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第10話 それでも朝はやってくる

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  俺はなんてことをしてしまったんだ、いや……

 

「まさか、こんなことになってしまうなんてな」

 俺は空虚感が漂う朝の空気へため息をふうっと吐く。とてもやるせない。心が空っぽになってしまった、そんな気がする。

 昨日の夜。俺は八条京香《はちじょうきょうか》、すなわち妹によって夜のご奉仕をされてしまった。

 あまりの衝撃に俺は途中、意識が飛んでいたみたいだ。妹が口を開けて『ごちそうさまでしたぁ』と言って俺の顔を覗き込んでくるまでの記憶が本当に何も残っていない。

 妹は一体なにを考えている?

 俺は八条京香の兄、八条拓哉だぞ?

 こんなことしていい筈がない。

 不健全だ。

 妹が俺の机で角〇ナしてたことの何百倍も不健全だ。

「俺は一体、これからどうしていけば……」

 ふと目線を自分の下半身へ落とすと、そこにはパンパンに膨らんだパジャマがあった。しかも先が少しだけ濡れている。じわぁっと、その膨らみを中心にして染みが広がっている。

「くそっ、これは健全なじゃない。これは、あいつの、妹のことで……」

 朝から性欲が抑え切れずに、生理現象として出てしまったのはいつぶりだろうか。ここ最近ではめったにこんなことなかったのに。兄として、俺は完全に道を踏み外している気がする。

「くそっ、くそっ、くそっ!!!!」

 俺はあいつの兄だ!!

 京香とは決してこんな関係を持つべきではない。

 倫理、社会的な問題として間違っている!!!

 でも!!!

 それでも!!!

 俺は!

 八条拓哉は!!

「なんで、こんなにも体は正直なんだよぉ……」

 涙が溢れてくる。

 俺の意思とは反する体、特に下半身。

 人間が理性によって制御しきれない代表的存在。

 それが、性欲。

 もう俺は逃げられないのかもしれない。

 昨日のご奉仕によって、俺はもう妹から逃げられない体になってしまったのかもしれない。

 いや、昨日から……ではない。

 もう、とっくに俺は気づいていた。

 無意識のうちに体は妹を求めていた。

 そう、あのときから……

 すでに俺と妹の物語は始まっていたんだ。

「あいつの角〇ナなんて見なければ……」


コンコン


 不意に俺の部屋のドアがノックされる。

「お兄ちゃん? もう起きてるの? 早くご飯食べないと遅刻しちゃうよ」

「あ……ああ、ごめん。いま行く」

「うん、今日の朝ごはんは健康的な和食にしてみたの。お兄ちゃんにしっかり食べて欲しくて。」

「そうか、ありがとうな。京香」

 俺は平静を装って返事をしていたが、そのあいだ……

 ずっと俺の体は妹の声に、存在に、妹のすべてに反応していた。

 俺はもう駄目かもしれない……

 自分の体の疼きから、そう思わずにはいられない八条拓哉なのであった。 
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