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昔話2 弘の話
憑き物 2
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◆
「ロビン、ああいう時は、せめて頭に『すみませんが』ぐらいつけて発言した方がいいよ」
「……わかった」
振り返ってそう言えば、ロビンはきょろきょろと視線を動かしながらも、そう返事をした。
何をそんなに気にしてるんだろうか。
「ロビン、なんかいる?」
「……あちこちにいそうな感じがする」
ロビンがはっきりと言い切らないのは珍しい。
彼の目にすら明確に見えないということなのだから。
「……何かわかったら、すぐに教えて」
「勿論」
廊下、というよりは縁側――専門的に言うならくり縁――を歩きながら、少しばかり感覚を、耳のように澄ませてみる。
敵意には満たない、値踏みするようなちりちりとした気配は確かにあるが、実体を伴う前に霧散している感じがする。
雲を掴むとはこの事か。
「ああ、そういう」
突き当りを曲がって、離れへの廊下を見て得心する。
廊下を遮るように低めの位置に標縄が張ってあった。
その奥に見える離れへの戸口にも標縄が下がっている。
道切りと見て、まず間違いないだろう。
最初の標縄の脇に、かつては黒電話を乗せていたんじゃないかと思わせる小さな机と、その上に鐘としか形容できない裾の広がった形の鋳物と、小さな木製の槌が置いてある。
どう考えても、鐘だし、鳴らせ、ということである。
せめて、こういうのは一言言ってほしかったなあ。ゲームとかだってそうじゃん。
そう思う僕の横で、ロビンは物珍しげにじっとそれらを見ている。
「……ロビン、鳴らしてみる?」
「いいの?」
すっかり父親に似て鋭くなってしまったその目に、静かに興奮の煌めきが見える。
はい、と槌をロビンに手渡すと、力加減を調整するためか、二、三度軽く振ってみてから鐘の方を見た。
「音ってどれぐらいすればいいのかな」
「遠慮なくいっていいと思うよ、下の方」
たぶん、離れに音が届かないと意味がないので、そう言うしかない。
ロビンはじっと鐘を観察するように見てから、槌を手首だけで小さく振りかぶって、そしてそのままスナップを利かせて鐘の下、広くなった部分に当てる。
くぉーん、と少しくぐもった澄んだ音が響き渡る。
うーん、いい鋳物だなあ。
鳴らした本人は思った以上の音にびっくりしたみたいで、固まってるけど。
「せ、センセイ」
油を差す必要がありそうなほどぎこちなくこちらを向いたロビンは、困惑の声を零す。
「ちょっと待ってみようか」
にこにこしたままそう答えると、ロビンはそっと鐘の脇に槌を置いた。
「鐘の音は東西問わず魔除けだから、まず心配はないよ」
「……教会の鐘と、お寺の鐘?」
「そ。寺院のやつの正式名称は梵鐘って言うんだけどね」
そんな話をしていると、離れの方から同じ鐘の音が響いてきた。
「ロビン、ああいう時は、せめて頭に『すみませんが』ぐらいつけて発言した方がいいよ」
「……わかった」
振り返ってそう言えば、ロビンはきょろきょろと視線を動かしながらも、そう返事をした。
何をそんなに気にしてるんだろうか。
「ロビン、なんかいる?」
「……あちこちにいそうな感じがする」
ロビンがはっきりと言い切らないのは珍しい。
彼の目にすら明確に見えないということなのだから。
「……何かわかったら、すぐに教えて」
「勿論」
廊下、というよりは縁側――専門的に言うならくり縁――を歩きながら、少しばかり感覚を、耳のように澄ませてみる。
敵意には満たない、値踏みするようなちりちりとした気配は確かにあるが、実体を伴う前に霧散している感じがする。
雲を掴むとはこの事か。
「ああ、そういう」
突き当りを曲がって、離れへの廊下を見て得心する。
廊下を遮るように低めの位置に標縄が張ってあった。
その奥に見える離れへの戸口にも標縄が下がっている。
道切りと見て、まず間違いないだろう。
最初の標縄の脇に、かつては黒電話を乗せていたんじゃないかと思わせる小さな机と、その上に鐘としか形容できない裾の広がった形の鋳物と、小さな木製の槌が置いてある。
どう考えても、鐘だし、鳴らせ、ということである。
せめて、こういうのは一言言ってほしかったなあ。ゲームとかだってそうじゃん。
そう思う僕の横で、ロビンは物珍しげにじっとそれらを見ている。
「……ロビン、鳴らしてみる?」
「いいの?」
すっかり父親に似て鋭くなってしまったその目に、静かに興奮の煌めきが見える。
はい、と槌をロビンに手渡すと、力加減を調整するためか、二、三度軽く振ってみてから鐘の方を見た。
「音ってどれぐらいすればいいのかな」
「遠慮なくいっていいと思うよ、下の方」
たぶん、離れに音が届かないと意味がないので、そう言うしかない。
ロビンはじっと鐘を観察するように見てから、槌を手首だけで小さく振りかぶって、そしてそのままスナップを利かせて鐘の下、広くなった部分に当てる。
くぉーん、と少しくぐもった澄んだ音が響き渡る。
うーん、いい鋳物だなあ。
鳴らした本人は思った以上の音にびっくりしたみたいで、固まってるけど。
「せ、センセイ」
油を差す必要がありそうなほどぎこちなくこちらを向いたロビンは、困惑の声を零す。
「ちょっと待ってみようか」
にこにこしたままそう答えると、ロビンはそっと鐘の脇に槌を置いた。
「鐘の音は東西問わず魔除けだから、まず心配はないよ」
「……教会の鐘と、お寺の鐘?」
「そ。寺院のやつの正式名称は梵鐘って言うんだけどね」
そんな話をしていると、離れの方から同じ鐘の音が響いてきた。
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