多機能型特別公衆便所 ==特便==

辻 野乃子

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Extra case ~聖女さまの告解室~ #6

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 男はすっかりトランス状態に入っており、準備は万端である。
「それでは、想像してみてください…。アナタが想いを寄せる彼女の姿を……そして、その彼女があなたの前に居るところを……。」
「あの娘が...今ここに・・・。」
 本当に簡単な誘導だが…どうやら上手くイメージ出来ているらしい。催眠導入によって力の抜けきっていた(特別ドコとは言わないが)全身から、エネルギーがギンギンに溢れ出ているのが見て取れる。
 概ね――、こういった妄想は常習的に行っているのだろう。

「フフッ―――。」
「どうかしました…?」
「いえ、失敬・・・。あまりにもをされていたものですから、つい…。
 本当に…、好き――なのですな。そのお嬢さんのことが…。」
 そう言った途端…先程まで浮かんでいた笑みは消え去り、明らかに動揺の色が見え始めた。

 ・・・ワタシ――、また何かやっちゃいました?

「な・・・っ!ち、違…っ!俺はなんかじゃ……あっ!!」
「ロリコン・・・?」
「あ……ええ…っと・・・。」
 口元はパクパクとしきりに動き、言葉にならない言い訳が出入りを繰り返している…。

「ハハッ、隠さずとも良いではありませんか!そういうのは、現実リアル空想フィクションの区別さえついておれば問題ありませぬよ。
 …かく言うワタシも・・・ショタモノは密かに嗜みます故、お気持ちは分かりますがな…。」
「ほ、ほ...本当に違うんですっ!!俺があの娘に抱いているのは、決してそういう感情じゃなくて……というか!それ以前に、彼女は成人済みで…そもそも精神医学の世界ではロリコン(小児性愛者/ペドフィリア)というのは13歳以下を恋愛対――」

 ――何やらブツブツと言い始めたが・・・この分では、トランス状態も完全に解けてしまっているだろう…。
 ここから同じ手順を踏んで、再びトランス状態に誘導するのは至難の業だ…。
 ならば―――。


「――年はちゃんと恋愛対象からは外していて…だから!俺は断じてロリコンなんかじゃ・・・っ」
「――大丈夫だよ。もし、"お兄ちゃん"がロリコンでも…ワタシは"お兄ちゃん"のこと嫌いになったりしないから……。」
 少し…舌っ足らずな感じと、鼻にかかった甘ったるい声で語りかける。
 天の声から御本人様にシフトチェンジ――催眠モノを諦め、シチュエーションボイスの方向に舵を切ることにした。

「―――??!い、今の声・・・どこから!?」
 その反応も無理はない…。今の美少女ヴォイスが、先程まで目の前に居たこのブスから発せられている、、などとは俄かに信じられまい。
「ここだよ、・・・お兄ちゃん。ワタシは…ちゃぁんと――、ここに居るよ…。」
 そう耳元で囁き…この声が紛れもない肉声であることを判らせてゆく。
 ふぅ~~っ...と息を吹きかけると、男の体はビクンッと跳ねて肩甲骨が引き上がる。

「ンひ―――っ!?ほ、本当に…聖女さまの声……?」
「…驚きましたかな?ワタクシ、声真似にも自信がありましてね……。
 もし・・・件の彼女について、詳しく教えていただければ...完璧とまではいかずとも、それに近づける……なんてことも出来ますが...。」
 ゴクリ―――。と、生唾を呑み込む音が聞こえる…。

 シチュエーションボイスにおいて、最も重要と言えるのが没入感である。故に、肝心の相手のキャラがブレブレでは、聞き手が全く集中出来ず...とても良作と言えるものには仕上がらない…。
 その為――、如何なる手を使おうとも……ワタシには"あの娘"とやらの人物像に迫り、そのを深めていく必要があるのだ。
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