愛について歌うきみと

輪道響輝

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第二章 代償と揺らぎ

逃亡と愛するもの

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 もっと、もっと遠くに行かないと。もっと先の方に、誰も居ない所に。
 ここにいたら皆が…………… 

 ◆◇◆

 馬車に乗るのか………護衛もこんなに沢山。
 いや……だな……また襲撃を受けたら護衛のひとたちも、ヘルブラム殿下も………
 すると考えていることを読み取ったのかヘルブラム殿下に抱き上げられ、強制的に馬車に乗せられた。

 幸い、襲撃に合うことはなく、平和に学園に着いた。教室に入るとライが座っていた席は花が飾られていた。雰囲気は最悪。そこらでこちらをチラチラ見ながら何かを話している。それ見たヘルブラム殿下が憤りを感じているのがわかる。その圧に屈したのかシンと静かになった。

 しばらくして授業が始まるが、やはり頭には入らない。聞こえてくる音は、右から左へと流れていく。まるで黒白にでもなったかのようなそんな光景に心が苦しくなる。

 もう疲れたんだ。なんでいつもこう人を傷つけて、不幸にして、不愉快にさせることしかできないんだ。僕に幸せになる権利なんて元々なかったんだ。分かっていたのになんで手を取ってしまったのだろう。それならここからもう居なくなって………………

 ◆◇◆

 あれ?ここはどこだろう。
 まぁどうでもいいか。ここは静かで、誰もいない。森の中なのか動物たちが駆け回る音が聞こえるだけ。ずっとここに居たいな。

「リドル様!!!」

 ?!!
 今、名前を呼ばれた?
 逃げないと。じゃないとまた……また皆を不幸にしてしまう。ここにいちゃ行けないんだ。
 もっと遠くに行かないと。早く、もっと、先の方に。

「?!リドル様!!!お待ちください!!」

 そんな誰かの声は無視してただ前へと足を進める。ここに居ちゃ行けないから。
 気づいたらそこは渓谷で、しかも誰もいなさそうで安心した。

「よかった」

 そう呟いた瞬間、暖かい物が全身をおおった。

「リドル君!!よかった!無事で!!」

 ヘルブラム殿下だ。なんでここに?もしかして他にも誰か?
 ダメだ逃げないと。そう思い胸の辺りまで回された腕を解き、逃げようとすると、腕を強く掴まれた。振りほどこうとするがなかなか離れない。

「離して!!」

「ダメだ、君が帰ると言うまで離さない。」

 なんで……こんな……僕なんか……いない方が………絶対に……いいのに。

「やめ…………て…………」

     そう言った瞬間に魔法が発動し、僕だけが転移した。ヘルブラム殿下の待ってという声を最後に荊棘の森に転移した。

 荊棘の森は、アビスの力が強く溢れ出ており、そこに居るだけで精神が蝕まれ、廃人になってしまう。しかしなぜだかアビスの力が効かずその場に座り込んだ。

「なんでだよ。なんでこうなるんだ。なぜ僕は何時も人を傷つけることしか出来ないんだ。」

「え?」

 僕の心を代弁した僕のものではない声が耳に入り、辺りを見回す。しかしそこにあるのはアビスの力に満ちた木だけ。誰?と問いかけても何も返ってこない。しかし声だけはずっと聞こえてくるのだ。
 もしやこの木から聞こえてる?そう思い、木に触れると僕の魔力とアビスの力がバチバチと反発する。少し痛くて、顔を顰めると木が黒く光り、より反発が強くなる。しかし離そうとしても離れないため、耐えるしかない。

 やがて木は姿を変え、魔獣「バルバトス」の姿に変貌した。バルバトスはそこに居るだけでアビスの力を撒き散らし、人を廃人にした所で食してしまう。さらに姿を変えることが出来る。しかしそれは食事をする時にしか使えない。つまり僕は食べられている最中だったのだ。

 これはちょうどいいそのまま食べられて死んでしまえば誰も不幸にならずに済む。
 しかしその願いは虚しく、僕の意思に反してバルバトスが倒れる。

 また死ぬのに失敗した。

 ◆◇◆(sideヘルブラム)

 それは授業中だった。急に魔力が教室に充満し、いつの間にかリドル君が光に包まれ、消えた。
 授業中だが教師は授業を放り出し、そそくさと職員室に報告に行き、教師が居なくなった所で、僕は魔力を辿り、リドル君の居場所を突き止めた。

 しかしそこは、アビスの力が溢れ出る荊棘の森の近くだ。危ない所の騒ぎではない。本当に死んでしまう。ブライト君だけでなくリドル君まで居なくなったら僕は…………絶対に見つけ出して見せる。

 大体の居場所が掴めたと、クリフト様に連絡を送り、自分も向かう。聖属性の僕だからこそ出来た魔力を辿るという行為、そして転移の魔法。聖属性の王族の者は20年ぶりらしく様々な文献を読まされた。あれはこういう時のためにあったんだな。

 荊棘の森の近くまで転移した所で、またリドル君の魔力を辿る。荊棘の森からは遠ざかっているみたいで少し安心した。そしてついにリドル君を見つけた。やっと見つかった。しかし、リドル君の足が早すぎて追いつけない。しばらく追いかけていると、誰もいないと思ったのかよかったとこぼした。

 すかさずリドル君を呼び無事で良かったと伝えると。絶望したかのような顔をした。思わず抱きついてしまって居たからこれのせいかと離れようとすると、腕を解かれ、逃げようとした。
 しかしここで逃がしてしまえばここまで追ってきた意味が無い。

 リドル君には元気をもらっていた。どんなときも前向きで、それでいて才能もある。成績もどんどん上げていき、その努力のことと言えば、どんな才能も努力の前では勝てないのだと言っているようだった。だからこそ希望をもてた。
 だが君は絶望に飲まれてしまった。ならば僕が救い出したい。これはただの自己満足かもしれない。だけど、リドル君にお返しがしたかった。

 腕を掴むと離してと言われたが離すわけがない。ここで話せば死にに行くのは目に見えてる。そんな事はさせない。帰ると言うまで離さないと言い、返ってきたのは絶望の一言。

「やめ……て」

 その顔は今にも泣きそうな、消えてしまいそうな、悲しい顔。あぁそんな顔をしないでくれ。君には笑っていて欲しいんだ。

しかし想いは届かずリドル君はまた消えてしまった。やはり転移の魔法だ。聖属性と魔属性のものにしか出来ない魔法。魔法陣なら誰でも出来るが、リドル君に持っているような素振りはなかった。そもそも転移では触れている相手も巻き込むはずだ。

いやそんな事を考えている暇は無い、早く探しに行かないと。
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