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リア族の地下帝国と嗜好の食材
第91話
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東の町ラスタルから出発して数時間、何事も無くリア族の巣に到着した事にクルタナは疑問に感じていた。ディオナの敵を察知し予知出来る能力があったとして、クルタナがリア族の野営基地の場所を知っており避ける事が出来たとしても、通常の魔物すら一匹も遭遇しないのは異常である。
「巣で何かが起こっていると考えた方が良さそうじゃな……」
「ああ、取り合えずマックスから降りよう」
「…っぁぁ」
しかしディオナは酷く震えて降りようとしない。イサムはまた予知が見えたのかを尋ねるが、顔を向け何かを喋ろうとするが、瞳に涙を溜め膝を抱えて言葉が上手く出ない様だった。
「何か見えたんだな、取り合えずこのままマックスに乗っていてくれ。このままここに居ても埒があかないからな。マックスもディオナの事を守るんだぞ」
『もちろんだよ!』
相変わらず元気なマックスと小さく頷くディオナを助手席に残し、イサムは運転席から降りる。それと同時に後方からエリュオン達も降りてくる。
「あれ? ディオナはどうしたの?」
「酷く震えている、何かを予知したらしいが言葉に出来ないらしい」
「そうなんだ…それでここがリア族の巣の入り口なの? かなり大きいわね」
高さはそれ程ないが、横に大きく口を開けた洞窟を思わせる入り口の前にディオナ以外集まる。
「この穴から少し進めば、岩盤で出来た門がある。そこが巣の入り口になるのじゃが、やはりおかしいな。外敵から巣を守る番人兵士すら居ない…」
そして地下へと向かう入り口に、クルタナを先頭にして少し進むと通路の先が急に開け、五メートルはあるだろう重厚な灰色の石で出来た門が現れる。だがそこで全員が息を呑む、その場所にあったのは深く濃くどす黒い靄に包まれた門であった。そしてその左右には石化したリア族の兵士が二匹居る。
「番人兵士はここにいた様じゃな…」
「やられたのか…戦おうとして身構えたまま固まってるな…それとこれは闇の障壁だ…巣が闇に襲われたと考えた方が良いんじゃないか?」
「闇だと? これ程禍々しい物を見たのは初めてじゃ……」
その黒い門を触れようとしたクルタナの腕をイサムが掴む。
「触れるな! 闇に落ちるぞ!」
「あっああ…すまない、見ていたら何故か触れたくなってしまった…」
「それに、今回のこの靄は少し他のと違う感じがする。強力と言うか、リア族を外に出さない様にしているのかもしれないな」
「そうなんですか? とても不気味だと言うのは分かるのですが……」
イサムは石を拾って門へと投げる。すると一瞬で投げた石が蒸発して跡形もなくなる。
「今回は触れると死亡確定だな…」
「触れないで良かった…で、どうするのじゃ? これ以外にも入り口はあるが、随分と離れているぞ」
「いや、どの場所も同じだろう。この障壁を破って進もうか」
「破ると言っても、触れないのじゃろう? どうやるのじゃ?」
「俺なら出来るはず、みんな警戒しててくれ」
仲間達が身構える中で、イサムは蘇生魔法を手に込めて闇の障壁に触れる。すると触れた場所から黒い火花が飛び散り、同時に修復しようと周りの闇が集まる。
「こりゃぁ中々手ごわい障壁みたいだな」
『無断で触れられては困る』
聞いた事のない低い声に一同が振り返る。だがその瞬間にガタとニトの胸に長い鎌が突き刺さり、そしてネルタクの首が宙に舞う。
空間から現れたのは古めかしいローブを着た男性だろう闇だった。フードを深々と被りフワフワと宙に浮きながら、大きな鎌を担ぎながら笑うのその男の裂けた口のみが見える。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「ぐあああああああ!」
「ガタ! ニト!」
「ネルタクが! 貴様よくもぉぉぉぉ!」
倒れるガタとニトと同時に首の無いネルタクも膝を付きそのまま倒れる。それを見たエリュオンが激情に駆られて現れた闇へとフレイムタンを構えて突撃する。
「まて! エリュオン!」
イサムの制止を無視してローブの闇に切りかかったエリュオンだが、易々と空を切りその胸元に容赦無く鎌が突き刺さる。
