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case0: 裏切り /Side-A #2
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テニスサークルの新入生歓迎会は、居酒屋の個室座敷を2つ貸し切って行われる。参加人数は総勢53名で、その内15人が新入生だ。サークルメンバー全員が参加しているわけではないようだが、それでも8割くらいは出席しているらしく、当然、今回で初めて会う人だって大勢居ることだろう。
全員で一斉に押しかけるとお店の側にも迷惑なので、一度大学の構内で集合してからグループを4つに分けて順番に店へと向かう。
…どうやら、学生サークルとはいえ、色々とちゃんとしたコミュニティのようだ。
僕は4番目に出発するグループに混ざり、近くに居た同期生や先輩達と更に小グループを作り、所属や選択科目,出身地の話などの当たり障りのない会話をしながら会場へと歩いていく。
そんな中、前を歩く3番目のグループの最後尾――集団とは少し離れた斜め後ろから付いていく、黒髪ロングの女性の姿が目に留まる。初めは外部の人かとも思ったが、見た目からしても僕たちと同じ大学生だろうし、一定の距離を保ちつつ集団から離れないあたり、同じサークルのメンバーとみて間違いなさそうだ。明らかに周囲に溶け込めていない様子から察するに、僕と同じ新入生なのだろうが…それにしては妙に大人びて見える。独りで居ても全く気にならないといった様子で、敢えて距離を取っているようにすら見えてくる落ち着きっぷりである…。
会場となるお店に到着し、チェックインを済ませて奥の座敷へと通される。始めは全員分の飲み物を注文するようなので、僕は無難にウーロン茶を注文した。全員の飲み物が到着したので、サークルリーダーが立ち上がり開宴の挨拶を始める。
「え~皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき…。」
「リーダー、堅いって!」
「そうだそうだ!新入りクン達に真面目なサークルだと思われたらどうすんだ!」
「うるせえっ!ウチはちゃんと真面目なサークルで、お前らみたいなふざけた奴の方が少数派なんだよ!」
「アハハハ―――ッ!!」
示し合わせたかのように一斉に笑い声が上がったので、僕もすかさず笑った。
その後は簡単なスケジュールの説明と、お店の迷惑にならないための注意喚起などが行われ、乾杯の音頭をとって挨拶は終了した。リーダーはもう一つの方の個室に入っていき、そちらでも開宴の挨拶をしているようで、さっきと同じようなやり取りの後に同じような笑い声が上がるのが僅かに聞こえてきた。
先ほどのリーダーからの説明によると…この歓迎会中に席替えを2回行うようで、両方の個室に新入生の数だけ均等になるように割り振って、後は適当に移動する感じらしい。こちらとしても、同じ相手とずっと居ると話題が無くなりそうな気もするし...多くの人と交流できる機会があるのはありがたい。
最初の席では隣に、何度か会っていてよく話す仲にもなった同期の新入生がいた。周りは初めて会う先輩や、顔は知ってるけどちゃんと話したことはない先輩たちばかりだったが、彼のお陰で緊張し過ぎることも無く、イイ感じに先輩たちとも打ち解けることが出来た。
先輩方――、とりわけ2年や3年の先輩の様子を観察していると、運ばれてきた料理をさり気なく取り分けたり、空いた皿を素早くまとめて店員さんに下げてもらったりと、こういう場に相当慣れている様子が伺える。きっと僕たちも、誰に教えて貰うでもなく、こういったことを自然に出来るようになっていく必要があるのだろう…。
席替えの時間も迫って来たので、今回ですっかり意気投合した彼とも連絡先を交換して、次の席替えを待つ。
…そういえば、ここに来る途中で見かけた"あの女性"は隣の個室に居るのだろうか?特に面識があるわけでもなかったが、不思議と気になっていた…。遠くからだったし、後ろ姿しか見えなかったけど、彼女には人目を惹く何か――いわゆる、オーラのようなものがあったようにも思える。…単に、浮いていたから目立っただけかもしれないが。
「こっちに新入生4人移動させるから、そっちからも4人来てくれないか?」
向こうの個室から先輩が3人の新入生を連れてやってきたが、そこに彼女の姿はなかった。どうやらまだ向こうの席に居るようだ。
