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case4 ~漁師町の雪女~ #1

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 ※本case内で使用される方言は架空のモノです。実在する地域をモデルに作られたモノでもないため、言葉の意味等については何となくのニュアンスで受け取ってください。

以下本編
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 季節は仲秋。こちらに越してきてから二度目の秋を迎えている。秋と言えど、北の地であるここはこの時期でも十分に寒い・・・はずなのに、寒いと感じないのはどうしてだろう。

 決して寒くない訳ではない。体の芯は震えているし、爪は紫に変色していて、手だって血の通っていない死人のように青白い。脳は確かに寒さを認識していて、体も正常な反応を示している。それなのに寒いとは感じない。
 きっと今まで通り、気付かないフリをしている内に本当に分からなくなってしまったのだろう。


コンっ、コンっ。
カチャ―――。

「邪魔するだよー。」

「どうも。」

「・・・なあ、姉ちゃん。またそんなカッコで…風邪引くべ?」
 その人は自分の着ていた上着を掛けてくる。

「お構いなく。」

「何があったのかは知んねぇけど...もうちっと自分を大事にしてもいいんじゃねえか?…まあ、オレみてえのが言えた義理じゃあねぇけどよぉ…。」
「・・・」

「よぉし!今日こそはぜってぇ感じさせてやるからよぉ!」
「はい、ご自由にどうぞ。」


パンッパンッパンッ―――。
 いつも通り・・・何も感じない。本当に何も感じない訳ではなく、ゴムが膣壁を擦り上げる感覚等はあるけれど、痛みも快感も何も感じない。

「うおぉ・・・っ。もう、限界だっぺ・・・」
 コンドームに精液が溜まり、男性の性器は徐々に小さくなっていく。


「ふぅ~...最高だっただぁ~。
 んだども…今日も駄目だったかあ~・・・。
 いんや!次こそは姉ちゃんも一緒に気持ち良くしてやっから、期待してくんろ!」

「はい、またどうぞ。」

「おっと、そうだそうだ・・・」
男性は再度、自分の上着を掛け直してくる。

「まだしばらく居るんだろ?だったらソレ着てな。姉ちゃんが風邪なんか引いたら、オレだってアイツらだって…みーんな悲しむべさ。返すのは今度でいいからよぉ。」

 そう言うと男性は、大きくて分厚い、少し重たい上着だけを残して出ていった。

「・・・」
 磯の香りがする――。微かに残るその温もりも、冷め切った私の体温に触れて、次第に溶けて無くなってゆく…。

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