愛について歌うきみと

輪道響輝

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第二章 代償と揺らぎ

この日が

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 朝日が差し込み、目を開ける。そのままカーテンを開けていっぱいに入ってくる日光が気持ちいい。部屋を出て右に曲がると、いつも通りカレイド閣下がいる。頭を撫でられ、そのまま一緒に食事をとる。

「リドル、ここでの生活には慣れたか?」

「はい、カレイド閣下。親切な皆様方のおかげで思ったより早く順応できました。」

「それは良かった。見たところ、なにかに悩んでそうな様子もないし、安心してるよ。」

 良かった。ここの人達は優しくて、暖かくて、それでいてとても安心出来る。ヘルブラム殿下の腕の中みたいに落ち着く。誰も僕を疎まない、嫌なことをさせて来ない。

 平民の、それも孤児上がりなんて、本来なら冷遇されるのが普通なのに、ここではそんな雰囲気もない。1度、理由を聞いてみた事がある。この国では、身分はあれど、それをひけらかす様な真似は、不躾という風潮があるそうだ。それに、宗派が統一されているため、貴族同士の争いなんかも起きにくいらしい。

 それでも、中には差別的な意識を持つ人もいるそうだが、貴族は家の品格を下げる事になると理解しているため、表には出さないようにしているそう。

 実に平和で過ごしやすい場所だなとそう思っていたが、カレイド閣下から出てきた言葉に言葉を失った。

「リドル、今現在ヴィーナス国では君の捜索が大々的に行われているそうだ。」

 あぁ、そうか。
 それはそうだよな。養子とはいえ、公爵家の令息が消息を絶っているのだから、問題大ありだ。

 以前、カレイド閣下に帰りたいかと聞かれた事がある。もちろん帰りたい。ヘルブラム殿下やアムール様とまた笑い合いたい。でも、あそこでは巻き込んでしまう。もう、失いたくないから、だから、もう会えない。そう伝えヴィーナス王国には帰らない意志を伝えた。
 そして僕も聞きたいことはある。どうして僕を引き取ったのか、なぜフィンネル伯爵家があそこまで従順だったのか。1度聞いたけどサラッと流された。

「アルト様、学園に行くお時間でございます。」

 話を沢山していたら、いつの間にかそんな時間になっていた。できることならもう少し話していたいが仕方ない。

「それでは行ってまいります。」

 そう席を立ちカレイド閣下を見る。笑顔で手を振り、行ってらっしゃいと言われ、それに応え、馬車に乗り込む。

「いつもありがとうございます。今日もよろしくお願いします。」

 いつも通り、御者の方に感謝を伝えると、コロっとした笑顔を返された。そのまま学園へ着くと、いつも通りマルク殿下とレイズ君がいる。2人に挨拶をし、いつも通り、3人で固まって席に着く。席の指定はないので好きに出来るのでいつも教室の後ろの角に行ってる。

 そうして、いつも通り昼食をとる時間になり、3人で食堂に行き、食事をとる。面白いことに、毎回マルク殿下がヘンテコな事を言い出すのでレイズ君と一緒にツボにハマってる。その度にマルク殿下がぷくっと顔を膨らませるので余計に面白い。

 次の授業は移動教室なので早めに食事を終わらし、歩きながら雑談を再開する。

「そういえばもう少しでキャンプだよな。」
「キャンプってなんですか?もしや行事か何かですか?」
「そうそうこの学年になると毎年、ベラトリックスの森までキャンプに行くんだ。」
「そうですよ!ベラトリックスの森はアビスも少なくて、アスタロトの結界の中心部からも近いので実習にもちょうどいいんです。」

 ベラトリックスの森か。行くのは初めてだな。というより基本的に学園以外で外に出る事がないから、地図は覚えていてもどんな場所なのかはあまり分からない。アルキオネ大公領くらいには行っておいた方がいいかな。

 その日に邸まで帰ってからカレイド閣下に話してみた。大公領に行ってどんな感じなのかを知りたいと。はっとした表情をしたカレイド閣下の采配により、次の学園の休みに二人で行くことになった。
 そうしてすぐにその日はやってきて、今は街角にあるカフェに来ている。何があるのかと見ていると、アーモンドボールと呼ばれるクッキーに目を奪われて思わず注文してしまった。食べてみると、アーモンドのザクザクとした食感に粉砂糖の柔らかい甘みが口に広がり、とても美味しかった。そして初めて飲むアールグレイティーはほんのりした甘さに柑橘系の良い香りが漂い、とてもほっこりした。

暖かい日差しを受けながら、街を歩きすぎ続け、ふと目に入った本屋があった。そこに入るとそこにあったのは昔ライが教えてくれた、「野の白鳥」という物語の本があった。

「これ…………」
「アルト、その本がどうかしたか?」
「いえ、ただ少しだけ気になっただけです。」

本をひらくと、ライが教えてくれた通りの物語が綴られていた。
なんでこれがある?
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