愛について歌うきみと

輪道響輝

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第二章 代償と揺らぎ

事が動き出す。

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 苦しい……
 息が……できない……重いし……

「んーんー」

 ん?
 へっヘルブラム殿下?!!!
 起きるとそこには僕に覆いかぶさるヘルブラム殿下がいた。
 腕を退かそうにも、僕の腕は体に回されている殿下の左腕の支配下にあり、右手が僕の口と鼻を塞いでおり、苦しくて上手く力が入らない。
 せめてもと、足をバタバタしていると、殿下がビクッと反応をし、目を開けた。するととても顔を赤くし、バッと後退し尻もちをついていた。

「りっりりリドル君?!」

 何その反応可愛い!
 ?
 かわ…いい……?
 あれ?今可愛いって……え?
 なんで?え?
 胸のドキドキが止まらない。ドキがムネムネ……

「ごっごめん、その……大丈夫?」

「だっ大丈夫……です……」

 きっ気まずい……
 と言うかなんでヘルブラム殿下がいるんだ?
 ここは僕の部屋のはず…………殿下の部屋だ………!
 え?なんで殿下の部屋?え? 

 初めて感じる不思議な気持ちとヘルブラム殿下の部屋にいる事で、困惑を隠しきれず、ワナワナとしていると、誰かが入ってきた。

「ヘルン!今日の………なにしてんの?」

 入って来たのは、第1王子であるゾファン殿下だった。ヘルブラム殿下の部屋にいる僕と、顔を真っ赤にして尻もちをついたまま動かないヘルブラム殿下を見て、とてつもなく呆れた表情をしている。
 ごめんなさい!

「昨日も寝ぼけてヘルンの部屋に一緒に入ったと思えば朝にこれですか……お前らもう婚約しろよ、お似合いだぞ。」

「あっ兄上~なっなんてことを……」

「お互に抱きついておいて何を今更。」

 その後、何故かヘルブラム殿下の部屋に二人で入り、どこからどう見ても恋人のように抱きしめあいながら寝ていたことを食卓で暴露され、からかわれまくったヘルブラム殿下が、茹でたこみたいになっていた。

 しかし王宮とは真逆に、教室はやはり冷たい空気が流れていた。もはや物理的に寒いと言ってもいいかもしれない。ヘルブラム殿下が氷属性の魔法をうっすらと発動し、周りに威嚇していたからか、余計に寒かった。

 そこらでコソコソとなにかを話しているのを聞いて、耳を立てると、やれ戦犯だの、おじゃま虫だの好き勝手言ってくれるので最近習得した録音魔法をこっそり使い、いざという時に使えるようにしておく。

 中には僕だけでなく、アビスガード家や王家までもを敵に回すような発言をしていたものもいたから。これをフリーナ陛下に提出すれば彼等は廃嫡されてもおかしくはない。

 まぁ、できるだけ提出せずに済むようにして欲しいけど……

 ◆◇◆

 そんなことを考えているとついに事が発生した。
 いつもの3人でランチから戻ると、教室の誰かが放った虫に刺された。その虫は蟲属性の魔法により生み出されたも猛毒を持った虫だ。
 虫は刺したあと、魔力の灰になって消えたため、証拠は無くなったと思っているようだ。
 アムール様がすかさず写影魔法を使っていたので無意味だったが、その虫を放ったと思われるもの、フィンネル伯爵家嫡男のルーシィ・メル・フィンネルはくすくすと笑いながらすみませんと言ってきた。

 そんな誠意も謝意もない謝罪を受け入れる訳もなく、は?と怒りを顕にしていると、頭がグラッとし、急いで治癒魔法を使おうとするも、魔力が上手く使えない。あの虫、ビオレントだったかな。
 魔力を使えなくし、さらに脳を腐らせる毒を使い、天敵から身をまもる。毒は回り安く体が小さい僕は20秒持つかくらいだ。
 次第に視界が歪み、平衡感覚を失い、今どういう状態なのかも分からず、意識が途切れた。

 ◆◇◆

 気がついた時には、知らない場所にいた。ここはどこだろう。

「リドル君!!大丈夫か?」

 誰がそういってくる。
 リドルって誰だ?私の名前はミカエラだ。
 ?なんだこの貧相な体は。身体が怠いし魔力の器も小さい。人間に比べればかなり大きいが全然足りない。
 それにこの小童、あの時力を分けたウェンディの血を引いているみたいだが……かなり薄くないか?まて、この感じ……泉の原石が呼んでいる。
 早く行かなければ。