「それじゃあ、僕移動しますよ。」
僕が真っ先に名乗りを上げ、それに続いてもう3人も名乗りを上げた。
隣の彼に別れを告げ、向こうの座敷へと移動する――。
全員で一斉に押しかけるとお店の側にも迷惑なので、一度大学の構内で集合してからグループを4つに分けて順番に店へと向かう。
…どうやら、学生サークルとはいえ、色々とちゃんとしたコミュニティのようだ。
僕は4番目に出発するグループに混ざり、近くに居た同期生や先輩達と更に小グループを作り、所属や選択科目,出身地の話などの当たり障りのない会話をしながら会場へと歩いていく。
そんな中、前を歩く3番目のグループの最後尾――集団とは少し離れた斜め後ろから付いていく、黒髪ロングの女性の姿が目に留まる。初めは外部の人かとも思ったが、見た目からしても僕たちと同じ大学生だろうし、一定の距離を保ちつつ集団から離れないあたり、同じサークルのメンバーとみて間違いなさそうだ。明らかに周囲に溶け込めていない様子から察するに、僕と同じ新入生なのだろうが…それにしては妙に大人びて見える。独りで居ても全く気にならないといった様子で、敢えて距離を取っているようにすら見えてくる落ち着きっぷりである…。
会場となるお店に到着し、チェックインを済ませて奥の座敷へと通される。始めは全員分の飲み物を注文するようなので、僕は無難にウーロン茶を注文した。全員の飲み物が到着したので、サークルリーダーが立ち上がり開宴の挨拶を始める。
「え~皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき…。」
「リーダー、堅いって!」
「そうだそうだ!新入りクン達に真面目なサークルだと思われたらどうすんだ!」
「うるせえっ!ウチはちゃんと真面目なサークルで、お前らみたいなふざけた奴の方が少数派なんだよ!」
「アハハハ―――ッ!!」
示し合わせたかのように一斉に笑い声が上がったので、僕もすかさず笑った。
その後は簡単なスケジュールの説明と、お店の迷惑にならないための注意喚起などが行われ、乾杯の音頭をとって挨拶は終了した。リーダーはもう一つの方の個室に入っていき、そちらでも開宴の挨拶をしているようで、さっきと同じようなやり取りの後に同じような笑い声が上がるのが僅かに聞こえてきた。
先ほどのリーダーからの説明によると…この歓迎会中に席替えを2回行うようで、両方の個室に新入生の数だけ均等になるように割り振って、後は適当に移動する感じらしい。こちらとしても、同じ相手とずっと居ると話題が無くなりそうな気もするし...多くの人と交流できる機会があるのはありがたい。
最初の席では隣に、何度か会っていてよく話す仲にもなった同期の新入生がいた。周りは初めて会う先輩や、顔は知ってるけどちゃんと話したことはない先輩たちばかりだったが、彼のお陰で緊張し過ぎることも無く、イイ感じに先輩たちとも打ち解けることが出来た。
先輩方――、とりわけ2年や3年の先輩の様子を観察していると、運ばれてきた料理をさり気なく取り分けたり、空いた皿を素早くまとめて店員さんに下げてもらったりと、こういう場に相当慣れている様子が伺える。きっと僕たちも、誰に教えて貰うでもなく、こういったことを自然に出来るようになっていく必要があるのだろう…。
席替えの時間も迫って来たので、今回ですっかり意気投合した彼とも連絡先を交換して、次の席替えを待つ。
…そういえば、ここに来る途中で見かけた"あの女性"は隣の個室に居るのだろうか?特に面識があるわけでもなかったが、不思議と気になっていた…。遠くからだったし、後ろ姿しか見えなかったけど、彼女には人目を惹く何か――いわゆる、オーラのようなものがあったようにも思える。…単に、浮いていたから目立っただけかもしれないが。
「こっちに新入生4人移動させるから、そっちからも4人来てくれないか?」
向こうの個室から先輩が3人の新入生を連れてやってきたが、そこに彼女の姿はなかった。どうやらまだ向こうの席に居るようだ。
「それじゃあ、僕移動しますよ。」
僕が真っ先に名乗りを上げ、それに続いてもう3人も名乗りを上げた。
隣の彼に別れを告げ、向こうの座敷へと移動する――。
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