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yon

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第22話

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青川side




「青川くん、ふわふわする。」


まさか、ここまで鈴がお酒に弱いなんて思わなかった。

ほんの少ししか飲んで無いのに。

「大丈夫か、鈴。」



「うん…うん…大丈夫…。」



頬をほんのり赤くし、眠たそうな目をして、


俺のベッドにもたれている。





「大丈夫か、このまま寝るか?」



ドレスのままだが、しわにならないだろうか。

うーん、クリーニングに出せばいいのか。




「うん…。ごめんね…。ちょっと、私、眠たくなってきて…。」



素直に言ってしまうと、可愛い。

自分は、そこまで欲に強くない。



俺は鈴を抱きしめた。


彼女は、照れたような顔をした。



「鈴、好きって伝わってる?」



鈴は俺の胸に顔を埋めると


「うん、青川くん。私に、恋とかお酒とか人生、教えてくれてありがとう。幸せだよ…。好き、大好きよ。」


衝撃を感じた。


何だろう、この気持ち。

傷口が滲むような、じゅわじゅわと出てくる…。


満足感も当てはまる。安心感も当てはまる。


時々、感じたことのある感情だが

今、大きな塊となって俺を包んだ。





そして、愛しい俺の胸に包まれている君に俺は口づけをした。



君は驚いた顔をしたね。



汚してしまった。そう思ったけれど、もう遅かった。


君は大人になったから、汚れた世界に踏み込まなくてはならない。


本当は君を、そんな世界から守りたい。


けれど、俺もその世界の一員だから


手を引っ張って連れてこんでしまうかも知れない。



ごめん。幸せにしてあげたい。

この小さな俺の心に住み着いた住人を。




俺が、この気持ちを『贅沢な幸せな』と、

気付くのに時間はかからなかった。


愛が育まれつつあった。


だが、一気に引き裂かれる事件が起きてしまったのだった。 









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