怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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7-2 わたしはあなたの side B

6 サタンよ、退け

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Cruxクルクス・ sacraサクラ・ sitシト・ mihiミキ・ lux.ルクス。Nonノン・ dracoドラコ・ sitシト・ mihiミキ・ dux.デュクス。Vadeヴァデ・ retroレトロ・ satana.サタナ。Numquamヌンクァム・ suadeスアデ・ mihiミキ・ vana.ヴァナ。Suntスント・ malaマラ・ quaeクェ・ libas.リバス。Ipseイプセ・ venenaヴェネナ・ bibasビバス

もともと、珠紀たまきが首から下げていたということもあって、メダルの上部には穴が開いていた。
そこに新しく革紐を通したものを、真ん中に縦に線が引かれ、それぞれの側に「Si」と「Non」と大きく書かれている紙の、その線上にぶら下げている。
そして、そのメダルをぶら下げているのも、ぶつぶつと繰り返しつぶやいているのもロビンだった。

「……しつこい」

ぶら下げられたメダルは、ずっと横ではなく、縦方向、紙を分割している線に沿って揺れ続けていた。
ロビンとひろがいいこと思いついたと言わんばかりに始めたそれは、織歌おりかそなえた知識としては、ダウジングのようにも見える。

「わたしか先生にわります?」
「いや、いい。ボクが適任なのは変わらないし」

ひろの申し出をロビンは軽く溜息をついて断り、それからメダルをぶら下げる左手側ではなく、右手方向に積まれた紀美きみの持ってきた資料の内、一際ひときわ分厚い一冊を持ち上げて、右手だけで目当てのページへとっていく。

Deusデウス・ iudexユデクス・ iustusユストゥス・ etエト・ fortisフォルティス・ etエト・ patiensパティエンス・ numquidヌムクィド・ irasciturイラシトゥル・ perペル・ singulosシングロス・ dies.ディエス。 Nisiニシ・ conversiコンヴェルシ・ fueritisフエリティス・ gladiumグラディウム・ suumスウウム・ vibrabitヴィブラビト・ arcumアルクム・ suumスウウム・ tetenditテテンディト・ etエト・ paravitパラヴィト・ illum.イルム。 Etエト・ inイン・ eoエオ・ paravitパラヴィト・ vasaヴァサ・ mortisモルティス・ sagittasサジッタス・ suasスアス・ ardentibusアルデンティブス・ effecit.エフェチト。 Ecceエッチェ・ parturiitパルトゥリイト・ iniustitiametインユスティティアメト・ concepitコンチェピト・ doloremドロレム・ etエト・ peperitぺぺリト・ iniquitatem.イニクィタテム。 Lacumラクム・ aperuitアペルイト・ etエト・ effoditエフォディト・ eumエウム・ etエト・ incidetインチデト・ inイン・ foveamフォヴェアム・ quamクァム・ fecit.フェチト。 Converteturコンヴェルテトゥル・ dolorドロル・ eiusエイウス・ inイン・ caputカプト・ eiusエイウス・ etエト・ inイン・ verticemヴェルティチェム・ ipsiusイプシウス・ iniquitasインクィタス・ eiusエイウス・ descendetデシェンデト

たぶんラテン語だ、と織歌おりかは思うが、この間、通販で参考になりそうな本を仕入れたばかりで、まだ読んではいない。し、語学系は読むだけで身につくものでもない。
ぺら、とロビンがページをる音がした。

Dominusドミヌス・ interrogatインテッロガト・ iustumユストゥム・ etエト・ impiumインピウム・ quiクィ・ autemアウテム・ diligitディリジト・ iniquitatemイニクィタテム・ oditオディト・ animamアニマム・ suam.スアム。 Pluetプルエト・ superスペル・ peccatoresペッカトレス・ laqueosラクェオス・ ignisイグニス・ etエト sulphurスルフル・ etエト・ spiritusスピリトゥス procellarumプロチェッラルム・ parsパルス・ calicisカリチス・ eorumエオルム

ゆらゆらと揺れるメダルがいつの間にか、円のような軌跡きせきを描いていた。
何故かロビンの眉間にしわが寄る。
ああ、これは本気でいらっとした時の表情だな、と織歌おりかはうっすら額に汗をにじませたロビンの顔を観察する。

Etエト・ commotaコンモタ・ estエスト・ etエト・ contremuitコントレムィト・ terraテッラ・ etエト・ fundamentaフンダメンタ・ montiumモンティウム・ conturbataコントゥルバタ・ suntスント・ etエト・ commotaコンモタ・ suntスント・ quoniamクォニアム・ iratusイラトゥス・ estエスト・ eis.エイス。 Ascenditアシェンディト・ fumusフムス・ inイン・ iraイラ・ eiusエイウス・ etエト・ ignisイグニス・ aア・ facieファチェ・ eiusエイウス・ exarsitエクサルシト・ carbonesカルボネス・ succensiスッチェンシ・ suntスント・ abアブ・ eoエオ……」
「あ」

声をあげたのは和音わとだった。
メダルが、明らかに「Si」の側へと大きく振れていたからだ。
ロビンが少し肩の力を抜いて、一度言葉を切って、それからまた口を開いた。

Vadeヴァデ・ retroレトロ・ satanaサタナ

次の瞬間、きん、と硬い音がして、ごとっと少し重い音を立てて、まるで袈裟懸けに切ったようにななめに割れたメダルの下半分が紙の「Si」の上に落ちた。
ふーっとロビンが長い息を吐き出し、それとは反対に和音わとの身体が強張ったのを織歌おりかは視界の端でとらえた。
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