「ぎゃっがはっ! ぐぎぃぃぃぃぃぃぃ!」
「エリュオン!」
貫かれた事により口から大量に血を吐くエリュオン、それを嬉しそう笑いながら漂う闇の男は大きな鎌をエリュオンが刺さったまま肩に担ぐ。
『はっはっはっは!』
「ごほっぐぅぅぅぅぅ! おっ下ろせぇぇぇぇ!」
『無傷で障壁に触れる者が居ると見に来たが、大した事は無い様だな』
鎌に貫かれたエリュオンの言葉など無視して、独り言を呟きながら溜息をつく。しかし、首を斬られ即死したネルタクが光に包まれコアへと体が収束して行く様を見て、卑猥に笑う。
『ああぁ、お前かぁ。タダルカスで見た男だな、コアを所持出来る能力を持っていたんだな』
イサムの視界にはタダルカスで見た大臣と同じ名前の【ダジュカン】【闇の魔物】と表示されている。
「お前はダジュカンだな! エリュオンを返せ!」
イサムは銃を抜き迷わずローブの男に向けて引き金を引く。闇に効果のある蘇生弾である以上はエリュオンに当たっても支障が無いからだ。
それをエリュオンが刺さったままの鎌で防ぐ、だがその男の笑みが消えた。イサムが撃った蘇生弾が触れた鎌の部分がドロリと熔けてしまったのだ。
『ほほう、なるほどそう言う事か……ノイズがやられたのも、まぐれでは無いか……それに私の名前を知っている……少しは楽しめそうだな』
男は突き刺さったままのエリュオンの両頬を片手で掴む。その細く長い指に殆ど肉は無く、長い爪が頬に食い込み血が滲む。そして、宙に浮いたままイサム達を見下ろしたフードの男は、言葉を続ける。
『コアは死ねば持ち主へ戻る、だがもし肉体が魔物と融合した場合どうなると思う?』
「なんだと!?」
『ふふふ…この裏切り者の女を返して欲しかったら、私について来い。制限時間は一時間だ、それまでにこの女を助けられなければ、二度とお前の元へは帰らないと思え』
「がはっぐぅぅぅ…いっ……イサム……」
血だらけのエリュオンは身動きの取れないまま、フードの男と共に闇の中へと消える。そして、それと同時にイサム達の目の前に人一人が通れる程の黒い渦が現れた。
「ついて来いって事か……あの野郎…」
闇の男が消えた事で我に返ったクルタナとサヤがガタとニトの元へ駆ける。
「イサム! ガタとニトが!」
「酷い…あいつ何者なの…」
振り返ったイサムは、傍に落ちているネルタクのコアに触れると直ぐにイサムの中へと戻した。そしてアイテムボックスから未使用のコアを二つ取り出してガタとニトの上に置く。すると圧縮されていたコアが大きく膨らみ二人の体を光に変えて取り込む。
「たぶん、生き返らせてもこの先また殺されるかもしれない。生きる事を望んでいる限りは、コアの状態に戻ってまた生き返ることが出来る」
「ありがとうイサム…」
「感謝は必要ない、人を生き返らせる事が正解なんて言えないからな…まずは三人を呼び出そう」
イサムはメニューからネルタクと先程の二人を呼び出した。何事も無かったかのように現れるガタとニトに対して、肩を抱き震えるネルタク。恐怖に怯えている様な彼女にイサムは頭に手を乗せる。
「大丈夫か? ネルタク」
「ふっ震えが止まらない……一瞬で殺されて、顔は見る事が出来なかったけどあの感じはダジュカンだった…あれ? えっエリュオンは?」
「あいつに連れて行かれたよ、一時間以内に向わないと魔物と同化させると言っていた。急いで向わないと」
「絶対罠です! でも……エリュオンを助けないと…!」
「ああ、必ず助ける!」
イサムはダジュカンが用意した闇の渦の前に立つ。そして仲間達の顔を見ながら深呼吸をした。
「先に俺が入る、戦う気があればついて来てくれ。もし入らなくても誰も俺は行く」
そう言い残すとイサムは渦の中へ入り姿が消える。
「大丈夫じゃ、あの者は一見弱そうじゃが何かをしてくれそうな気がする。どの道、私は母に会わなければならない」
「何処までもお供致します」
「同じく」
「私もです。家族じゃないですか」
「ガタ、ニト、サヤお前に心から感謝する」
クルタナは渦の中へ飛び込み、それを見て三人も飛び込こんだ。一人その場に取り残されたネルタクは、震えを必死に押さえ込み両頬を音を響かせて叩く。
「よし! エリュオン! 必ず助けるからね!」
そして意を決して、ネルタクも飛び込んだ。誰も居なくなったリア族の巣の入り口が静まり返る。そんな中、何も知らずにマックスから降車したディオナが遅れてやって来た。
