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第7話
しおりを挟む「ごめん 鈴ちゃん。 全然話せなかった。」
店を出ると青川さんは唐突につぶやいた。
「気を遣ってくれてありがとうございます。
いいんですよ、私は。誘われたこともご一緒出来たことも本当に嬉しかったです。」
そう微笑むと 彼も微笑した。
「ほんと、いい子だね。でもね、俺は 君と話したかったから呼んだんだよ。気になることがあるんだ。そうだ。なぁ、次は話そう。来週の土曜にバーベキューをやるんだ。おいでよ。」
「バーベキュー!楽しみです…ふふ。」
「あっ、今 毎週毎週、暇な奴だなと思っただろう。」
図星だったので顔を見合わせお腹を抱えて笑った。
「あはは、いいお肉楽しみにしていますね。」
「ちゃっかりしてるなぁ、はは」
心を許したようなその笑顔に私はとても優しさが溢れた。
なんだろう。この満ち足りた気持ちは。
私の中にこんなに美しい感情があったのかと
幸せな気分になった。
「また、詳しいことは連絡するね。」
そう言ってまたぶんぶんと手を振り
踵を返すと振り返りもせず真っ直ぐに行ってしまった。
多分、街の中の人たちはスーツ姿の彼に気付きは
しないのだろう。
だけど、私にはどこにいたってキラキラ輝く彼を神様が彼はここにいるよ、と囁きかけてくれるように
いつまでもいつまでも 見失わなかった。
本当に見えなくなってしまったら
私も踵を返した。
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