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第26話
しおりを挟む今日は、久しぶりに社長と部長と同僚で食事に行った。
最近は断ってばかりで、申し訳ないなと思っていた。
今日は、青川くんと出会ったお店に行った。
「この店、この間来たな。はは、まあ座れよ。」
そして料理を頼み会話を楽しんでいると、
個室の扉を開け、店員が入ってきた。
「申し訳ありません。こちらにご挨拶をしたいという片が…。」
すると、横からずいっと女の人が顔を出し
「申し訳なんかいらないわ、ごきげんよう。社長さん。」
「涼子ちゃん…。近くまで来ていたのかい。」
えぇ、と涼子さんは微笑むと個室の中に赤いハイヒールで踏み込み
私の隣に座った。
すると、スマホを取り出し何かを打っていた。
すると、机の下に入れ私に見るよう促した。
『お久しぶり。はじめましてという事にしてね。』
私はよく分からないまま、頷いた。
「涼子ちゃん、どうしてここにいるってわかったんだい。」
「女の勘よ…。この子、可愛いわね。お気に入りかしら?」
そういって私の頭を撫でた。
社長は、どっしり椅子に腰掛けると、
「ああ、お気に入りさ。青川優に見せた時も可愛いって言っていたなあ。」
「へぇ…。あら、でも最近スクープとられちゃったわよね。」
…その話題。やっぱり知れ回ってるんだ。…ニュースでもやっていたしみんな知ってるか…。
「そうですよね、佐原かなとなぁ。まぁ、青川はそういう女絡みの噂たくさんありますしね。」
そう言って部長が話に入ってきた。
「…そうね。でも彼は、佐原かなの事を憎いみたいね。」
「そうなのか…!…」
……
そうして青川くんの話題がずっと続いた。
私は話が振られないようにお手洗いに向かった。
手洗い場の鏡に私の姿を写す。広い鏡。
やっぱり私なんかが…。なんで私…。
でも、青川くんは私を…。
不安だ。でも、独占欲なんて持ちたくない。
彼は皆の物だ。物扱いはおかしいけれど、
誰か1人のものになるなんて、それも私の元に来るなんて
罰当たり…恨まれるに違いない。
もっと素敵で綺麗な…女優とか歌手の肩とかとの方が
お似合いなのに…。好きなのに…。プレッシャーがかかる。
青川優の隣に… いたいのに…。
「鈴ちゃん?」
ドアを開けて涼子さんが顔をのぞかせた。
「あっ… すみません。今戻りますね。」
涼子さんは中に入ってくるとドアにもたれた。
「青川くん。佐原さんとキスした写真。あれ、佐原かなが迫ったからなのよね。」
「え… 知っているんですか?」
「だって… あんな嫌ってた子とキスするなんて脅迫か、不意打ちよ。…でも信じられなくなった?」
「…元々 私が彼と釣り合うなんて思っていませんでしたし…。彼は皆のものですから…。」
私は苦笑いしながら俯いてしまった。
言い訳が苦しくなるとしてしまう私の癖。
どうすればこのつっかえは取れる…。
「そんな事で悩んでいるの?鈴ちゃん、青川くんを神様か何かと勘違いしているんじゃない。あの子、普通の子なのよ。貴女みたいな子が、傍に居てあげないと…。どうかなっちゃうわよ…。
…でも、私は貴女の弱さに漬け込んでもいいわ。私は貴女の味方。こちらに来てもいいのよ。」
そう言って私を抱きしめてくれた。
…たしかに神様か何かと勘違いしていたかもしれない。
それが彼のプレッシャーになっていたかもしれない。
私の出来ることは精一杯、普通の男の子と同じ様に接する事。
そして…もっと信頼して愛する事。
「ありがとうございます…。スッキリしました。」
「…そう。ならよかった。もう、今日は帰りなさい。夜も更けたわ。街は寒い。暖かくしてね…。」
わかりました、と頷くと私はお手洗いから出て社長達に挨拶して帰った。
帰り際に 私は、青川くんに電話をかけた。
…「もしもし?青川くん。今大丈夫?」
『鈴?どうしたの。大丈夫だよ。珍しいね、嬉しい。』
「声聞きたいなーって。何してたの?」
『んー 帰り道。今日は、収録とレコーディングばっかで忙しかったんだよ。鈴は明日も仕事頑張れよ。』
「うん、ありがとう。青川くんもお疲れ様。その…今度またどこか行こうね。」
『いいね、もうすぐクリスマスだし…今週の土曜とか。でも外だと鈴に迷惑かけちゃわないかな、俺。それか、部屋。2人でパーティでもしちゃうか。』
「そうしよっか!…お正月も一緒に居れるかな?音楽番組とか出る?」
『うーん、俺はイベント事がある時は予定は入れない。プライベートの方が大事だからね。一緒に年越ししようか。…なんか恋人らしいね!』
「あはは、恥ずかしくなる事言うね、青川くん。じゃあ、今週ね。またね、おやすみなさい。」
『うん、おやすみ。ありがとう鈴。』
夜の街は寒い。けれど、こんな愛情、優しさを感じると心は温まる。
暖かくして歩こう。そして、まだ見ぬ明日を想像して
東京の曇天に星を探し見上げる。
私たちの先祖が見つめる偉大なる星々。
そこに愛を浮かべる。
それは海を漂う不知火の如し。
愛が白けるのを待つか、熟れるのを待つか。
私は賭けてみたい。
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