 そう立ち上がると小童に止められた。

「リドル君!ダメだよどこに行くの?ビオレントに刺されたんだ。まだ治療が終わってないのに……」

「さっきからなんなんだ。私はリドルなどという名ではない。それにビオレントに刺された程度で私は倒れぬ」

 そう言うと小童は怯んだ様な顔をし、不思議なものを見るような目で見てきた。とにかく早く原石のところにいかなけれはならないので、転移魔法を使い泉まで行くと、何者かに止められた。
 小童めここまで着いてくるか!

「何をするんだ!お前は誰だ!リドル君に何をした。」

 うるさいな、早くしないと原石が効果を無くしてしまう。

「邪魔をするな。リドルというものも知らぬ。」

 泉に手をかざすと原石が出てきた。やはり原石の魔力がほとんどそこを尽きていた。注ぎ込もうにもこの体の器が小さすぎて足りない。
 しかしこれは神にしかできない。だから人間に魔力を使わせる訳にもいかない。
 ん?この小童、聖属性を持っているな。なら使える。

「小童!許せ!」

 そう言い小童の体に、デーメーテールを呼び出す。
 聖属性のおかげで、神が宿ることへの負担もかなり和らぐ。後で小童には最高峰の加護を与えよう。

「急に呼び出すな。それにこの体、まだ子供だろう?」

「だがそう言っている場合ではない。早く魔力を補充しなければ、この世界は崩壊する。」

 この類は大地の豊穣を司るお前なら余裕だろと付け足すと、鼻で笑いそのまま魔力を入れ始めた。いけ好かないやつだ。
 とはいえ、無事に補充できたからいいか。

 しかしまだまだ足りないからまた今度、補充しなければならないな。
 何故か身体が小さく、魔力量も少ないから回数をわけないといけない。
 デーメーテールも媒体になった小童の負担を考え、別の器を見つけるまで呼び出すなと釘を刺されたのでしばらくはそっとしておくしかない。
 はぁ誰か都合のいい媒体はないのか。

 ◆◇◆(sideヘルブラム)

 目の前でリドル君が倒れていく。ビオレントの毒は体の小さなリドル君に最大のダメージを与えた。
 成人の体も大きく毒体制をもつ者を1分で殺したとも言う毒だ。耐えれるはずもない。死んでもおかしくないその状態に血の気が引いた。幸い、一命を取り留めたが、リドル君の回復は遅すぎた。どれだけ待っても起きてこない。医師も最善を尽くしたが、どうしようもなかった。
 実行犯であるルーシィは激怒したフィンネル伯爵に廃嫡にされ、学園も退学になった。それだけでなく、殺人未遂や国家事業の妨害として罪にも問われ、しばらく牢屋で暮らすことにもなった。
 そのほかのルーシィの近くにいた者も謹慎処分になっている。

 リドル君を失いかけるのはこれで2度目だ。どうか、どうか無事であってくれと願い続け、、1ヶ月がたった。お見舞いに行くと、リドル君が目を開けた。
 奇跡だと呼びかけるも。いまいち反応は帰ってこない。脳は腐る前に解毒できたはずだがなぜだか様子がおかしい。
 はっとした顔をしたリドル君は立ってどこかへ行こうとし。それを止めるも、振り払われ。想像もしなかった事を言われた。

「さっきからなんなんだ。私はリドルなどという名ではない。それにビオレントに刺された程度で私は倒れぬ」

 リドルの第一人称は僕のはず。それに、言葉遣いがまるで違う。
 ビオレントに刺された程度で倒れないとか、訳の分からないことを言うものだから。困惑した。
 そして理解した。この物はリドルではない別の誰かだと。

 その後転移魔法を使い、どこかへ行ったのですかさずあとを追うと、そこは聖なる泉だった。まさか泉になにかする気?

 すると突然、泉に手をかざし、何かが泉から出てきた。それを見て驚いた。前に見た、リドルの魔法石のかなり大きい物に見えた。しかしくすんだ色をしているが同じものだと理解できた。
 その後すまないと謎の謝罪をされたところで意識が途切れた。

 起きると自分の部屋にいた。わけも分からず、母上に報告すると、またもリドルが行方不明になったと告げられた。
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