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3章
Part 130『複雑で単純な精霊の気持ち』
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私は、一つの問題に直面していました。つい先日、私は峰さんとお付き合いをさせて頂くことになりました。
リューさんの依頼という形ではありましたが、一日以上、外に出ていられるのは、おそらく、後にも先にもこの機会だけなので、とても楽しみにしていました。
旅行なんて精霊の私では到底考えられない経験なのです。
付き合い始めて初の旅行、つまりは、特別なものになるものだと勝手に思っていました。
だと言うのに彼氏彼女という風ではありません。というか、普段と変わりありません。まるで、告白なんてなかったようにいつも通りの峰さんです。
今もナギさんや粉雪さんと仲良くお話をしています。いえ、良いことなんです。皆さん良い人そうで仲良くなる事が悪いだなんて思ってはいけません。
手持ちぶたさになった私は、机の上にぐったりとしているノアさんを拾い上げて軽く撫でます。ナギさんも峰さんも何故だか、ノアさんを雑に扱います。
こんなに可愛らしい見た目をしているのに、どうやら、お二人にとっては可愛い存在という訳ではないらしいです。
「これとか、どう? 持ってると相手がどこにいるか分かる人形よ。」
ナギさんは、小さな糸で出来た人形を差し出します。小さな人形は、ホラー映画でみるようなミイラ男のようなデザインをデフォルメしてあって可愛らしい見た目でした。
「あ、いいですね。日向さん。それ、私と交換しましょう。この辺りの治安は私達の家が守ってますけど、最近は物騒ですからね。ペアで持ちますか? あ、今の粉雪的にポイント高い・・・・・・おっと、自重するんでした・・・・・・」
粉雪さんは、峰さんの隣でそんな事を提案しています。粉雪さんは、峰さんをかなり気に入っているようです。
この短時間で随分と距離を詰めているような気がします。
峰さんも満更ではないような気がします。粉雪さんもお綺麗ですからね。男性ならああして綺麗な女性に積極的に迫られて悪い気はしないのは当然です。
私達は、本当に付き合っているのでしょうか。こんなにモヤモヤするのでしょう。もっと、恋愛というのは、幸せだと聞いていたのですが、思うようにいきません。
「・・・・・・い、痛いです・・・・・・」
手元でノアさんを撫でる手に力が篭っていました。ぐったりしているのにさらに追い討ちをかけてしまいました。
「す、すいません!」と私は、ノアさんを机の上に置いて頭を下げます。
ノアさんは、何も言わずに、モノクルを付けた人形の頭に戻っていきます。そして、先程まで、割れていた顔面が元の人の形へと戻っていきます。
モノクルの人形は、まるで生きているように動き出して「みんな、怖い・・・」と店の隅っこで体育座りになっていじけてしまいました。
やってしまいました。申し訳なく思いながらも私は、再び視線を峰さんに戻しました。
すると峰さんが先ほどの人形を購入していました。その光景にズキリと胸が痛くなります。
「では、そろそろ行きましょうか。」
買い物を終えたのを確認すると真冬さんがそう提案します。
私は少しノアさんが気になりましたが「大丈夫よ。しばらくすれば、適当に戻るから」とナギさんが言うのでまた後日誤りに来ようと私もお店を出ました。
楽しくなると思っていたのに少しガッカリしていました。もしかして、告白されたのは、夢だったんじゃないでしょうか。
「サクヤ」
私がそうして、落胆している事など、分かってもいないような顔で峰さんは、私に声をかけてきます。
「ほら、これ、サクヤに」
そう言って差し出して来たのは、先ほどの人形でした。
「あれ、それ、粉雪さんに買ったんじゃ・・・」
「なんでだよ。俺の分とサクヤの分を買ったの。ここ、日本円も使えるところあるんだってさ。びっくりしたわ。あれ? いらない? 民族系の人形も楽しそうに見てたから好きだろうなと思ってたんだけど・・・・・・」
「民族系の人形?」
私、そんな話をしたでしょうか? 少し思い返して見ます。心当たりがいまいち出て来ません。
「ほら、初めて一緒にサンドイッチを食べた店に置いてある人形見るのが楽しいって言ってただろ?」
そう言われて、ハッと思い出します。初めて峰さんと喫茶店に行った時にその話をしました。
