、もう一度聞くよ。あの娘に会いたいかい?」
「・・・はい…。」
「会ってどうしたい?」
「それは・・・」
数刻の間、黙り込む。言える筈ない…。こんなこと...口にするのも憚られる・・・。
再び邪な妄想が頭をよぎる―――。
「あっはっは!アンタが黙ってたって、体は随分と正直に答えてくれてるじゃないか。」
「えっ・・・!」
気が付くと、さっきまでしょぼくれていた俺のムスコはすっかり元気を取り戻していた。
「やっぱり・・・男なんてのは、幾つになっても若い娘がいいモンなんだねぇ。」
「ち…違っ!俺はロリコンなんかじゃ・・・」
股間を即座に手で覆い、慌てて釈明する――。
確かに、彼女は外見だけなら中学生にも見えてしまうが…本人が言うには成人済みとのことだ。そもそも!精神医学の世界では、ロリコン(小児性愛者/ペドフィリア)というのは13歳以下を恋愛対象とする人物であり、仮にあの少女が中学生であったとしても俺はそれには該当しない。いや…そうじゃなくて!それ以前に、俺はちゃんと未成年は恋愛対象からは外している。だから断じて俺はロリコンなどではないのだ!!
「ハハッ!何を必死になってるのか知らないけど、別に隠さなくてもいいじゃないか。いつもアタシとシてるときだって携帯で若い娘ばっかり見てるじゃないかい。」
おばさんは笑いながら言っているが、目は笑っていない…。
「・・・それは…本当にすみませんでした。以後気を付けます・・・。」
「...まあ、社会的に問題があるから皆言わないってだけで、そんなに珍しいことじゃないさ。むしろ変に隠すから余計に悪いことみたいになってんだよ。アンタも男なら堂々と、ハッキリ言ってみな。」
駄目だ。完全に決めにかかっている・・・。
これはもう否定しても無駄だな―――。
「言えませんよ・・・そんなの・・・。それも...あんな無垢な少女に・・・」
「無垢な少女って…あの娘に一体どんな幻想を持ってんだい・・・。あのねぇ...あの娘に限らず、清掃員の娘たちってのは自ら進んでゴミ溜めに飛び込んでるようなものなんだよ。とても真っ当に愛されて、健全に育ってきたとは言えない娘ばかりさ…。彼女達からすれば、アンタの普通の欲望なんて"優しい"モンだと思うけどねぇ。」
…本当にそうなのだろうか――?
俺があの時少女に感じた、純真で――美しい心は全て幻想だったのだろうか?
実際、あの娘が普通でないことは明らかではあったが...それは清らかな少女の姿が、特便という現代社会の肥溜のような場所に、あまりにもミスマッチだったからだ。
だが...今にして思えば、穢れを知らない…温室育ちのお嬢様というには無理がある。
醜悪な環境を生き抜いてきたであろう、苦労人特有の…『雑草魂』とでもいうか――ある種、芯の強さがあったようにも感じた。
もしかしたら特便の創設時…いや…下手をすればそれ以前から、身売りのようなことをして生きてきたのかもしれない・・・。
だとすれば...俺が今更どうこうしたって―――
「アンタ、あの娘をどうしたい?」
先ほどよりも強めに、迫るように再度訊いてくる。
俺は―――。
「……エッチなことがしたいです…。」
飾らない範囲でストレートに、かつ可能な限りオブラートに包んで答えた。
「・・・フン、まあいいさ。及第点かねぇ。」
(あなたは一体、俺の何なんだ・・・)と心の中でツッコミを入れる。
そういえば...ずっと引っ掛かっていたが、おばさんはさっきからまるで…あの少女のことを知っているのかような口振りである…。
「一年前...××地区の特便であった、集団強姦事件を知ってるかい?」
(・・・?)
