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第19話
しおりを挟む決して厳かな雰囲気のパーティーでは無いが
やはり、大人が参加するパーティーなので
それなりに静まったパーティーなのだが
子供の頃にこの世界にデビューした同年代の2人は
この雰囲気に似つかわしくない無邪気な笑い声をあげ
じゃれあっていた。
俳優の彼も、やはり同じ匂いを感じるところがあるのだろう。
結局は孤独。信じられるのは自分の才能。
それでここまで這い上がってきた。
闘いで勝ち抜いた。
「騒いでいるのは、あなたたちだけよ。」
そう言って近付いてきたのは、女優の雨宮涼子だった。
私の方に目を向けると、彼女は微笑んだ。
綺麗で美しい人だなぁと見惚れていると
「青川くん、綺麗な子見つけたわね…。私にも紹介してほしいわ。」
「やっぱ、わかりますか。可愛い子でしょう。いいですよ、俺の友達の春川鈴ちゃんです。あ、涼子さん 勘弁してくださいよ。」
「ふふ、でもどうかな。私、気に入ってしまったわ。ほら、眼が綺麗だもの。これは、私達にしかわからない、何かかもしれないわね。」
勘弁?何のことだろうか…。
私達?…あぁ
雨宮さんも、小さな頃からこの世界に放り込まれた。
この世界の荒波に揉まれ育った彼女も、やはり
青山くんや、上里さんと同じ物を感じているのだろう。
「なぁ、青川。あそこに先生がいる。挨拶しにいこうぜ。」
上里さんが言うと
「おう、じゃあ鈴 涼子さんと話しててくれ。また迎えに来る。」
そう言うとウインクし、上里さんに並んで歩いて行った。
2人きりになった。こんな大物女優と、なにを話せばいいのだろう。
「鈴ちゃ…」
「こんにちは。」
そう言って私たちの間に入ってきたのは、
女優の、佐原かなだった。
「雨宮さん、お久しぶりです。この子は誰ですか?」
「…鈴ちゃんよ。青川くんの友人よ。」
私をじろじろと下から上まで舐めるように見ると
「よろしくね。私のこと知っているかしら。」
そう言って手を差し出してきた。
私は、差し出された手を握り
「はじめまして、春川鈴と申します。もちろんです。よくテレビや雑誌で伺います!」
「ちなみに、優とはどれくらい仲がいいの?好きなの?どうなの?」
「えっ?えっと…。仲良くさせていただいている仲で…好き…とかは…。」
顔がだんだん熱くなり俯いてしまった。
「かなちゃん、不躾よー。そりゃぁ青山くんは、おてんばだけど素敵な人だから皆好きよ。そんな事聞かれたら赤くなっちゃうわよねぇ。」
そう言って肩に手を置いてくださった。
「うふふ、そうですよね。では、また。」
そう言うとくるっと後ろを向いてツカツカと去ってしまった。
正直を言うと、少し怖かった。
あんなに迫られるとは思わなかった。
なんだったんだろうか…。
「あの子、青川くんの元カノ。」
雨宮さんは溜息をつきながら、そう呟いた。
「そうなんですか?だからあんなに…。」
「きっとまだ好きなのよ。近くに居れる貴女が羨ましかったんじゃないかしら。ま、振ったのは青川くんだからねぇ。未練あるんでしょ。」
「雨宮さん、何か知っているんですか?」
「涼子でいいわ。ふふ、そうね、私もあまり青川くんから聞き出せなかったのだけれど、性格の不一致?かしら。すぐに別れたみたいよ。元々、青川くんは誰とも長く続かないみたいだけどねぇ。」
そんな過去があったんだ…
「鈴ちゃん 本当はどんな関係なの?」
「えっ?」
涼子さんは、何もかも見透かしたように微笑んだ。
この人には敵わないような気がする。
「やっぱり、わかりますか…?」
「えぇ あなたたち、アイコンタクトが多いし…なんだろう。纏っているオーラが違うわ。愛情を感じるの。」
そう言って彼女は目を伏せて薄く笑った。
その目に私は心がなぜか、チクリと痛んだ。
その表情をする事に慣れてしまっているように直感で感じた。
寂しい顔。なぜ?私は何も理解出来ないでいた。
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