BEST TIME

yon

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第12話

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今日も仕事が終わって、帰ろうとしていた。

夕食は何にしよう。
新しい本が欲しいなぁ。
青川さん何してるのかなぁ。

と、ぼんやり考えながら駅に向かっていたら

携帯電話が鳴った。


「もしもし、山川です。」

「青川です。鈴ちゃん?今から暇?」



青川さんだった。

あれから青川さんとは何度か食事に行った。

2人だったり、スタッフさんたちとだったり青川さんの友人とだったり。

私と青川さんはなかなかの友人になった。

「暇ですよ、青川さん忙しくないんですか?」

「忙しいに決まってる!だけど息抜きも必要でしょ?鈴ちゃん おいでよ。今日は俺の所属してる会社の色々な人達がくるから楽しいよ。」

いつも息抜きしてるじゃないかー・・・ と
内心くすっとした。

「わかりました、行かせてもらいます。」







店内はがやがやしている。

確かここは、いつかのコの字のソファの場所だった。


「ここ、ここに座りなよ。」

と、青川さんの左隣に促され座った。



すると、私の左隣の男性が

「鈴ちゃん?だっけ。どうも、坂口です。よろしくね。」

と、握手を求めてきた。

「川口鈴と申します。宜しくお願いします。」


「鈴ちゃんのことは、色々な人からよく聞くよ。」


「えっ、どんな事ですか?」

「そりゃぁ、面白い子だって。」

「そうなんですか…(笑)」


すると、奥にいた男性が立ち上がって

「みんな揃ったし、乾杯しようか!」

と、呼びかけ

私達はそれぞれの飲み物を交わしあった。


青川さんが

「鈴ちゃん まだお酒飲めないの?誕生日いつ?」

「あと一ヶ月です。ようやくですよ。皆さん、お酒飲んでるのに私だけオレンジジュースの日々は…」

と、けらけら笑いあった。


青川さんとの会話が切れた途端

「鈴ちゃん。僕、会社でこういう事してる者です。」

と、名刺を渡してきた。

私も慌てて

「あっ、ありがとうございます。私も、こういう者です。」

名刺を渡した。

坂口さんは青川さんの所属する会社でマネージャーをやっているそうだ。


「鈴ちゃんって、休日何しているの?」

「えっと、本読んだり音楽聴いています。」

「へぇ~ インドア派なんだ。」

「そうなりますね。」

「じゃあ、好きな食べ物は?」

「しゃぶしゃぶとか、肉料理好きですね。甘い物も好きですよ。」

「へ~!あそこにいいしゃぶしゃぶ屋さん出来たの知ってる?すごく美味しいよ。」

「そうなんですか?知らなかったです。」

「じゃあ、今度連れていってあげるよ。予定いつでもいいよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「あとさ、鈴ちゃんって彼氏いるの?」

「えっ、いないですよ。」

「じゃあ、好きな人は?」


沈黙が出来てしまった。

好きな人?頭に思い浮かんでくる人物…

青川さん?でも、昔からファンだからそういう意味で好きだと思うし、でも…
隣にいるし、誤解されてしまう。
好きなんて意識した事無かった。
いや、していたのだろうか。
ずっと昔からそういう意味で好きだったのだろうか。
こんがらがってきた。
早く答えないと…

「いませんよ。」

「じゃあ狙ってもいいのかな?」

「えっ?」

「ううん、何でもない。」


そう言って坂口さんはビールを一気に飲み干してしまった。


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