怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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昔話2 弘の話

憑き物 2

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「ロビン、ああいう時は、せめて頭に『すみませんが』ぐらいつけて発言した方がいいよ」
「……わかった」

振り返ってそう言えば、ロビンはきょろきょろと視線を動かしながらも、そう返事をした。
何をそんなに気にしてるんだろうか。

「ロビン、なんかいる?」
「……あちこちにな感じがする」

ロビンがはっきりと言い切らないのは珍しい。
彼の目にすら明確に見えないということなのだから。

「……何かわかったら、すぐに教えて」
勿論of course

廊下、というよりは縁側――専門的に言うならくり縁――を歩きながら、少しばかり感覚を、耳のように澄ませてみる。
敵意には満たない、値踏みするようなちりちりとした気配は確かにあるが、実体をともなう前に霧散している感じがする。
雲をつかむとはこの事か。

「ああ、そういう」

突き当りを曲がって、離れへの廊下を見て得心とくしんする。
廊下をさえぎるように低めの位置に標縄しめなわが張ってあった。
その奥に見える離れへの戸口にも標縄しめなわが下がっている。
道切みちきりと見て、まず間違いないだろう。

最初の標縄しめなわの脇に、かつては黒電話を乗せていたんじゃないかと思わせる小さな机と、その上にかねとしか形容できないすその広がった形の鋳物いものと、小さな木製のつちが置いてある。
どう考えても、しょうだし、鳴らせ、ということである。

せめて、こういうのは一言言ってほしかったなあ。ゲームとかだってそうじゃん。

そう思う僕の横で、ロビンは物珍しげにじっとそれらを見ている。

「……ロビン、鳴らしてみる?」
「いいの?」

すっかり父親に似て鋭くなってしまったその目に、静かに興奮のきらめきが見える。
はい、とつちをロビンに手渡すと、力加減を調整するためか、二、三度軽く振ってみてからしょうの方を見た。

「音ってどれぐらいすればいいのかな」
「遠慮なくいっていいと思うよ、下の方」

たぶん、離れに音が届かないと意味がないので、そう言うしかない。

ロビンはじっとしょうを観察するように見てから、つちを手首だけで小さく振りかぶって、そしてそのままスナップをかせてしょうの下、広くなった部分に当てる。
くぉーん、と少しくぐもった澄んだ音が響き渡る。
うーん、いい鋳物いものだなあ。
鳴らした本人は思った以上の音にびっくりしたみたいで、固まってるけど。

「せ、センセイ」

油を差す必要がありそうなほどぎこちなくこちらを向いたロビンは、困惑の声をこぼす。

「ちょっと待ってみようか」

にこにこしたままそう答えると、ロビンはそっとしょうの脇につちを置いた。

かねの音は東西問わず魔除まよけだから、まず心配はないよ」
「……教会のかねと、お寺のかね?」
「そ。寺院のやつの正式名称は梵鐘ぼんしょうって言うんだけどね」

そんな話をしていると、離れの方から同じしょうの音が響いてきた。
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