「あれ? 誰も居ない…中に入ったのかな? でも、あの扉は触れちゃいけない気がする……イサム様何処に行ったんだろう…」
ポツリと残されたディオナは途方にくれて、またマックスの元へと引き返していった。
「巣で何かが起こっていると考えた方が良さそうじゃな……」
「ああ、取り合えずマックスから降りよう」
「…っぁぁ」
しかしディオナは酷く震えて降りようとしない。イサムはまた予知が見えたのかを尋ねるが、顔を向け何かを喋ろうとするが、瞳に涙を溜め膝を抱えて言葉が上手く出ない様だった。
「何か見えたんだな、取り合えずこのままマックスに乗っていてくれ。このままここに居ても埒があかないからな。マックスもディオナの事を守るんだぞ」
『もちろんだよ!』
相変わらず元気なマックスと小さく頷くディオナを助手席に残し、イサムは運転席から降りる。それと同時に後方からエリュオン達も降りてくる。
「あれ? ディオナはどうしたの?」
「酷く震えている、何かを予知したらしいが言葉に出来ないらしい」
「そうなんだ…それでここがリア族の巣の入り口なの? かなり大きいわね」
高さはそれ程ないが、横に大きく口を開けた洞窟を思わせる入り口の前にディオナ以外集まる。
「この穴から少し進めば、岩盤で出来た門がある。そこが巣の入り口になるのじゃが、やはりおかしいな。外敵から巣を守る番人兵士すら居ない…」
そして地下へと向かう入り口に、クルタナを先頭にして少し進むと通路の先が急に開け、五メートルはあるだろう重厚な灰色の石で出来た門が現れる。だがそこで全員が息を呑む、その場所にあったのは深く濃くどす黒い靄に包まれた門であった。そしてその左右には石化したリア族の兵士が二匹居る。
「番人兵士はここにいた様じゃな…」
「やられたのか…戦おうとして身構えたまま固まってるな…それとこれは闇の障壁だ…巣が闇に襲われたと考えた方が良いんじゃないか?」
「闇だと? これ程禍々しい物を見たのは初めてじゃ……」
その黒い門を触れようとしたクルタナの腕をイサムが掴む。
「触れるな! 闇に落ちるぞ!」
「あっああ…すまない、見ていたら何故か触れたくなってしまった…」
「それに、今回のこの靄は少し他のと違う感じがする。強力と言うか、リア族を外に出さない様にしているのかもしれないな」
「そうなんですか? とても不気味だと言うのは分かるのですが……」
イサムは石を拾って門へと投げる。すると一瞬で投げた石が蒸発して跡形もなくなる。
「今回は触れると死亡確定だな…」
「触れないで良かった…で、どうするのじゃ? これ以外にも入り口はあるが、随分と離れているぞ」
「いや、どの場所も同じだろう。この障壁を破って進もうか」
「破ると言っても、触れないのじゃろう? どうやるのじゃ?」
「俺なら出来るはず、みんな警戒しててくれ」
仲間達が身構える中で、イサムは蘇生魔法を手に込めて闇の障壁に触れる。すると触れた場所から黒い火花が飛び散り、同時に修復しようと周りの闇が集まる。
「こりゃぁ中々手ごわい障壁みたいだな」
『無断で触れられては困る』
聞いた事のない低い声に一同が振り返る。だがその瞬間にガタとニトの胸に長い鎌が突き刺さり、そしてネルタクの首が宙に舞う。
空間から現れたのは古めかしいローブを着た男性だろう闇だった。フードを深々と被りフワフワと宙に浮きながら、大きな鎌を担ぎながら笑うのその男の裂けた口のみが見える。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「ぐあああああああ!」
「ガタ! ニト!」
「ネルタクが! 貴様よくもぉぉぉぉ!」
倒れるガタとニトと同時に首の無いネルタクも膝を付きそのまま倒れる。それを見たエリュオンが激情に駆られて現れた闇へとフレイムタンを構えて突撃する。
「まて! エリュオン!」
イサムの制止を無視してローブの闇に切りかかったエリュオンだが、易々と空を切りその胸元に容赦無く鎌が突き刺さる。
「ぎゃっがはっ! ぐぎぃぃぃぃぃぃぃ!」
「エリュオン!」
貫かれた事により口から大量に血を吐くエリュオン、それを嬉しそう笑いながら漂う闇の男は大きな鎌をエリュオンが刺さったまま肩に担ぐ。
『はっはっはっは!』
「ごほっぐぅぅぅぅぅ! おっ下ろせぇぇぇぇ!」
『無傷で障壁に触れる者が居ると見に来たが、大した事は無い様だな』
鎌に貫かれたエリュオンの言葉など無視して、独り言を呟きながら溜息をつく。しかし、首を斬られ即死したネルタクが光に包まれコアへと体が収束して行く様を見て、卑猥に笑う。
『ああぁ、お前かぁ。タダルカスで見た男だな、コアを所持出来る能力を持っていたんだな』
イサムの視界にはタダルカスで見た大臣と同じ名前の【ダジュカン】【闇の魔物】と表示されている。
「お前はダジュカンだな! エリュオンを返せ!」
イサムは銃を抜き迷わずローブの男に向けて引き金を引く。闇に効果のある蘇生弾である以上はエリュオンに当たっても支障が無いからだ。
それをエリュオンが刺さったままの鎌で防ぐ、だがその男の笑みが消えた。イサムが撃った蘇生弾が触れた鎌の部分がドロリと熔けてしまったのだ。
『ほほう、なるほどそう言う事か……ノイズがやられたのも、まぐれでは無いか……それに私の名前を知っている……少しは楽しめそうだな』
男は突き刺さったままのエリュオンの両頬を片手で掴む。その細く長い指に殆ど肉は無く、長い爪が頬に食い込み血が滲む。そして、宙に浮いたままイサム達を見下ろしたフードの男は、言葉を続ける。
『コアは死ねば持ち主へ戻る、だがもし肉体が魔物と融合した場合どうなると思う?』
「なんだと!?」
『ふふふ…この裏切り者の女を返して欲しかったら、私について来い。制限時間は一時間だ、それまでにこの女を助けられなければ、二度とお前の元へは帰らないと思え』
「がはっぐぅぅぅ…いっ……イサム……」
血だらけのエリュオンは身動きの取れないまま、フードの男と共に闇の中へと消える。そして、それと同時にイサム達の目の前に人一人が通れる程の黒い渦が現れた。
「ついて来いって事か……あの野郎…」
闇の男が消えた事で我に返ったクルタナとサヤがガタとニトの元へ駆ける。
「イサム! ガタとニトが!」
「酷い…あいつ何者なの…」
振り返ったイサムは、傍に落ちているネルタクのコアに触れると直ぐにイサムの中へと戻した。そしてアイテムボックスから未使用のコアを二つ取り出してガタとニトの上に置く。すると圧縮されていたコアが大きく膨らみ二人の体を光に変えて取り込む。
「たぶん、生き返らせてもこの先また殺されるかもしれない。生きる事を望んでいる限りは、コアの状態に戻ってまた生き返ることが出来る」
「ありがとうイサム…」
「感謝は必要ない、人を生き返らせる事が正解なんて言えないからな…まずは三人を呼び出そう」
イサムはメニューからネルタクと先程の二人を呼び出した。何事も無かったかのように現れるガタとニトに対して、肩を抱き震えるネルタク。恐怖に怯えている様な彼女にイサムは頭に手を乗せる。
「大丈夫か? ネルタク」
「ふっ震えが止まらない……一瞬で殺されて、顔は見る事が出来なかったけどあの感じはダジュカンだった…あれ? えっエリュオンは?」
「あいつに連れて行かれたよ、一時間以内に向わないと魔物と同化させると言っていた。急いで向わないと」
「絶対罠です! でも……エリュオンを助けないと…!」
「ああ、必ず助ける!」
イサムはダジュカンが用意した闇の渦の前に立つ。そして仲間達の顔を見ながら深呼吸をした。
「先に俺が入る、戦う気があればついて来てくれ。もし入らなくても誰も俺は行く」
そう言い残すとイサムは渦の中へ入り姿が消える。
「大丈夫じゃ、あの者は一見弱そうじゃが何かをしてくれそうな気がする。どの道、私は母に会わなければならない」
「何処までもお供致します」
「同じく」
「私もです。家族じゃないですか」
「ガタ、ニト、サヤお前に心から感謝する」
クルタナは渦の中へ飛び込み、それを見て三人も飛び込こんだ。一人その場に取り残されたネルタクは、震えを必死に押さえ込み両頬を音を響かせて叩く。
「よし! エリュオン! 必ず助けるからね!」
そして意を決して、ネルタクも飛び込んだ。誰も居なくなったリア族の巣の入り口が静まり返る。そんな中、何も知らずにマックスから降車したディオナが遅れてやって来た。
「あれ? 誰も居ない…中に入ったのかな? でも、あの扉は触れちゃいけない気がする……イサム様何処に行ったんだろう…」
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