OLと女子高生と悪魔の副業【アルファポリス版】

堂宮ツキ乃

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2章

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 小鳥のさえずる声、カーテンのわずかなすき間から漏れ入る朝日。仕事の日だとわずらわしいが、ここでは清々しい朝を迎えられるアイテムだ。

 翼はベッドの上で体を起こし、目をこすった。こちらへ来てからは健康的に早寝早起きができている。今では朝食前に近所の散歩へ赴く余裕もある。

 この日も着替えて顔を洗い、外へ出た。

 朝日をたっぷりと浴びて背伸びをする。家を出る前にアヤトに声をかけようかと思ったがやめておいた。

 彼はやってくる相談者をもてなして悩みを聞き、夜は本業の仕事で都会に赴いている。悪魔だから体力は底知らず、だと自慢していたが見た目は普通の人間。いつの間にか彼が悪魔だというのを忘れかけている。

「おはよう、翼ちゃん」

「新海のおばあちゃん。おはようございまーす」

 近所のおばあさんだ。シルバーカーの柄をしっかり掴み、ゆっくりと歩いている。

 彼女は祖母と仲が良かった。立ち止まり、片手で拳を作ると腰をトントンと叩いた。

「まー今日もいいお天気ねぇ」

「ね。いい陽気だね」


 その後、あばあさんに帰省した息子の手土産をおすそ分けすると言われ、家までついていった。おじいさんと二人ではとても食べきれない量らしい。早起きは三文の徳というのはこのことかもしれない。

 新海老夫婦の息子は翼の両親と同年代で、県外に住んでいるらしい。連休中に帰ってくるのが楽しみだとおばあさんは笑いながらゆっくりと歩いた。

「あのハンサムのコは翼ちゃんの彼氏なの?」

「え、違うよ。ただの居候だよ」

「ずいぶん綺麗なコだねぇ。惚れ惚れしちゃうわ」

「本人が聞いたら喜びそうだな……」

「あのコにも食べさせてあげとくれ。若いでよく食べるかねぇ」

 家に着くと、縁側で待っていてと庭に通された。遊びに来た息子夫婦と孫が草むしりをしてくれたおかげで綺麗になったと、おばあさんは嬉しそうに笑った。

 軒先からは家の周りを囲う塀と青空が広がっている。祖父母の家とは違い、古き良き日本家屋の風景といったところだ。洋風の家もいいが、たまには和にふれるのもいい。わずかに汗ばんだ肌を縁側を吹き抜ける風が心地よかった。

「は~……いたた……」

「大丈夫?」

 おばあさんは腰に拳を当てながら翼の横に座った。

「翼ちゃんが来てくれて嬉しいやぁ。風子さんがいた時みたい」

「そう?」

「あんたは聞き上手だもんでなんでも話したくなっちゃう。私が話し過ぎてたら言いなさいよ」

「今の私は時間があるから気にしないで。それにおばあちゃんと話してるのも楽しいよ」

「もうあんたは……」

 おばあさんは翼の二の腕をパシッと叩いた。その表情は嬉しそうで、翼もつられてほほえんだ。

────かつて魔女と呼ばれていた祖母。彼女は悩める人々を救う”魔法”を持っていた。

 しかしそれはアヤトに願いを叶えてもらうために始めたのがきっかけだった。知った時は微妙というか正直残念にも思ったが、彼女に救われた人は多い。彼女のやってきたことは偉業だと、改めて祖母のことが誇らしくなった。

(それにしても、ばっちゃとアヤトはどこでどう知り合ったんだろ……)

「翼ちゃん、昨日の晩の煮魚食べる? 朝ごはんはまだかん?」

 おばあさんに聞かれてうなずくと、ついでに食べていきなさいと誘われた。彼女のことを手伝うべく、翼は縁側で靴を脱いで立ち上がった。
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