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学園初日
ダンスレッスン
しおりを挟む「はじめの数ステップでいいからお願い」
そう言ってサロン内の比較的家具が少ない所へ向かうと、怪訝そうな顔をしながらもエドアルドが向かい合わせに立った。
理紗には基本の構えすらわからない。
だが、エドアルドの左手に右手をすくい上げるように握られ、逆の手が背中の左肩甲骨の上に添えられると、理紗の体は自然と後ろに反るようなかたちになった。
そして理紗の左手が無意識に持ち上がり、エドアルドの右腕の上に置かれた。
テレビや映画でかすかに目にしたことのあるあの独特のポージングが完成した。
あ、やっぱ出来るんだ…と内心ほっとしたとき、
「ではいくぞ」
前後左右どちらとも言わず突然エドアルドが動き始めた。
すると──
握った手と背中に添えられた手が理紗の体を羽のように軽くし、優雅に舞わせた。
まるで魔法にかけられたような気分だった。
歩幅も繰り出す角度もぴったり揃ったお互いの足の動きに高揚感が増した。
さすが王子。迷いのないすばらしいリードだった。
数ステップを軽く越え何度かターンも織りまぜながら、いつまでも動ける範囲内で躍り続けているとノックの音が室内に響いた。
ゆっくりステップを踏み、立ち止まる。
「馬車の用意が出来たのだろう。行こうか」
肘を差し出され、そこに手を乗せると、あの白金の馬車に乗せられ屋敷へと送られた。
「ではまた夕刻に迎えに上がる。──楽しみにしているよ」
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