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case0: 裏切り /Side-A #5
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季節は初秋の候。『初秋』というと僕たちの感覚で言うと9月の上旬を表す言葉だが、実際はまだ8月の下旬である。ビジネスパーソンというのは、どうしてこんな紛らわしい言い回しをするのか…不思議でならない。
それはともかく…夏の終わりも近づくというのに、僕の方は浮わついた話の一つも無いというのが現状だ。
その一方で、歓迎会で仲良くなった同期のOくんは、先日行われた他大学との合同合宿で念願の彼女をゲットして、充実した夏の思い出作りに励んでいるそうだ。
Y先輩は合同合宿にも懇親会のバーベキューパーティーにも参加しておらず、結局Y先輩と親睦を深める機会はあの歓迎会以降も一度も訪れていない。元々サークル活動にはあまり積極的ではないようで、普段の活動でも会うことはほとんどなく、珍しく来たとしてもA先輩を含む数人のグループで固まって練習しているため、話しかけるタイミングは一向に訪れない…。
普通のリア充大学生のように、ただ恋愛したいだけならY先輩に拘る必要はないのかもしれない。
Y先輩はどう見ても高嶺の花という感じだし、Oくんのように手近な女性にターゲットを絞る方が成功率が高いのは分かっている。
でも...やっぱり初めての恋愛体験は周りに流されてではなく、もっと自分の気持ちを大事にしたい。Y先輩のことが好きかどうかはまだ分からないけれど…特別な感情を抱いていることは確かであり、その正体を突き止めるまでは次の恋愛に移行する気はどうしても起きないのだ。
――と...こんな具合に、新しい彼女と共に一夏の思い出作りに励むOくんとは対照的に、僕は独り――薄暗い部屋の中で悶々とした夏休みを過ごしている。
そんな僕にとって吉報と言わざるを得ない、S先輩からの新着メッセージの通知が届いた。画面に表示されたのはほんの数秒で、全文を見たわけでもないが『今週末』『合コン』『Yちゃん』の三つのワードは確認することが出来たため、僕の心は期待でいっぱいになっていた。
S先輩から送られてきたそのメッセージの全容は、僕の期待を裏切る……ものではなく、紛うことなき、Y先輩も参加するという合コンへのお誘いだった。
A先輩が僕のためにセッティングしてくれたらしく、どうやら建前上はY先輩の誕生日パーティーということになっているようで...僕達もその体で参加する必要があるらしい。
…確かに、合コンと言ってしまうとY先輩は参加してくれなさそうではある。
急ぎ――参加する旨をS先輩に伝えると、追加の情報が送られてきた。参加者は男3人,女3人の計6名で、男サイドのメンバーは僕,S先輩,リーダーの3人だ。女性側のメンバーはY先輩とA先輩、もう一人は同じテニスサークルの一年生で、Y先輩と練習しているところを何度か見たこともある子だ。
彼女と僕は特別仲が良いということもないが、決して知らない仲でもない。それを考えると…このメンバー間で一番繋がりが薄いのは、僕とY先輩だということになってしまう…。
そんな僕が、Y先輩の誕生会にお呼ばれしていいものか…どうしても気後れしてしまうが、Y先輩とお近づきになるまたとない機会を逃す訳にもいかない。
同級生の彼女は知らないが…他の参加メンバーは僕とY先輩が仲を深めるのに協力的なようだし、全員味方に付けば非常に頼りになる存在である。
恋愛の分野において、本命を落とすためには周りから固めるのがいい…と聞いた事があるけど、全くその通りだ。
(・・・恋愛って、こんなゲーム感覚でしていいものなのかな…?)
(まあ...いっか――。)
明日はサークルの活動日だ。A先輩にプレゼントの相談をして、S先輩やリーダーにも合コンでの立ち回りについて色々アドバイスを貰おう。
人生で一度しかない――大学生活1年目の、この夏休み。それを充実した最高のものにするためにも、万全を期して、来たるべき週末を迎えようじゃないか。
それはともかく…夏の終わりも近づくというのに、僕の方は浮わついた話の一つも無いというのが現状だ。
その一方で、歓迎会で仲良くなった同期のOくんは、先日行われた他大学との合同合宿で念願の彼女をゲットして、充実した夏の思い出作りに励んでいるそうだ。
Y先輩は合同合宿にも懇親会のバーベキューパーティーにも参加しておらず、結局Y先輩と親睦を深める機会はあの歓迎会以降も一度も訪れていない。元々サークル活動にはあまり積極的ではないようで、普段の活動でも会うことはほとんどなく、珍しく来たとしてもA先輩を含む数人のグループで固まって練習しているため、話しかけるタイミングは一向に訪れない…。
普通のリア充大学生のように、ただ恋愛したいだけならY先輩に拘る必要はないのかもしれない。
Y先輩はどう見ても高嶺の花という感じだし、Oくんのように手近な女性にターゲットを絞る方が成功率が高いのは分かっている。
でも...やっぱり初めての恋愛体験は周りに流されてではなく、もっと自分の気持ちを大事にしたい。Y先輩のことが好きかどうかはまだ分からないけれど…特別な感情を抱いていることは確かであり、その正体を突き止めるまでは次の恋愛に移行する気はどうしても起きないのだ。
――と...こんな具合に、新しい彼女と共に一夏の思い出作りに励むOくんとは対照的に、僕は独り――薄暗い部屋の中で悶々とした夏休みを過ごしている。
そんな僕にとって吉報と言わざるを得ない、S先輩からの新着メッセージの通知が届いた。画面に表示されたのはほんの数秒で、全文を見たわけでもないが『今週末』『合コン』『Yちゃん』の三つのワードは確認することが出来たため、僕の心は期待でいっぱいになっていた。
S先輩から送られてきたそのメッセージの全容は、僕の期待を裏切る……ものではなく、紛うことなき、Y先輩も参加するという合コンへのお誘いだった。
A先輩が僕のためにセッティングしてくれたらしく、どうやら建前上はY先輩の誕生日パーティーということになっているようで...僕達もその体で参加する必要があるらしい。
…確かに、合コンと言ってしまうとY先輩は参加してくれなさそうではある。
急ぎ――参加する旨をS先輩に伝えると、追加の情報が送られてきた。参加者は男3人,女3人の計6名で、男サイドのメンバーは僕,S先輩,リーダーの3人だ。女性側のメンバーはY先輩とA先輩、もう一人は同じテニスサークルの一年生で、Y先輩と練習しているところを何度か見たこともある子だ。
彼女と僕は特別仲が良いということもないが、決して知らない仲でもない。それを考えると…このメンバー間で一番繋がりが薄いのは、僕とY先輩だということになってしまう…。
そんな僕が、Y先輩の誕生会にお呼ばれしていいものか…どうしても気後れしてしまうが、Y先輩とお近づきになるまたとない機会を逃す訳にもいかない。
同級生の彼女は知らないが…他の参加メンバーは僕とY先輩が仲を深めるのに協力的なようだし、全員味方に付けば非常に頼りになる存在である。
恋愛の分野において、本命を落とすためには周りから固めるのがいい…と聞いた事があるけど、全くその通りだ。
(・・・恋愛って、こんなゲーム感覚でしていいものなのかな…?)
(まあ...いっか――。)
明日はサークルの活動日だ。A先輩にプレゼントの相談をして、S先輩やリーダーにも合コンでの立ち回りについて色々アドバイスを貰おう。
人生で一度しかない――大学生活1年目の、この夏休み。それを充実した最高のものにするためにも、万全を期して、来たるべき週末を迎えようじゃないか。
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