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溜め息しか出ない
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あれから何とか家路に着き、モヤモヤとした気持ちを抱えてコンビニで買った酒で飲み直していると、スマホが震えた。朝田からの着信だった。
「ハイ。何?」
「あ、えっと、佐崎さんですか?今日、すいませんでした…」
「俺も急に誘ったから別にいいよ」
広田は決して口が軽い女ではない。きっと飲み会でも俺が話すなと念を押したことは守ってくれているはずだ。こちらから春日井のことを聞いてしまうと良くない流れになると思い、とりあえず電話越しに朝田の様子を窺った。
「あの…」
「ん?」
「今日なんですけど、実はあの後広田さんと会って」
「…へえ」
「もんじゃ焼き食べに行ったんですけど。何か、色々お話聞いて貰えて良かったです」
お互いにとって最悪の展開だった。俺はドタキャンされた上に嘘を付かれて、そして朝田も春日井と飲んでいたことを隠そうしている。既にバレているとも知らず。
つまり、今日俺が一人で退社した後、朝田と春日井が何故か飲みに行くことになり、俺との約束をキャンセルしたということだよな?俺より春日井と話したかったってことか。
「…用事が出来たって言うのは広田だったってこと?」
「…いえ、それは別件なんですけど。それが無くなっちゃって、広田さんがたまたま連絡くれて、飲みに行くことになりました」
「ふーん。でもそういう時は普通、お前から俺に連絡するのが筋じゃないの?一応約束してたし」
「…すいませんでした」
「もう帰っちゃったかと思って」と小声で弁解を続ける朝田にイライラして、つい小さく溜め息が出てしまう。朝田もそれに反応して、どんどん萎縮して遂には何も話さなくなった。こうなってしまうと、まともなコミュニケーションなんて取れやしないだろう。
「別にお前が誰と飲もうが関係ないけど。嘘付くのはやめろよ。馬鹿にされてるみたいで腹立つから」
「…馬鹿になんてしてません!佐崎さんがいつも強引だから断り辛いんです!」
「あー、なるほど。悪かったな。お前みたいな面倒くさい女、頼まれても声掛けねーよ!」
「…そうして下さい!佐崎さんなんて大嫌いなんで!」
静かになったスマホを隣に放って、少しだけ残っていたぬるい缶ビールを煽った。マジで腹が立つ、あの女…!大嫌いだなんて悪口は小学生以来言われたことが無い。そんなことでこんなにも怒っている自分も大概だと思うけれど、全ては酒で脳が溶けているせいだと思いたい。もしかしたら朝田も飲みすぎているのかもしれないし、謝ってくるなら許してやっても良い。たった今通話を切られたばかりだと言うのに、スマホの画面を何度も確認しながら、少し冷静になろうとシャワーを浴びる為に風呂場へと向かった。
さっき朝田に春日井と一緒にいたことを問い詰められなかったのは、怖かったからだ。実はずっと春日井のことが好きだった、なんて言われてしまえば、しばらくは立ち直れない気がする。
「地味な女のクセに」
まさかこんなに振り回されるなんて思っていなかった。今まで付き合って来た美人な彼女らとはまるで違う、ぼんやりとしたしぐさの地味な女を想ってまた溜め息を吐いた。
「ハイ。何?」
「あ、えっと、佐崎さんですか?今日、すいませんでした…」
「俺も急に誘ったから別にいいよ」
広田は決して口が軽い女ではない。きっと飲み会でも俺が話すなと念を押したことは守ってくれているはずだ。こちらから春日井のことを聞いてしまうと良くない流れになると思い、とりあえず電話越しに朝田の様子を窺った。
「あの…」
「ん?」
「今日なんですけど、実はあの後広田さんと会って」
「…へえ」
「もんじゃ焼き食べに行ったんですけど。何か、色々お話聞いて貰えて良かったです」
お互いにとって最悪の展開だった。俺はドタキャンされた上に嘘を付かれて、そして朝田も春日井と飲んでいたことを隠そうしている。既にバレているとも知らず。
つまり、今日俺が一人で退社した後、朝田と春日井が何故か飲みに行くことになり、俺との約束をキャンセルしたということだよな?俺より春日井と話したかったってことか。
「…用事が出来たって言うのは広田だったってこと?」
「…いえ、それは別件なんですけど。それが無くなっちゃって、広田さんがたまたま連絡くれて、飲みに行くことになりました」
「ふーん。でもそういう時は普通、お前から俺に連絡するのが筋じゃないの?一応約束してたし」
「…すいませんでした」
「もう帰っちゃったかと思って」と小声で弁解を続ける朝田にイライラして、つい小さく溜め息が出てしまう。朝田もそれに反応して、どんどん萎縮して遂には何も話さなくなった。こうなってしまうと、まともなコミュニケーションなんて取れやしないだろう。
「別にお前が誰と飲もうが関係ないけど。嘘付くのはやめろよ。馬鹿にされてるみたいで腹立つから」
「…馬鹿になんてしてません!佐崎さんがいつも強引だから断り辛いんです!」
「あー、なるほど。悪かったな。お前みたいな面倒くさい女、頼まれても声掛けねーよ!」
「…そうして下さい!佐崎さんなんて大嫌いなんで!」
静かになったスマホを隣に放って、少しだけ残っていたぬるい缶ビールを煽った。マジで腹が立つ、あの女…!大嫌いだなんて悪口は小学生以来言われたことが無い。そんなことでこんなにも怒っている自分も大概だと思うけれど、全ては酒で脳が溶けているせいだと思いたい。もしかしたら朝田も飲みすぎているのかもしれないし、謝ってくるなら許してやっても良い。たった今通話を切られたばかりだと言うのに、スマホの画面を何度も確認しながら、少し冷静になろうとシャワーを浴びる為に風呂場へと向かった。
さっき朝田に春日井と一緒にいたことを問い詰められなかったのは、怖かったからだ。実はずっと春日井のことが好きだった、なんて言われてしまえば、しばらくは立ち直れない気がする。
「地味な女のクセに」
まさかこんなに振り回されるなんて思っていなかった。今まで付き合って来た美人な彼女らとはまるで違う、ぼんやりとしたしぐさの地味な女を想ってまた溜め息を吐いた。
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