31 / 89
学園初日
答えたくない質問
しおりを挟む「…それは答えなきゃいけない質問ですか?」
ポツリとつぶやくとドレイクがじっと視線を注いできた。
視界の端でそれをとらえながら、理紗は顔を伏せたままにしていた。
やましいことの表れと思うのなら思えばいい。
エドアルドと理紗の問題であってドレイクは部外者だ。
一線は引くべきと考えた。
そしてその考えは伝わったようだった。
「──立ち入ったことだな。すまん」
再び揺れだした風景をぼんやり見つめながら、ふと疑問に思った。
「どこに向かってるんですか」
「カフェテリアだ。他にどこか行きたいところはあるか」
「落とし物を探したいのですけど…でもどこに落としたのかわからないんです」
「ものはなんだ」
「ちいさな白いハンドバッグです」
ふむ、とドレイクが思案した。
「それなら警備局に届けられているかもしれない。あとで確認しておこう」
「でもお金がないと食べ物が…」
ピタリと歩みが止まった。ドレイクがあきれたような視線を投げてくる。
「学園内での飲み食いはタダだ。金はいらん。そんなことも知らないのか」
理紗は目を丸くした。
「タダ」
「タダだ」
タダ…。
あぁなんてすばらしい響きっ。
「はやくカフェテリアに行ってっ」
うっとりしたと思ったら突然笑顔ではしゃぎ始めた理紗にドレイクが吹き出した。
やれやれと首を振りつつ足を再び動かす。
その時だった。
「なにをしている!」
鋭い声が響き渡った。
二人が振り向くとそこには厳しい顔つきのエドアルドが立っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,691
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる