多機能型特別公衆便所 ==特便==

辻 野乃子

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case4 ~漁師町の雪女~ ーother sideー #6

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――ともあれ…馬鹿だ馬鹿だと、散々バカにはしてきたものの……存外ゲンさんの行動は理に適っていたのかもしれない。
 姉ちゃんからしてみりゃあ…本番有りの援交だと思ってたら、ただ世間話に付き合っただけで終わって、オマケに報酬もしっかり貰えた――ってな話だ。ちょっとくらい法に抵触するからって、別に実害があった訳でもねえし、口止め料も込みで...ってな具合に、お目こぼしを貰えても何ら不思議はない。

「ま、こんなクソ寒みぃトコで立ち話も何ですし、ゲンさんも無事に成果を上げて帰ってきた事ですし・・・またうちで例の"アレ"といきましょうや。」

「・・・アレって・・・またやるのか・・・。」



===数分後===
↓↓↓↓↓↓↓↓↓

「―――てなワケで、『冷凍マグロ解凍大作戦!!』第二回作戦会議の始まり始まり~~。」

「おーーーぅ!!」

「・・・ゲンさん、ノリ良いですね・・・。あんまりコイツを甘やかさないでくださいよ・・・。」

「とにかくだ…まずはゲンさんの特攻によって得られた成果の確認、そっからそれらを踏まえての今後の行動指針についてが今回の議題となる!」

「成果――つッてもよぉ、今回の成果は姉ちゃんの、嘘かホントかも分かんねえ"アケミ"って名前だけだぞ。そんなんで進展はあんのか?」

「それも成果と言えば成果っすけど…もっと他にないんスか?ほら、30分も姉ちゃんと世間話してきたんでしょう?」

「そうは言ってもよお…気安く質問も出来ねえんだから、ほとんど一方的に話してただけだべ?他にも話の流れで…好きな食べ物は麻婆豆腐だとか、妹が一人いるとか、酒はあんまり強くねえとか――、そういうのも聞けたには聞けたが・・・」

「いや―――ガッツリ色々聞いてきてんじゃないっスか!!」

「お…おぅ…?ンだども、そんな大した情報でもねえだよ。」

「いやいや…そもそも、俺っち達の目的は姉ちゃんの素性調査じゃなくて、仲を深める事なんスから。そういう小さな情報も、十分に重要な成果っスよ。」

「それもそうか…。」

「とはいえ…さっきと違う事を言うようで、すまねえが…より姉ちゃんの心に踏み込んでいくためにも、結局のところ素性調査は必要だ。よって――今回の会議では、姉ちゃんの素性について深堀していこうと思う。」

「・・・そういう事なら、ちょっといいだか・・・?
 ここに来る途中で"アケミ"って名前の掃女で検索かけてみただ・・・。どれも姉ちゃん本人ではねえだども・・・一応、3人ヒットしただ・・・。こん中に何か手掛かりはねえだか・・・?」

「どれどれ・・・。うーん、確かにめんこい娘ばっかだけんども…やっぱ姉ちゃんとは別人だべ。」

「この中に姉ちゃんの知り合いが居て、咄嗟にその名前を借りた...ってな可能性もあるにはありますけど……ま、何の根拠もない憶測は頭の片隅にでも寄せときましょうや。
 ま、それよりも――これで姉ちゃんが、ここに来るより前に"アケミ"って名前の掃女として活動してた可能性は薄くなったな。」

「んだな。…にしても、都会の掃女ってのはこう・・・揃いも揃ってべっぴんなんだなぁ…。」

「都会の……っツーか、SNSで営業かけてる掃女は…って感じっスかねえ。」

「・・・どういう事だ・・・?」

「ほら、特便って基本は開けてみねぇとどんな娘が入ってるか分かんねえだろ?でも掃女からすりゃあ、客がドアを開けた時点で営業は成立するワケ。入ってくる前に顔を見られる事で、客に逃げられる可能性のあるような掃女なら、わざわざSNSで顔を晒す理由はない…ってな話よ。」

「確かに…掃女に限らず、見た目に自信がなけりゃあ自撮りなんてあげねえか…。しかもその写真だって加工盛り盛りだったり、そもそも別人だったり...なんて話も聞くしな……。」

「・・・見栄っ張りは、男も女も変わらねえだな・・・。」

「でも…そんなら姉ちゃんは掃女のアカウント持ってんじゃねえか?あんだけのべっぴんさんなら、写真さえ載せてりゃあ男なんていくらでも釣れんべ。」

「いや――、姉ちゃんは掃女の中でもかなりな例みたいですし、アカウントは持ってないんじゃないっスかねえ。」

「特殊・・・ってーと、どう特殊なんだ?」

「そう!そこが今回の議題の肝なんスよ!!まず…そもそも姉ちゃんは清掃員でもあるが清掃員ではねえ。あの特便の【管理人】だ。そして特便ってのは国の運営する施設でもあり、それを管理する姉ちゃんは"国側"の人間ってことになる。」
 
「・・・てことは、姉ちゃんって公務員なのか・・・?」

「う~ん…俺っちもそこまで詳しくは知らねえけど、管理人だと多分準公務員ってトコかねえ…?ともかく、国にとって掃女アカウントってのは"取り締まる程でもねえが、公に存在を認める訳にもいかない"...みたいなグレーな存在だ。てな訳で、立場上…姉ちゃんが掃女アカウントを持つのは、いろんな方面にとって都合が悪いって事っスね。」

「なるほどなあ…。姉ちゃんが特殊だってのはよく分かったけんども…だったら何だってんだ?」

「そうっスねえ……ここで押さえておいて欲しいポイントは二つ。一つはさっきも説明した通り…姉ちゃんはSNSを使った広報活動が出来ねえって事。これは外部から客を呼ぶことが出来ないって事であり・・・それに伴って収入源となる男がこの町に住む連中に限られるって事でもある。」

「まあ…そりゃそうだわな。」

「そしてもう一つは、姉ちゃんには歩合制のアルバイト・・・じゃなくて…ボランティアである清掃員とは違って、安定して生活できるだけの固定給があるって事だ。」

「固定給…?てことは…俺達がいくら貢いだところで、姉ちゃんの懐はあったまんねえのか!?」

「いや…流石にそれはないんじゃないっスか…?管理人兼清掃員って事なら、固定給にプラスで清掃員としての給料も入るハズですし。」

「そ…そうだよな!!ホッ―――。」

「・・・そこ・・・そんなに大事なとこですか・・・?
 ・・・それでタツ・・・何でいきなり金の話になってんだ・・・?」

「ま、こっからはただの俺っちの仮説なんだが……もしかすると姉ちゃんは、多額の借金を抱えてるかもしれねえ。」

「借金……?そりゃまたどうして?」

「さっき説明した二つのポイントを踏まえた上で、改めて考えて欲しい――。

 俺達がいつ見ても、特便に姉ちゃんが居るのは何故だ?」
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