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学園初日
私には関係ないし
しおりを挟む「おかしいって…なにが?」
きょとんとして問い返すと、少年が信じられないという顔で見返してきた。
「だってぼくこんな格好してるのに…」
理紗は首をかしげた。
「よく似合ってるけど」
「ぼく、男ですよ?」
うん、わかってる。けど、
「だからなに?」
の一言につきる。
目の前の少年が何をしようと何を着ようと理紗には関係のない話だ。トイレを貸してくれた恩人に代わりはない。
「あなたメアリローズ様ですよね? 公爵家令嬢でエドアルド王子のフィアンセの…」
「そうだけど…。その様付けはやめてくれる? 呼び捨てでいいから。じゃあ」
部屋を出ようとドアに手をかけると、待って! と呼び止められた。
なんなのもう!
「呼び捨てなんて出来ません! お、お姉さまって呼ばせていただいてもいいですか…っ?」
理紗は目をぐるりと回した。
「だめ」
「そんなぁ」
「名前も知らない相手にお姉さま呼ばわりされて喜ぶ趣味はないの。ごめんね」
「ぼく、リュカと言います!」
「そう、お手洗いありがとうね。リュカ」
ポウッと頬を染めている相手に手を振り、いそいで廊下に出た。あの顔に見覚えはないけれど、私室を持っているのが攻略対象っぽい。あまり関わりたくはない。
学園について詳しく聞きたい気持ちと秤にかけ、逃げを選んだ。
やはり廊下に人気はない。そろそろ大丈夫かもしれない。
外へ出られそうな出入り口ともっと無害そうな人を求めて再び長い廊下を進んでいった。
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