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case0: 裏切り /Side-A #3
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隣の座敷に通され、あの黒髪ロングの女性の姿を探す。
(居た――!)
彼女が居たのは入り口から見て一番奥――端っこの目立たない席に居たものの、その澄み切った雰囲気が放つ、不思議な存在感によってすぐに見つけられた。華があるといった感じとは違って、そこだけ空間を切り取ったような…一人だけ異世界からやってきたかのような…そんな存在感である。
「じゃあ、適当に好きなトコ座ってくれ。」
そう言われて彼女の近くの席を見るが、どこにも空席はない。一度話してみたかったので残念だ…。
言われた通り、適当に座る席を探していると、聞き覚えのある声に呼ばれる。
「お~い!M。こっち来いよー。」
声の主は、リーダーが開宴の挨拶をしているときに野次を飛ばしていた、複数人の内の一人…"S先輩"だった。先輩は僕が見学に来ていた頃から気さくに話し掛けてくれる、お調子者だけど優しい――サークル内のムードメーカー的な存在だ。
S先輩が指さしているのは、彼女とは一番離れた位置にある席だったが、僕は誘われるがままS先輩の隣に座った。
「よっ!歓迎会楽しんでるか?」
「はい!お陰様で楽しませてもらってます。」
「そっかそっか…そう言ってもらえると、こっちとしても頑張って準備した甲斐があるよ。」
向かいの席に座っていたリーダーが、頷きながら感慨深げに言う。
リーダーは、学内でも指折りの秀才として知られている。真面目だけど真面目過ぎず、人付き合いも上手で周囲からの人望も厚い――まさにリーダーになるべくしてなった人といった感じだ。
「ところでMって今、彼女とか居んの?」
S先輩は普段からよく喋るひとだが、今日はお酒が入っているからか…特に上機嫌に感じられる。
「居ないですよ。今っていうか…彼女いない歴=年齢なんですけどね。」
苦笑いを交えて返答する。
「まじで?こんなに良い好青年を放っておくなんて…みんな見る目ねえなぁ。」
「ははっ…ありがとうごさいます。」
「おい、S。あんまりウザ絡みすんなよ。M君も嫌だったら、コイツの事は無視してくれて一向に構わないからね。」
「うわっ!酷ぇ…。Mはそんなことしないよな?」
「・・・はい、そんなことしませんよ。」
「アレ?今何か変な間がなかった?」
「・・・そんなことないですよ。」
イジリかそうでないかの微妙なラインを攻める。周りからは適度に笑い声もあがり、好感触だ。
先輩たちとはもう知り合って一か月以上になるし…大学生らしく、こういう悪ノリも覚えていきたいところだ。
「ところで先輩、あの一番端の席に座ってる女の人って…」
「お!やっぱり気になる?」
待ってましたとばかりに、食い気味に訊いてくる。
「ええ、まあ…」
それを聞くと先輩は僕の肩に腕を回し、滑らかに話し始める。
「あの娘は"Yちゃん"。○○学部△△学科所属の2年生。8月27日生まれのおとめ座で、現在19歳――」
(Y…先輩…2年生だったのか…。あんまり馴染めていないように見えたから、てっきり同世代か思ったけど…)
「出身は□□で血液型はB型。好きな食べ物は…」
バシッ―――。
リーダーの手刀がS先輩の頭に命中する。
「他人の個人情報をベラベラと喋るな。」
「痛ってぇ…なにすんだよ!俺はただ、かわいい後輩君のために愛のキューピットを買って出ただけであってな…」
「M君だって、別にまだ好きだなんて言ってないだろ。」
「それはそうだけどよ…。で!実際のトコどうなんだ…?M。」
「好きかどうかはまだ分かりませんが、正直…見た目はすごく好みです…。」
「おおー、イイねぇ!!ほら!Mだってこういってるじゃんか。」
「…まあ、M君がそういうならいいけど…。
よし!そういう事なら僕も一肌脱ぐよ。次の席替えではリーダー権限で、MくんをYちゃんの近くに座れるようにしてあげよう!」
「本当ですか?ありがとうございます!」
この手の話題は男女問わず食いつきがいいので、変に恥ずかしがって否定する必要はない。話してみたいと思っていたのも事実だし…先輩たちも協力的な様子なので、軋轢が生まれるということもなさそうだ。
(居た――!)
彼女が居たのは入り口から見て一番奥――端っこの目立たない席に居たものの、その澄み切った雰囲気が放つ、不思議な存在感によってすぐに見つけられた。華があるといった感じとは違って、そこだけ空間を切り取ったような…一人だけ異世界からやってきたかのような…そんな存在感である。
「じゃあ、適当に好きなトコ座ってくれ。」
そう言われて彼女の近くの席を見るが、どこにも空席はない。一度話してみたかったので残念だ…。
言われた通り、適当に座る席を探していると、聞き覚えのある声に呼ばれる。
「お~い!M。こっち来いよー。」
声の主は、リーダーが開宴の挨拶をしているときに野次を飛ばしていた、複数人の内の一人…"S先輩"だった。先輩は僕が見学に来ていた頃から気さくに話し掛けてくれる、お調子者だけど優しい――サークル内のムードメーカー的な存在だ。
S先輩が指さしているのは、彼女とは一番離れた位置にある席だったが、僕は誘われるがままS先輩の隣に座った。
「よっ!歓迎会楽しんでるか?」
「はい!お陰様で楽しませてもらってます。」
「そっかそっか…そう言ってもらえると、こっちとしても頑張って準備した甲斐があるよ。」
向かいの席に座っていたリーダーが、頷きながら感慨深げに言う。
リーダーは、学内でも指折りの秀才として知られている。真面目だけど真面目過ぎず、人付き合いも上手で周囲からの人望も厚い――まさにリーダーになるべくしてなった人といった感じだ。
「ところでMって今、彼女とか居んの?」
S先輩は普段からよく喋るひとだが、今日はお酒が入っているからか…特に上機嫌に感じられる。
「居ないですよ。今っていうか…彼女いない歴=年齢なんですけどね。」
苦笑いを交えて返答する。
「まじで?こんなに良い好青年を放っておくなんて…みんな見る目ねえなぁ。」
「ははっ…ありがとうごさいます。」
「おい、S。あんまりウザ絡みすんなよ。M君も嫌だったら、コイツの事は無視してくれて一向に構わないからね。」
「うわっ!酷ぇ…。Mはそんなことしないよな?」
「・・・はい、そんなことしませんよ。」
「アレ?今何か変な間がなかった?」
「・・・そんなことないですよ。」
イジリかそうでないかの微妙なラインを攻める。周りからは適度に笑い声もあがり、好感触だ。
先輩たちとはもう知り合って一か月以上になるし…大学生らしく、こういう悪ノリも覚えていきたいところだ。
「ところで先輩、あの一番端の席に座ってる女の人って…」
「お!やっぱり気になる?」
待ってましたとばかりに、食い気味に訊いてくる。
「ええ、まあ…」
それを聞くと先輩は僕の肩に腕を回し、滑らかに話し始める。
「あの娘は"Yちゃん"。○○学部△△学科所属の2年生。8月27日生まれのおとめ座で、現在19歳――」
(Y…先輩…2年生だったのか…。あんまり馴染めていないように見えたから、てっきり同世代か思ったけど…)
「出身は□□で血液型はB型。好きな食べ物は…」
バシッ―――。
リーダーの手刀がS先輩の頭に命中する。
「他人の個人情報をベラベラと喋るな。」
「痛ってぇ…なにすんだよ!俺はただ、かわいい後輩君のために愛のキューピットを買って出ただけであってな…」
「M君だって、別にまだ好きだなんて言ってないだろ。」
「それはそうだけどよ…。で!実際のトコどうなんだ…?M。」
「好きかどうかはまだ分かりませんが、正直…見た目はすごく好みです…。」
「おおー、イイねぇ!!ほら!Mだってこういってるじゃんか。」
「…まあ、M君がそういうならいいけど…。
よし!そういう事なら僕も一肌脱ぐよ。次の席替えではリーダー権限で、MくんをYちゃんの近くに座れるようにしてあげよう!」
「本当ですか?ありがとうございます!」
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