R18沖田総司に求められ、傷つくのに惹かれ合うのをやめられない。土方歳三_新選組、新撰組、三角関係【淫花】

ふるふるん

文字の大きさ
4 / 10

まもられて

しおりを挟む
夜の京は、昼とは別の顔をしていた。

祇園の灯りが遠くに揺れ、細い路地には月の光が薄く落ちている。
伊織は巡察の帰り、屯所へ戻るため一人で歩いていた。

草履が石畳を踏む音だけが静かに響く。

ふと、背筋に冷たいものが走った。

――気配。

伊織は足を止める。

次の瞬間、闇から男が三人現れた。
浪人風の男たちだ。刀を抜く音が、乾いた夜気に響く。

「新選組の小僧か」

「運が悪かったな」

伊織は反射的に木刀を構えた。
巡察だから真剣は持っていない。

(まずい……)

相手は本物の刀。
しかも三人。

それでも、逃げるわけにはいかなかった。

「来い」

一人が斬りかかる。

伊織は踏み込み、木刀で受け流す。
腕に重い衝撃が走る。

もう一人が横から斬り込んできた。

避けきれず、肩の着物が裂ける。

「っ……!」

後ろに跳んだ瞬間、背後から腕を掴まれた。

「捕まえたぞ」

喉元に刃が当たる。

冷たい鉄の感触。

伊織の心臓が強く鳴った。

(ここで終わり……?)

その時だった。

闇の向こうから、軽い声が響く。

「――三人がかりで一人? それはちょっと、格好悪いな」

男たちが振り返る。

月明かりの下に、羽織姿の男が立っていた。

沖田総司。

細い身体。
けれど、その立ち姿には不思議な威圧感がある。

沖田は穏やかに笑った。

「その子、うちの隊士なんですよ」

刀が静かに抜かれる。

「だから――返してもらえます?」

次の瞬間だった。

沖田の姿が消えたように見えた。

一閃。

伊織の喉元に刃を当てていた男の刀が弾き飛ばされる。

そのまま沖田の刃が喉元で止まった。

男の顔が青ざめる。

残りの二人が慌てて斬りかかる。

だが沖田は笑っていた。

楽しそうに。

身体をひらりと捻り、刃を避ける。

次の瞬間、二人の刀が同時に弾き飛ばされた。

「ほら」

沖田は肩をすくめる。

「帰ったほうがいいですよ」

その声は優しいのに、目は笑っていない。

男たちは顔を見合わせ、逃げ出した。

静寂が戻る。

沖田は刀を収め、伊織のほうを見る。

「……怪我は?」

伊織はまだ動けなかった。

助かった安堵より、別の感情が胸を締め付けていた。

沖田の剣。

あまりにも速くて、綺麗だった。

「総司さん……」

沖田は近づき、伊織の肩に触れる。

裂けた着物を見て、眉をわずかに寄せた。

「やっぱり怪我してるじゃないですか」

その声は穏やかなのに、どこか怒っている。

「無茶しないでくださいよ」

伊織は目を逸らす。

「大丈夫です」

沖田は少し黙った。

それから、ため息のように言う。

「……一人で歩くなって、言ったでしょう」

言葉は柔らかい。
でもその奥には、抑えた苛立ちがあった。

伊織は胸の奥がざわつくのを感じた。

(どうして……)

沖田の前に立つと、心が落ち着かない。

沖田は視線を外し、いつもの軽い調子で言う。

「帰りましょうか」

二人は並んで歩き出す。

夜風が吹く。

しばらくして、沖田がふと呟いた。

「……さっき」

「はい?」

「怖かったでしょう」

伊織は答えられない。

沖田は横目でちらりと見る。

その視線は優しいのに、どこか苦しそうだった。

「死なないでくださいね」

唐突な言葉。

「あなたが死ぬと――」

沖田は少し考えてから、笑う。

「僕が困る」

伊織は思わず小さく笑った。

でも胸の奥は、なぜか熱かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...