掌編まとめ(810以内の短編集)

くろひつじ

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夏のある日に

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テーマ:星空と二人


「今日さ。星を見に行かない?」

 8月に入った初日。彼女はいきなりそんな事を言い出した。
 小学生の宿題じゃあるまいし、なんでわざわざ星なんか見に行かなきゃならないのか。

「やだよ。面倒くさい」
「たまには付き合ってよ。今日だってこっちが買い物に付き合ってんだから」

 う。それを言われると弱いな。
 でもなぁ。星かぁ。まったく興味ないんだよなー。

「うーん……分かった。でも星の事なんてまったく分からないよ?」
「それでも良いよ。君と一緒に星をみたいだけだから」

 そっと両手でこちらの右手を包み込んだきた。
 ひんやりとした感触。でも、顔が熱くなっていくのが分かる。

 くっそ。ずるい。こんなの、断れる訳がない。

「……夜の九時。いつもの公園でいい?」
「うん。それでいいよ」

 それはもう嬉しそうに笑う。
 この笑顔を見れるんだから、星を見に行く程度、お易い御用だ。

「じゃあ、また夜にね」

 ひらひらと手を振って、軽い足取りで帰って行った。
 ……こっちも帰るか。


 家に帰って夕飯と風呂を済ませ、スマホで星のことを調べてみたりしていると、あっという間に約束の時間になった。

 自転車をこいでいつもの公園に向かうと、既にブランコに乗って空を見上げている不審者を発見。
 その隣のブランコに腰掛けて、同じように空を見上げる。

「ね。夏の大三角は分かる?」
「一応。ベガとデネブとアルタイルだっけ?」
「そう。ベガが織姫でアルタイルが彦星だね。天の川を挟んでるから一年に一度しか会えないんだよね」
「あー。あれ、きっつい話だよなー」

 よく覚えてないけど、イチャイチャしすぎて仕事しなくなったから会えなくなったんだっけか。
 自業自得と言ってしまえばそれまでなんだけどさ。

「私たちはいつでも会えるから。良かったなって思う」

 何気に毎日会ってるし。ずっとイチャついてる訳じゃないけど、織姫と彦星みたいだな。

「まぁでも、私らの場合は2人とも織姫だけどなー」

 隣で笑う彼女を見て、私も笑った。
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