BEST TIME

第6話

素晴らしい事が起きた。


なんと 青川さんは私の事を忘れていなかったようで

土曜日 家で寝ていたら 電話がかかった。

でてみるとやけに騒がしい。




「もしもし？鈴ちゃん？」

「は、はい 青川さん？どうしたんですか？」

「この間はフラれちゃったからさ。

   今日こそおいでよ。まだ飲み会始まってない

し、鈴ちゃんは寝起きの声してるしね。」


と、けらけら笑った声が電話の向こうで聞こえた。

「はは、わかりました。準備して向かいますね。

どこですか？」

「えっと ◯◯区のね… そう…」


嬉しいな。また誘ってもらえた。


集合場所に着くと、スーツ姿の青川さんがこっちに気付き

大きく手を振った。

身体が大きいから余計に目立つ。ただでさえスタ

ー性があって目立つのにな

私は苦笑いしながら会釈した。



すると、青川さんの背後から

「この子が 青川くんのお気に入りの子？」

と、色々な人が顔を見せてきた。

スタッフさんだろうか。

「うん、そう。面白い子だよ。」

青川さんは私の顔を見て微笑した。






今回は、あんな高級店ではなく 普通の居酒屋だった。

でも、なかなか大きいところだから普通とは違う

のかな～と冷や冷やしながら店の中に入った。

コの字にソファが並んでテーブルを囲んでいるから、適当に座った。


青川さんの場所とは離れてしまった。

けれど周りのスタッフさんと色々なことを話した。

男性のスタッフさんが

「鈴ちゃんはさ、お酒飲まないの？」

「はい、まだ19なので…」


すると横にいた女性スタッフさんが驚いた顔をし

「えぇ～！鈴ちゃん 未成年！？

   全然見えないよ～ 大人っぽいねぇ 高卒？」


「はぁ ありがとうございます。そうですね、働くために上京してきたんです。大人っぽくしておかないと高卒ってバレちゃうじゃないですか笑」

私の横あたりの人たちは笑い

「ふふふ、もうバレちゃったね。」

なんて面白おかしくみんなで話した。

楽しかった。

ふと、青川さんの方を見てみると

こっちを見ていて、目をそらされてしまった。

私は少し気にかかったが 時計を見てみると

もう10時だった。まだみんな帰りそうにもない

しもう帰ろう。

「すみません。そろそろお邪魔します。」


そして辺りに一礼して、

青川さんのそばに行き、

「すみません。今日はもう遅いので帰りますね。誘っていただきありがとうございました。」

すると立ち上がって

「送っていくよ。危ないしね。」

と、紳士的について来てくれた。


優しいなぁ 青川さん。


と、私はお酒を飲んでもいないのに


目の前の青川優という暖かい色に酔っていた。

騒々しい店内の中でも通るのに繊細な美しい声。

暖かさを感じた。美しさを感じた。

なめらかに滑り落ちていく浮遊感に包まれて

幸せだった。