BEST TIME

yon

文字の大きさ
19 / 34

第19話

しおりを挟む



決して厳かな雰囲気のパーティーでは無いが

やはり、大人が参加するパーティーなので

それなりに静まったパーティーなのだが

子供の頃にこの世界にデビューした同年代の2人は

この雰囲気に似つかわしくない無邪気な笑い声をあげ

じゃれあっていた。

俳優の彼も、やはり同じ匂いを感じるところがあるのだろう。

結局は孤独。信じられるのは自分の才能。

それでここまで這い上がってきた。

闘いで勝ち抜いた。




「騒いでいるのは、あなたたちだけよ。」


そう言って近付いてきたのは、女優の雨宮涼子だった。


私の方に目を向けると、彼女は微笑んだ。


綺麗で美しい人だなぁと見惚れていると


「青川くん、綺麗な子見つけたわね…。私にも紹介してほしいわ。」


「やっぱ、わかりますか。可愛い子でしょう。いいですよ、俺の友達の春川鈴ちゃんです。あ、涼子さん 勘弁してくださいよ。」


「ふふ、でもどうかな。私、気に入ってしまったわ。ほら、眼が綺麗だもの。これは、私達にしかわからない、何かかもしれないわね。」


勘弁?何のことだろうか…。

私達?…あぁ

雨宮さんも、小さな頃からこの世界に放り込まれた。

この世界の荒波に揉まれ育った彼女も、やはり

青山くんや、上里さんと同じ物を感じているのだろう。


「なぁ、青川。あそこに先生がいる。挨拶しにいこうぜ。」

上里さんが言うと

「おう、じゃあ鈴 涼子さんと話しててくれ。また迎えに来る。」


そう言うとウインクし、上里さんに並んで歩いて行った。



2人きりになった。こんな大物女優と、なにを話せばいいのだろう。


「鈴ちゃ…」


「こんにちは。」

そう言って私たちの間に入ってきたのは、

女優の、佐原かなだった。


「雨宮さん、お久しぶりです。この子は誰ですか?」


「…鈴ちゃんよ。青川くんの友人よ。」


私をじろじろと下から上まで舐めるように見ると


「よろしくね。私のこと知っているかしら。」

そう言って手を差し出してきた。

私は、差し出された手を握り

「はじめまして、春川鈴と申します。もちろんです。よくテレビや雑誌で伺います!」


「ちなみに、優とはどれくらい仲がいいの?好きなの?どうなの?」


「えっ?えっと…。仲良くさせていただいている仲で…好き…とかは…。」


顔がだんだん熱くなり俯いてしまった。

「かなちゃん、不躾よー。そりゃぁ青山くんは、おてんばだけど素敵な人だから皆好きよ。そんな事聞かれたら赤くなっちゃうわよねぇ。」


そう言って肩に手を置いてくださった。

「うふふ、そうですよね。では、また。」


そう言うとくるっと後ろを向いてツカツカと去ってしまった。


正直を言うと、少し怖かった。

あんなに迫られるとは思わなかった。

なんだったんだろうか…。






「あの子、青川くんの元カノ。」


雨宮さんは溜息をつきながら、そう呟いた。


「そうなんですか?だからあんなに…。」


「きっとまだ好きなのよ。近くに居れる貴女が羨ましかったんじゃないかしら。ま、振ったのは青川くんだからねぇ。未練あるんでしょ。」

「雨宮さん、何か知っているんですか?」


「涼子でいいわ。ふふ、そうね、私もあまり青川くんから聞き出せなかったのだけれど、性格の不一致?かしら。すぐに別れたみたいよ。元々、青川くんは誰とも長く続かないみたいだけどねぇ。」


そんな過去があったんだ…

「鈴ちゃん 本当はどんな関係なの?」


「えっ?」

涼子さんは、何もかも見透かしたように微笑んだ。

この人には敵わないような気がする。



「やっぱり、わかりますか…?」


「えぇ あなたたち、アイコンタクトが多いし…なんだろう。纏っているオーラが違うわ。愛情を感じるの。」


そう言って彼女は目を伏せて薄く笑った。


その目に私は心がなぜか、チクリと痛んだ。

その表情をする事に慣れてしまっているように直感で感じた。

寂しい顔。なぜ?私は何も理解出来ないでいた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...