愛について歌うきみと

輪道響輝

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第一章はじまりのうた

どうして?

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 やらかした。
 授業中に魔法発動からの意識不明。そして腕の骨折。どうしてこうなった?助けようとしてくれたライも魔力切れを起こしてたらしいし。本当に情けない。
 うぅ体が重い。
 まだ魔力が回復しきってないのか。
 体の怠さがすごい、とか考えてると義父上が入ってきた。
「リドル、大丈夫か?」
「はい、少し体が怠いですが、大丈夫だと思います。」
 少し所ではないがここは少しという事にする。あまり心配はかけたくないからね。
「その腫れている左腕は?」
「わからないです。」
 しまった、ここにとんでもない怪我があった。
 でも本当になんで腕が折れてるの?意識が朦朧としてたからか思い出せない。
 すると義父上が聖属性の魔法をつかった。確か、鑑定魔法だったかな?すると結果を見た義父上がため息をついた。
「すまないリドル、腕が折れてるようだがあまりにも複雑すぎて治癒魔法では直せない。」聖属性の治癒魔法はかなり効果が高いはず。
 それでも治癒出来ないってどういうこと?とか考えてると全部口に出てたらしく、義父上が説明してくれた。
「いいか?聖属性の治癒魔法は修復と排除だ。不純物を取り除きながら、傷口に周りの細胞を集めて、塞ぐやり方だ。水や、風みたいに回復を促進させる訳では無いからこういう構造が複雑なものは治癒できないんだ。」
 そうなんだ……一概に治癒魔法と言っても内容は全く違うわけだ。魔法で直接治癒をするか、魔法で回復を促進させるかの違い、これは面白そうだ。また今度メイ先生に教えてもらおう。
 まぁそれは置いておいて。この折れた腕、どうしよう。このままでは魔法は愚か勉強もできない。
 どうしようかと悩んでいたら、ふと思いついた。
「あの、水属性や風属性の人に治癒して貰うのはどうでしょう。」
 しかし義父上の反応はイマイチだった。
 どうやら損傷が酷すぎて魔法でどうこうできる物ではないらしい。
 一体どんな折れ方したんだ。
 しばらく悩んでいるとライがひょこっと出てきた。
「ライ?!大丈夫なの?」
「この通り元気だよ!!」
 そう言うとバク宙した。どうなってるのこの人の運動神経。
 危ないだろと義父上に注意を受けているライが僕の腕を見てあ~と言う顔をした。
「にしてもやばいなその腕、腕折って魔法止めるのは頭いいなとは思ったけど。」
 え?腕を折って?魔法をとめた?そんな馬鹿な……
 それを聞いた義父上がなるほどと言いながら頷く。どうやら納得したらしい。
 自分で腕を折るってどんな状況なんだ?
 すると突然ライが折れた腕を触ってきた。
「うーん、出来るか分からないけど一瞬で直せるかも。」
 え?どうやって?聖属性の治癒魔法でも無理だったのに。
 次の瞬間ライの時属性の魔法が折れた腕だけを包み込むそして……見事に腕が治ったのだ。
「一体どうやっt……ライ?!大丈夫?!!」
 しかし次はライが倒れてしまった。後で聞いたのは時属性の魔法は魔力の消費が激しいらしい。
 倒れるって分かってたらこんな事させなかった。どうしてそこまでして僕を助けてくれるの?
 ライは、ライはどうしていつも自分を大切にしてくれないんだ。

 ◆◇◆

 あれから二週間後、ライはまだ起きない。
 魔力が回復しきってない状態で魔法を使ったせいで、文字どうり命が削られた。
 そのお詫びと言ってはなんだが、触れ合うだけで少しづつ魔力を渡せるらしいので、手を握り魔力を送る。
「早く起きて欲しいな。」
「あぁ、何時もは五月蝿いと叱るが、こうして歌が聞こえてこないとそれはそれで寂しいものだな。」
 ?!!?!!?!!!
 いつの間に入ってきたのか、気づいたら隣に義父上がいた。
 そして慣れたような手つきで鑑定魔法を使い状態を確認した義父上は、やはり状態が良くないらしくため息をついた。
 どうやら魔力は10分の1すら溜まってないらしい。
 どれだけ辛かったのだろう。魔力があまりない状態で魔法を使うのはとても苦しいと聞く。
 息も出来ない、動くことも出来ない、音も聞こえないし、目も見えない。
 そんな状態であれだけのことをしたんだ。
 まったくライは本当にバカじゃないのか?自分は大丈夫って、全然大丈夫じゃないじゃん。こんな僕の腕を治す為だけにそんな事しなくてよかったのに。
 時間が経てばしっかり治るようなものなのに。
 君が倒れたら、意味ないよ。お願いだから、起きてよ!
 ライ!!!
 体から魔力が抜けるのがわかる。恐らく魔法が発動しているのだろう。だけどおかしいな、いつもみたいな体から湧き出るような力が出ない。あぁそうか。ライを起こすために、ライを癒しているんだ。
 ふと周りを見渡すと、辺りにはカモミールやムラサキハナナが舞っている。確かこのふたつの花言葉は『癒し』。
 やはりライを癒してくれているんだ。
 するとライの瞼が動く。
「リ………ド…………ル……………?」
 次の瞬間待っていた花が繋いだ手に集まってくる。そして繋いでいた冷たい手が段々と暖かくなってくる。
 一瞬、優しい光に包まれたと思ったら2本の腕に引き寄せられた。それに応えるように腕をその体にまわす。
「リドル!」
「ライ……ライ!」
 しばらくはそのままでいたが、義父上に引き剥がされた。どうやら僕の魔力が半分を切ったらしい。
 危ない危ない。また心配をかけるところだった。
 でも本当に良かった。ライが起きてくれて。

 ◆◆◆(sideクリフト・ルナ・アビスガード)

 ブライトが倒れてから二週間。まだ起きないブライトを心配してブライトの部屋に入ると、リドルがいた。
「早く起きて欲しいな。」
 全くその通りだ、何時もは五月蝿いと叱ってしまう歌が聞こえてこないのは寂しいものだなと言うと、悲しそうな笑顔を見せられた。
     鑑定魔法を使って状態を見るもやはり回復はあまり出来ておらず、リドルが分け与えた魔力も身体の回復で消費されてしまう。 
 やはり魔力があまりない状態で時属性の魔法を使ったようだな。
 さっきからリドルが泣きそうになっているのを見ると、何もしてやれない事に悔しくなってしまった。
 そしてリドルが「起きて」と呟いた時にその魔法は発動した。
 周りには無数の花がリドルとブライトを包み込むように舞っており、肌が感じているその心地いい魔力に、さっきまで感じていた憤りや、焦燥感がスっと消えていくようだった。
 そしてブライトのまゆが動き、何かを言った。
 その瞬間、舞っていた無数の花はある一点、繋がれたリドルとブライトの手に集まり、優しい光が弾けるように当たりを包み込んだ。
 そして見えたリドルの姿は、大きな翼が生え、髪が長くなり、身長も凄く伸びており、妙に大人びていて、心地の良い光がまとわりついていた。
 よく分からないその姿は数秒で元に戻り、目の前では愛する息子が2人、抱擁を交わしていた。
 少しリドルの様子がおかしいので鑑定魔法を使うと魔力が残り半分を切っていた。急いで引き剥がすと、いつもどうりのブライトがいて、安心した。
 その後は邸にいる専門医に任せ、書庫に行く。そして様々な文献を漁るも、リドルの魔法について書かれているものはなかった。 
 当然と言えば当然なのだが、やはりここまでなんの情報もないのはおかしい。
 今まで1度もなかったのだろうか。
 そして気になるのはもうひとつ、リドルが全ての属性魔法に近いものを使えるということ。
 これはすべての属性を持つということなのか、それとも謎の属性の特性なのか。分からないな。
 そしてあのリドルの姿、どこかで見たことがある。
 なんだったかは思い出せないけど。確かに見た事があった。文献か、それとも絵画か、それかまた別の何かか………
 とにかくリドルが新しく魔法を発動させたので、陛下に知らせなければ行けない。
 紙を取り出しサッとペンを走らせる。そしてその手紙を魔法で王宮に飛ばし、数分後王宮から手紙が飛んできた。内容はお礼と引き続きリドルをよろしく頼むとの事だ。
 ふと耳をすませば、ブライトの歌が聞こえてくる。その美しい歌声にうっとりしながら、邸を出る。仕事は忙しいし、人間関係もめんどくさいけれど、あの歌声で今日も頑張れる。それに、リドルがくれた、可愛らしいぬいぐるみがついてる。
 手のひらにちょこんと乗るサイズのそのぬいぐるみには、魔力が込められており、微量ながら魔力が回復できる。これもリドルの魔法でできたものらしい。朝から色々あったが、これで安心して出張に行ける。
 さて今日も愛する家族のために、頑張るとしますか!
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