愛について歌うきみと

輪道響輝

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第二章 代償と揺らぎ

希望は無い

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 あれからどれだけだったのだろう。やっと起き上がれるようになったのは二日前。
 不甲斐ない。

 義父上によるとこれからは王宮で暮らすらしい。
 学園には通うけど常に護衛はつくとの事だ。とは言ってもまだまだ歩く事もままならない。
 僕の魔法がかなり強力らしくその分魔力が大きく消費され、命を削っていたらしい。そのせいで回復が遅れているのだそう。

 単純な魔力量ではかなり多いはずだがそんなに消費されるのか?

「リドル、体調は大丈夫か?」

「はい、少しづつではありますが良くなってます。」

 びっくりした、義父上いつの間に入ったんだろう。

「……」

 気まずいな、なんて言ったら怒られるだろうな。ぼくのせいで、ライが死んだんだ。
  
「どうせならあのまま死んでいれば良かったのにな」

「ばかもの!!」

 ボソッと呟いた本音が義父上の耳に届き、頬に重い衝撃が走る。じんじんと痛む頬を抑えるのと同時に抑えていた物が溢れ出した。

「僕なんか生まれなければ、ライは死ななかったし、父様も市井に行くこともなかったじゃないですか!!永く続いたフレイム男爵家が終わったのも、アビスガード家の反対勢力が拡大したのも全部僕のせいじゃないですか!!それなら……それなら僕なんて生まれなければ………良かった……のに………」

 すると何も言えないまま義父上は部屋を後にした。こういう所なんだろうな。何も悪くないどころか、助けに来てくれた義父上にあたって、完全なる不幸者じゃないか。
 これだから嫌いなんだよ、自分が。

 ◆◇◆

 あれからしばらく経って、学園にまた通えるようになった。体はしっかり動くし、魔法も使える。でもあれから義父上は顔を見せなくなった。
 当たり前だよね、助けたやつにあんなことされて怒らないわけが無い。

 そして、これから学園に行くのだがまさかヘルブラム殿下と同じ馬車に乗るとは…王宮から通うからおかしくはないけど少し気まずいな。それにあんなことがあったし学園にも行きたくない。………消えたいな。
 何もかも忘れて、誰もいないところで、一人で、消えていたい。何も考えたくないし何もしたくない。
 しれっと学園を抜けてどこかに行こうかな。

 もうつかれた

 ◇◆◇(sideクリフト)

 出来ることなら、このまま僕とルコアとブライト、そしてリドルと一緒に暮らしたかった。
 しかし、リドルは常に何者かから命を狙われる立場であり、ブライトは……もう戻ってこない。それにリドルに言われて思ってしまったのだ。
 って。
 これでは、ブーム殿からリドルを預けた意味がないと、怒られてしまう。

 悔しいな、ここまで何もできないなんて。リドルも救えなかった、ブライトも死んでしまった、ルコアも寝込んでしまっている。

 救いたいと思って引き取ったリドルを憎んでしまうなんて。

「このままでは本当にリドルを殺してしまいそうだ。」

「クリフト様、それくれぐれもフリーナさまの前で言わないでくださいね。」

「あぁ、わかっている。」

 口に出てしまっていたのか、気を付けなければ。

 苦しいな、でも今はリドルのほうが苦しいはずだ。今日こそは、リドルと話しに行くぞ。絶対にリドルを救い出すんだ。ブーム殿が、ブライトが、ルコアが、アルランディスが、僕が愛するものを守り抜くと誓ったんだ。

「クリフト様!!!リドル様が…………とのことです!!!どうされますか?!!」

 え?
 リド……ㇽが?

「すぐにうちの私兵を派遣しろ!!!なんとしてでもリドルを探し出せ!!!私も行く!!!」

 装備は、もうこのままでいい。神様、お願いします。これ以上、僕から愛するものを奪わないでください。
 もう、耐えられないんです。

 ◆◆◆

 これまで、アビスガード家は邪悪な魔力であるアビスの力から国を守ってきた。アビスガードという名前もアビスの力から守ることからつけられたそうだ。そして、アビスとの戦いはいくつもの犠牲を払ってきた。ともに笑いあった友に、尊敬の意を向けてくれたもの、御祖父様や父上、みんな大切だった。失いたくなかった。
 それなのにみんな死んでしまう。

 父上が亡くなったのは僕が10にも満たない頃。アビスの力が湧き出る巣窟に向かい、そのまま帰って来なかった。

 帰ってきたのは傷だらけになった父上のブローチだけ。その後は僕の代わりに母上が当主代理として頑張ってくれていたが、学園を卒業し、もう仕事をこなせるようになった所で過労死してしまった。

 ルコアがいなければ立ち直る事は出来なかっただろう。ブライトも生まれ、きっとこれからは幸せに生きていけるのだろうと思っていた。
 そんな時にブライトからフレイム男爵家が怪しいから調べてくれと言われた時はびっくりした。

 フレイム男爵家を調べていくと、出処のはっきりしない資金、異常な使用人の少なさに疑問を抱き探偵を雇い、調べてもらった結果は黒。

 普段からの暴力と暴言、使用人を少なくし、幼いリドルに家事をやらせる、それだけではなくリドルを資金調達のために伯爵家や子爵家の物に性奴隷にさせ、ことごとくリドルを傷つけたことが発覚した。
 そこからは地獄だ、この件に関わった者たちへの事情聴取、そして裁判に加え、アルランディスとリドルの引き受け先の選定。
 1週間で終わったのが本当に不思議だ。

 その後無事に家に養子として迎え入れたリドルは、健気で、それでいて純粋で、どこまでも明るかった。虐待など物にしないような、そんな姿は尊敬に値する。

 それからというものただでさえ幸せなのにもっと幸せになってしまった。愛する息子たちが笑い合い、それをルコアと見守れる。そんな日常がいつまでも続くのだと、そう思っていた。
入学式の前日にブライトに話があると言われ、書斎に招き入れる。そしてブライトは言った。自分は死に、リドルは………生き地獄に晒されると。

ブライトが見た未来は、学園からの帰宅途中、竜属性を扱う魔導師に襲撃され、何も出来ずに、殺され、リドルは連れ去られる。
連れ去られたリドルは、軟禁され、飯も与えられず、ただただ肉便器として下級貴族に遊ばれると。
その話を聞いて戦慄した。
同時に、2人とも守ると覚悟もした。いつ襲撃にあってもすぐに駆けつけられるように、ブライトに位置情報を知らせる魔法を教え、ルコアに最悪の場合を伝え、私兵達にもこれまで以上の訓練をさせた。しかしそこまでやってもブライトは助けられなかった。そして今もリドルを恨んでしまっている。

僕は父親失格だ。

◇◇◇

「……ま!!ク……様!!クリフト様!!大丈夫ですか?」

「あぁ大丈夫だ。それよりそっちはどうだ」

しまった、考え込んでしまっていたな。

「こちらにも居ないとの事です。」

どこに行ったんだ?リドル!
早く出てきて、元気な姿をみせてくれ。
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