「はい…。詳しくは知りませんが、聞いた事くらいは・・・」
一時期かなり大々的に報じられていたので知っている。当時、全国的な設置が始まったばかりの特便内で、女子大生が複数の少年によってレイプされた...というもの。
被害に遭った女子大生は、その後精神を病んで程なくして自殺…加害者側は全員未成年だった事もあり、少年院に送られたものの不起訴となった…という胸糞事件だ。
「でも...その事件とあの娘に何の関係が・・・?」
「・・・アタシの口からはこれ以上、何とも言えないよ。ただ、アンタがあの娘に会いたいって言うんなら、その事件について詳しく調べてみることだね。」
「あなたは一体・・・あの娘の何なんですか・・・?」
何となく立ち入ってはならない気がして聞かなかったが...最早、隠す気も無さそうなので思い切って尋ねてみた。
「・・・アタシは逃げた立場さ。事件からも、あの娘からも・・・。
だから関係ない...赤の他人だよ。」
しばしの沈黙が流れる―――。
...色々と匂わせておいた割に、おばさんはこれ以上答えてはくれなさそうだった。
サバサバした女風を装ってはいるが、この人も普通の面倒くさい女性なのだろう…。
先程の「あの娘をどうしたいか」という問いに対して、「犯したい」「汚してやりたい」等とド直球に答えていれば、もう少し詳しく教えてくれたのだろうか・・・?
気まずい沈黙の中、俺はこんなどうでもいいタラレバを考えていた。
「・・・さ!若い娘が良いんだったら、こんなおばさんの所で油売ってないでさっさと行きな!」
「・・・分かりました。色々と...ありがとうございました…。」
おばさんに促され特便を後にした・・・。
帰り道――俺の脳内では、様々な事が堂々巡りをしていた。
少女のこと、おばさんのこと、事件のこと、被害者女性のこと、そして…その全ての関係性・・・本当の赤の他人である俺には何一つ分からない…。
何か恐ろしい秘密が隠れているかもしれない・・・首を突っ込むべきではないのかもしれない・・・。それでも...知りたいと思ってしまう。
なぜなら、あの時から既に俺の心は…
あの少女に取り憑かれてしまっているのだから―――。
「・・・はい…。」
「会ってどうしたい?」
「それは・・・」
数刻の間、黙り込む。言える筈ない…。こんなこと...口にするのも憚られる・・・。
再び邪な妄想が頭をよぎる―――。
「あっはっは!アンタが黙ってたって、体は随分と正直に答えてくれてるじゃないか。」
「えっ・・・!」
気が付くと、さっきまでしょぼくれていた俺のムスコはすっかり元気を取り戻していた。
「やっぱり・・・男なんてのは、幾つになっても若い娘がいいモンなんだねぇ。」
「ち…違っ!俺はロリコンなんかじゃ・・・」
股間を即座に手で覆い、慌てて釈明する――。
確かに、彼女は外見だけなら中学生にも見えてしまうが…本人が言うには成人済みとのことだ。そもそも!精神医学の世界では、ロリコン(小児性愛者/ペドフィリア)というのは13歳以下を恋愛対象とする人物であり、仮にあの少女が中学生であったとしても俺はそれには該当しない。いや…そうじゃなくて!それ以前に、俺はちゃんと未成年は恋愛対象からは外している。だから断じて俺はロリコンなどではないのだ!!
「ハハッ!何を必死になってるのか知らないけど、別に隠さなくてもいいじゃないか。いつもアタシとシてるときだって携帯で若い娘ばっかり見てるじゃないかい。」
おばさんは笑いながら言っているが、目は笑っていない…。
「・・・それは…本当にすみませんでした。以後気を付けます・・・。」
「...まあ、社会的に問題があるから皆言わないってだけで、そんなに珍しいことじゃないさ。むしろ変に隠すから余計に悪いことみたいになってんだよ。アンタも男なら堂々と、ハッキリ言ってみな。」
駄目だ。完全に決めにかかっている・・・。
これはもう否定しても無駄だな―――。
「言えませんよ・・・そんなの・・・。それも...あんな無垢な少女に・・・」
「無垢な少女って…あの娘に一体どんな幻想を持ってんだい・・・。あのねぇ...あの娘に限らず、清掃員の娘たちってのは自ら進んでゴミ溜めに飛び込んでるようなものなんだよ。とても真っ当に愛されて、健全に育ってきたとは言えない娘ばかりさ…。彼女達からすれば、アンタの普通の欲望なんて"優しい"モンだと思うけどねぇ。」
…本当にそうなのだろうか――?
俺があの時少女に感じた、純真で――美しい心は全て幻想だったのだろうか?
実際、あの娘が普通でないことは明らかではあったが...それは清らかな少女の姿が、特便という現代社会の肥溜のような場所に、あまりにもミスマッチだったからだ。
だが...今にして思えば、穢れを知らない…温室育ちのお嬢様というには無理がある。
醜悪な環境を生き抜いてきたであろう、苦労人特有の…『雑草魂』とでもいうか――ある種、芯の強さがあったようにも感じた。
もしかしたら特便の創設時…いや…下手をすればそれ以前から、身売りのようなことをして生きてきたのかもしれない・・・。
だとすれば...俺が今更どうこうしたって―――
「アンタ、あの娘をどうしたい?」
先ほどよりも強めに、迫るように再度訊いてくる。
俺は―――。
「……エッチなことがしたいです…。」
飾らない範囲でストレートに、かつ可能な限りオブラートに包んで答えた。
「・・・フン、まあいいさ。及第点かねぇ。」
(あなたは一体、俺の何なんだ・・・)と心の中でツッコミを入れる。
そういえば...ずっと引っ掛かっていたが、おばさんはさっきからまるで…あの少女のことを知っているのかような口振りである…。
「一年前...××地区の特便であった、集団強姦事件を知ってるかい?」
(・・・?)
「はい…。詳しくは知りませんが、聞いた事くらいは・・・」
一時期かなり大々的に報じられていたので知っている。当時、全国的な設置が始まったばかりの特便内で、女子大生が複数の少年によってレイプされた...というもの。
被害に遭った女子大生は、その後精神を病んで程なくして自殺…加害者側は全員未成年だった事もあり、少年院に送られたものの不起訴となった…という胸糞事件だ。
「でも...その事件とあの娘に何の関係が・・・?」
「・・・アタシの口からはこれ以上、何とも言えないよ。ただ、アンタがあの娘に会いたいって言うんなら、その事件について詳しく調べてみることだね。」
「あなたは一体・・・あの娘の何なんですか・・・?」
何となく立ち入ってはならない気がして聞かなかったが...最早、隠す気も無さそうなので思い切って尋ねてみた。
「・・・アタシは逃げた立場さ。事件からも、あの娘からも・・・。
だから関係ない...赤の他人だよ。」
しばしの沈黙が流れる―――。
...色々と匂わせておいた割に、おばさんはこれ以上答えてはくれなさそうだった。
サバサバした女風を装ってはいるが、この人も普通の面倒くさい女性なのだろう…。
先程の「あの娘をどうしたいか」という問いに対して、「犯したい」「汚してやりたい」等とド直球に答えていれば、もう少し詳しく教えてくれたのだろうか・・・?
気まずい沈黙の中、俺はこんなどうでもいいタラレバを考えていた。
「・・・さ!若い娘が良いんだったら、こんなおばさんの所で油売ってないでさっさと行きな!」
「・・・分かりました。色々と...ありがとうございました…。」
おばさんに促され特便を後にした・・・。
帰り道――俺の脳内では、様々な事が堂々巡りをしていた。
少女のこと、おばさんのこと、事件のこと、被害者女性のこと、そして…その全ての関係性・・・本当の赤の他人である俺には何一つ分からない…。
何か恐ろしい秘密が隠れているかもしれない・・・首を突っ込むべきではないのかもしれない・・・。それでも...知りたいと思ってしまう。
なぜなら、あの時から既に俺の心は…
あの少女に取り憑かれてしまっているのだから―――。
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