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第31話
しおりを挟む私は今、武道館の中にいる。そして、隣には涼子さんと上里さんがいる。
そして、ステージの上でリハーサルをする青川くんをみんなで隙間だらけの観客席から見つめた。
なぜ涼子さんと上里さんがいるかというと、私だけが来ると私と青川くんの関係が怪しまれるという心配をしてくれ、3人まとめてきた友達のふりをする手伝いをしてくれている。
上里さんが思い出したように手を叩き、
「奇跡的にスケジュールあってよかったね!いやぁ、リハーサル見に来いって図々しいけど、男の俺から見てもかっこいいね、青川は。鈴ちゃん、あいつと仲良くやってる?」
「はい、青川くんって意外とお茶目ですよ。」
「へぇ かわいいやつだね、いじってやりたいな。」
談笑していると、ステージの上からマイクで汗まみれの青川くんがこっちを向きながらわざとらしく咳をした。
周りのスタッフが心配して声をかけている。喉は大事だからね…。
「なんだよ。嫉妬してんのかな?」
…
生で青川くんが歌っているところが見れて嬉しいな。汗だらけで頑張っている。ライブの裏側って本当にこんなに細かく決めているんだなぁと驚き感心した。
汗まみれでも、どこか楽しそう。
ライブは自分自身をさらけ出し何もかも隠さなくてもいい。
青川くんらしいなぁ。
私は、頬を緩ませながらステージの上の青川くんを見ていると、
私の方をちらりと見た。
微笑みかけてくれた。
こんな小さなことが私を舞い上がらせる。
…いつからこんなにロマンチストになってしまったか。
前までは恋愛にすら顔を背け、なんとなく生きていただけだったのに。
見つめていて…こんなに心が踊るのは初めて。
本当に、私の人生を180°変えてしまった 青川くん…。
すると、涼子さんが唐突に
「佐原かなとのこと、解決した?」
そう言ってこちらを見てきた。
「あっ、はい。解決しました!まぁ、芸能人なら仕方ないですしね…。」
すると、涼子さんは拳を握りしめ
「芸能人は皆、そんなんじゃないわ。ちゃんと気をつけているもの。青川くんは油断しすぎよ!…青川くんをけなすなんて意地悪ね、私。」
…トイレで別れた時の顔になった。
「まぁまぁ、雨宮さん。実際、佐原かなちゃんは厄介なんですよ。ふられた元恋人を裏の人間使ってボコボコにしたり、事故を起こさせたり。未練たらたらですからね。」
「そ、そんなの 青川くんが危ないじゃないですか。」
「そう、危険なんだよ。だから気をつけた方がいい、鈴ちゃん。君もいつ狙われるか…。」
そう上里さんは静かに言った。
「考えちゃダメよ、そんなこと。本当に起きてしまうわ。」
涼子さんは薄く笑った。
…
そしてリハーサルが終わった。
今日は前半だけの練習だったらしい。
後半は、本番のお楽しみだな…なんて思いながら、
リハーサルを終えた青川くんを楽屋で出迎えた。
どうやらシャワーを浴びてきたらしく汗はさっぱり無くなっていた。
「ありがとう来てくれて。いやぁ、なんというか、上里と鈴は喋りすぎ。」
やっぱり嫉妬してたか、と上里さんは笑った。
「ま、仲良くしなよ お二人さん。結婚はいつするの?」
なんて、上里さんは聞くから私は顔が赤くなってしまった。
青川くんは目を見開き
「えっ、あ、いつだろうね?え、ねぇ?」
明らかに照れながら動揺していた。
「動揺分かりやすすぎだろ!」
そう笑い、上里さんは青川くんの肩を叩いた。
青川くんは、ばぁか!と言い返し上里さんに掴みかかり
この間のパーティの時のように、じゃれあっていて
なんだか見たことある光景だなぁと笑いがこみ上げた。
青川くんが上里さんにからかわれ、さらに顔が赤くなって手で口を覆ってうつむいている仕草が可愛くて
やっぱり青川くんのことが好きで仕方ないのだと実感する。
本番のライブが楽しみで仕方がない。また、青川くんと結婚か、と夢みたいなことを一瞬考えた日だった。
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