多機能型特別公衆便所 ==特便==

辻 野乃子

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case2 ~白リボンちゃんの受難~ #7

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(さて・・・最高記録は達成しちゃったけど、まだ15分も残ってるなあ。)
 早めに切り上げてもいいけど...さっきの客に聞いた話だとまだ2人は並んでるっぽいし、それだけ記録に上乗せしてから終わりにしよっと。

 緑のランプを灯し、外で待つ2人の内の1人を呼び込む。掲示板の表示も「残り2人」に変えたので、これ以上客が並ぶことも無いだろう。

 先に入って来たのは、いかにも遊び慣れていそうなチャラチャラした大学生。帰り際に連絡先が書かれた紙をいったので、男達が股間を拭いた後のペーパータオルの山の中に捨てといた。

 その後に入って来たのは、ソレの後輩の大学生。田舎から憧れの都会に出てきて、大学デビューして半年位…といった感じだ。根は真面目そうなんだから付き合う相手は選べばいいのに…と思った。

 今日一日、初めて【個室型】で作業をしてみて分かった事がある。それは、個室型の方が一人当たりに掛かる時間が少なく済む、という事。実際さっきの2人も、先輩6分,後輩4分の、合わせて10分程度で片付いた。多分…個室型はただ性欲の処理をするだけの場所、という意識が働いて、それが射精までの時間を早めているのだろう。
(こんなに効率がいいんなら、"お得意様"限定でたまにやるのもいいかもね...)

 残り時間は5分・・・そして現在の記録は過去最高の23人・・・。今日の作業時間は2時間だから...もし後一人いければトータル24人で、丁度1人5分で捌けたという計算になるけど・・・。

(・・・よし、やりますか――。)
 清掃終了を知らせる赤いランプを消灯し、掲示板に「残り1人」と表示させる。

 もう誰も並んでないとはいえ、まだ通りすがりが入ってくる可能性も残っている。清掃員が退却する為の、割と長めに用意されている"15分"もあるので、少し位オーバーしても特に問題はない。
(ま・・・来なければ来ないで、全然いいんだけどね・・・。)

コンッ、コンッ―――。
(・・・お、来たね。思ったより早かったな。)

 入って来たのは陰気くさい感じの男。髪は普通より気持ち長めくらいで、眼には覇気が無く、顔立ちは悪い意味で中性的。身長や体型、服装等にも特筆すべきものは無く、無個性とかモブとかいう言葉がお似合いだ。今日のいつぞやに来たアイツが『The オタク』 なら、こっちは 『The 陰キャ』ってトコかな…。

 男が入室してからは互いに無言で、相手は目を伏せたままチラチラとこちらを見てくるけれど...会話を交わそうという意思は感じられない。

「・・・オーラルで」
 男はそれだけ言うと自分のモノを洗い始めた。

「ゴムはどーする?ナシなら外でね。」

「ナシでいい。」

「そ。掛けるのもナシね。」
 こちらも必要最低限の言葉で済ませる。

 アタシの客に限っては、必要以上にやたらと絡んでくる連中も多いけど…特便の利用者全体で見れば、こういう感じの方が多数派だ。別に、積極的に話し掛けて来て欲しいとは1ミリも思わないけど...もう二, 三言くらいはあってもいいんじゃない?...とも思わなくはない。まあ...しつこい奴らよりは全然いいけどさ…。

 便座の上蓋に腰掛けたまま、男にも左程興味がないのでスマホを弄って待つ・・・けど...どうも視線を感じて気が散る・・・。
 少し顔をあげるとすぐに外れるけど、目線をスマホへ落とすと再度感じる...ジメっとした視線・・・。

(あー・・・不快だ――。)
 ゴキブリみたいな、見つけた瞬間に沸き上がる不快感とは違う...
 視界の隅を何度もちらつく小バエのような...じわしわ来る不快感――。


「ねえ、あんまジロジロ見んのやめてくれない?」

「・・・は!? 別に見てねえよ・・・」

(何・・・?見てないって。子供かよ...そんな噓バレバレだっつーの。)

「あっそ、ならいいけど・・・」


 それ以降視線は感じなくなったものの、気まずい沈黙だけが流れ、聞こえるのは張り詰めた空気の音だけ――。

「終わったけど…」

「んー。じゃ、始めるね。」
(さっさと終わらせちゃお...っと。)
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