41 / 89
迎えの馬車のなか
そんな目で見ないで
しおりを挟む「はなれて」
きっぱり言い切る理紗にエドアルドが目を見開いた。
そっと無言で腕をはなし、身を遠ざける。
その瞳は傷ついた子供のように悲しげで、理紗は心のなかで顔をしかめた。
思わずため息がもれる。
「そんな顔しないの。ファースト・ダンスが済んだらすぐに帰るわよ。それでもいいの?」
「…それは早すぎる」
「ならおとなしくしててちょうだい」
不満げな様子のエドアルドに理紗はぐるりと目をまわした。
「いいこにしてたら帰り際にキスしてあげるわよ」
頬におやすみのキスをだけど。
それくらいならまぁいいか、と理紗は考えた。
軽い気持ちで口にしたが、効果はてきめんだった。エドアルドの見えないしっぽがぶんぶん振られているようだ。
「約束だぞ」
「はいはい約束約束」
そうこうしているうちに馬車の揺れがおさまった。
外から戸が開けられエドアルドがまず飛び降りた。やはりあるはずの踏み台を出そうとせず、理紗に両手をさしのべてくる。
仕方なくその手に身を預けた。
エドアルドにお預けを食らわせた分、理紗も妥協してやらなければ。
両肩に手を置くと、ウエストを掴む手にふわっと体を持ち上げられた。やはり貴公子然とした見た目に反して力持ちだ。
地面に下ろされ、差し出された肘に腕を絡ませる。
理紗はエドアルドにエスコートされながら城のなかに足を踏み入れた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,691
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる