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飛んで火に入る夏の虫
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すぐに「言い過ぎた」とメッセージを送ったけれど、既読は付いたのの、待てど暮らせど返事が来ることはなかった。
既読無視かよ!とカッと怒りが湧いたが、無視されている以上こちらからはどうすることも出来ず。
ふと目覚めると、カーテンの隙間からは既に薄っすらと明るい光が差し込んでいて、どうやらいつの間にか眠っていたらしい。酒のせいか頭が割れるように痛い。指一本も動かすことが出来ずにぼんやりと天井を眺めた。
もう一度謝った方がいいだろうか。もちろん俺はドタキャンされた上に嘘まで付かれたので、どちらかといえば朝田の方から謝罪があって欲しいと思っているけれど、
恐らくあいつはそんなことしない。
朝田は、俺とはもう関わりたくないと思っているのかもしれない。
いつもいつもこちらから食事に誘うばかりで、彼女から好意を示されたことなど一度もない。どれだけ身体を繋げても、明確な関係性を築くことなんてずっと出来なかった。本当は何度も正式に付き合うことを提案しようとしたけれど、断られることが怖くてずっと足踏みばかりしていた。
情けない自分にため息を投げて、スマホを確認してもやはり彼女からの連絡はない。仕方がない。ここはこちらが折れようと親指を動かした。
「昨日は悪かった」
これ以上長くすると余計な恨み言まで送ってしまいそうだと思い、シンプルな謝罪文を送信した。朝田はもともと返信が遅いタイプなので、しばらくは俺のメッセージなんて気付きもしないだろう。スマホを部屋着のポケットに突っ込み、喉の渇きと空腹を満たすため、重い身体を引き摺ってあまり期待せずに冷蔵庫を目指した。
予想通りというか、やはり冷蔵庫には碌な食材が入っておらず、我が物顔でそこにいたミネラルウォーターを引っ掴んでリビングへと戻った。空腹ではあるけれど外に出る気分でも無く、出前を頼む事にする。適当にピザで良いかと画面をスクロールしていると、ふいに手の中でスマホが震えた。
朝田も一晩経って怒りが収まったのだろうかと、予想よりも随分と早い返信にホっとして、メッセージを確認した。
「私こそごめんなさい。ちなみに今は家にいますか?」
「いるけど。何?」
脈絡のない質問に首を傾げていると、部屋のインターホンが鳴った。こんな朝っぱらから誰だろうか。荷物が届く予定はないし、ピザだってまだ頼んでいない。僅かに不審に思いながらも一応玄関へと向かい、招かねざる客だろうと大まかに当たりを付けながらドアスコープを覗いてみた。
「…はあ?」
ガチャガチャと急いでドアを開けると、そこには朝田が立っていた。最近俺に対する態度があまりよろしく無かった彼女が、肩を窄めて小さく縮こまり、心底申し訳無さそうに、視線を下に落としたまま。
「…え、朝田?何してんの?」
「お、おはようございます。突然来てしまって本当にすいません」
「まあ、連絡はしろよとは思うけどさ。そもそも何で俺の家知ってんの?」
「…広田さんが、前に皆で来たことあるって教えてくれました」
そういえば、入社したての頃に一度だけ同期の奴らを招いたことがあったな、と思い出した。
「まあ別にいいや。散らかってるけど、どうぞ」
「えっ!いや、良いんです。佐崎さんに渡したいものがあって、それだけですぐ帰るので…。え?!ちょっと!」
「ハイハイ。うるさいし近所迷惑だからとっとと入れ!」
何やら紙袋を振り回して喚く朝田の背中を室内へと押し込んで、今日こそ逃さぬよう、しっかりとドアの鍵を閉めた。
既読無視かよ!とカッと怒りが湧いたが、無視されている以上こちらからはどうすることも出来ず。
ふと目覚めると、カーテンの隙間からは既に薄っすらと明るい光が差し込んでいて、どうやらいつの間にか眠っていたらしい。酒のせいか頭が割れるように痛い。指一本も動かすことが出来ずにぼんやりと天井を眺めた。
もう一度謝った方がいいだろうか。もちろん俺はドタキャンされた上に嘘まで付かれたので、どちらかといえば朝田の方から謝罪があって欲しいと思っているけれど、
恐らくあいつはそんなことしない。
朝田は、俺とはもう関わりたくないと思っているのかもしれない。
いつもいつもこちらから食事に誘うばかりで、彼女から好意を示されたことなど一度もない。どれだけ身体を繋げても、明確な関係性を築くことなんてずっと出来なかった。本当は何度も正式に付き合うことを提案しようとしたけれど、断られることが怖くてずっと足踏みばかりしていた。
情けない自分にため息を投げて、スマホを確認してもやはり彼女からの連絡はない。仕方がない。ここはこちらが折れようと親指を動かした。
「昨日は悪かった」
これ以上長くすると余計な恨み言まで送ってしまいそうだと思い、シンプルな謝罪文を送信した。朝田はもともと返信が遅いタイプなので、しばらくは俺のメッセージなんて気付きもしないだろう。スマホを部屋着のポケットに突っ込み、喉の渇きと空腹を満たすため、重い身体を引き摺ってあまり期待せずに冷蔵庫を目指した。
予想通りというか、やはり冷蔵庫には碌な食材が入っておらず、我が物顔でそこにいたミネラルウォーターを引っ掴んでリビングへと戻った。空腹ではあるけれど外に出る気分でも無く、出前を頼む事にする。適当にピザで良いかと画面をスクロールしていると、ふいに手の中でスマホが震えた。
朝田も一晩経って怒りが収まったのだろうかと、予想よりも随分と早い返信にホっとして、メッセージを確認した。
「私こそごめんなさい。ちなみに今は家にいますか?」
「いるけど。何?」
脈絡のない質問に首を傾げていると、部屋のインターホンが鳴った。こんな朝っぱらから誰だろうか。荷物が届く予定はないし、ピザだってまだ頼んでいない。僅かに不審に思いながらも一応玄関へと向かい、招かねざる客だろうと大まかに当たりを付けながらドアスコープを覗いてみた。
「…はあ?」
ガチャガチャと急いでドアを開けると、そこには朝田が立っていた。最近俺に対する態度があまりよろしく無かった彼女が、肩を窄めて小さく縮こまり、心底申し訳無さそうに、視線を下に落としたまま。
「…え、朝田?何してんの?」
「お、おはようございます。突然来てしまって本当にすいません」
「まあ、連絡はしろよとは思うけどさ。そもそも何で俺の家知ってんの?」
「…広田さんが、前に皆で来たことあるって教えてくれました」
そういえば、入社したての頃に一度だけ同期の奴らを招いたことがあったな、と思い出した。
「まあ別にいいや。散らかってるけど、どうぞ」
「えっ!いや、良いんです。佐崎さんに渡したいものがあって、それだけですぐ帰るので…。え?!ちょっと!」
「ハイハイ。うるさいし近所迷惑だからとっとと入れ!」
何やら紙袋を振り回して喚く朝田の背中を室内へと押し込んで、今日こそ逃さぬよう、しっかりとドアの鍵を閉めた。
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