覚えててくれた・・・・・・その事実に先ほどまで、締め付けられるように感じていた胸の痛みが引いて暖かいものが胸をいっぱいにします。
私の事をちゃんと考えてくれてるんだ。なんて事を思って嬉しくなります。少し調子が良すぎる自分の気持ちが憎らしいですが、仕方ありません。嬉しいものは嬉しいのです。
「いらないなら、まあ、俺が持ってるけど・・・・・・」
「いります! 峰さん」
私は、半ば奪い取るように私は、人形を受け取ります。
「ありがとうございます。大好きです! 峰さん!」
私がそう言うと峰さんは、顔を赤くして「お、おう。気に入って良かった。」と言ってそっぽを向いてしまいます。
その姿に私は安心します。大丈夫です。ちゃんとゆっくりと私達は進んでいます。
リューさんの依頼という形ではありましたが、一日以上、外に出ていられるのは、おそらく、後にも先にもこの機会だけなので、とても楽しみにしていました。
旅行なんて精霊の私では到底考えられない経験なのです。
付き合い始めて初の旅行、つまりは、特別なものになるものだと勝手に思っていました。
だと言うのに彼氏彼女という風ではありません。というか、普段と変わりありません。まるで、告白なんてなかったようにいつも通りの峰さんです。
今もナギさんや粉雪さんと仲良くお話をしています。いえ、良いことなんです。皆さん良い人そうで仲良くなる事が悪いだなんて思ってはいけません。
手持ちぶたさになった私は、机の上にぐったりとしているノアさんを拾い上げて軽く撫でます。ナギさんも峰さんも何故だか、ノアさんを雑に扱います。
こんなに可愛らしい見た目をしているのに、どうやら、お二人にとっては可愛い存在という訳ではないらしいです。
「これとか、どう? 持ってると相手がどこにいるか分かる人形よ。」
ナギさんは、小さな糸で出来た人形を差し出します。小さな人形は、ホラー映画でみるようなミイラ男のようなデザインをデフォルメしてあって可愛らしい見た目でした。
「あ、いいですね。日向さん。それ、私と交換しましょう。この辺りの治安は私達の家が守ってますけど、最近は物騒ですからね。ペアで持ちますか? あ、今の粉雪的にポイント高い・・・・・・おっと、自重するんでした・・・・・・」
粉雪さんは、峰さんの隣でそんな事を提案しています。粉雪さんは、峰さんをかなり気に入っているようです。
この短時間で随分と距離を詰めているような気がします。
峰さんも満更ではないような気がします。粉雪さんもお綺麗ですからね。男性ならああして綺麗な女性に積極的に迫られて悪い気はしないのは当然です。
私達は、本当に付き合っているのでしょうか。こんなにモヤモヤするのでしょう。もっと、恋愛というのは、幸せだと聞いていたのですが、思うようにいきません。
「・・・・・・い、痛いです・・・・・・」
手元でノアさんを撫でる手に力が篭っていました。ぐったりしているのにさらに追い討ちをかけてしまいました。
「す、すいません!」と私は、ノアさんを机の上に置いて頭を下げます。
ノアさんは、何も言わずに、モノクルを付けた人形の頭に戻っていきます。そして、先程まで、割れていた顔面が元の人の形へと戻っていきます。
モノクルの人形は、まるで生きているように動き出して「みんな、怖い・・・」と店の隅っこで体育座りになっていじけてしまいました。
やってしまいました。申し訳なく思いながらも私は、再び視線を峰さんに戻しました。
すると峰さんが先ほどの人形を購入していました。その光景にズキリと胸が痛くなります。
「では、そろそろ行きましょうか。」
買い物を終えたのを確認すると真冬さんがそう提案します。
私は少しノアさんが気になりましたが「大丈夫よ。しばらくすれば、適当に戻るから」とナギさんが言うのでまた後日誤りに来ようと私もお店を出ました。
楽しくなると思っていたのに少しガッカリしていました。もしかして、告白されたのは、夢だったんじゃないでしょうか。
「サクヤ」
私がそうして、落胆している事など、分かってもいないような顔で峰さんは、私に声をかけてきます。
「ほら、これ、サクヤに」
そう言って差し出して来たのは、先ほどの人形でした。
「あれ、それ、粉雪さんに買ったんじゃ・・・」
「なんでだよ。俺の分とサクヤの分を買ったの。ここ、日本円も使えるところあるんだってさ。びっくりしたわ。あれ? いらない? 民族系の人形も楽しそうに見てたから好きだろうなと思ってたんだけど・・・・・・」
「民族系の人形?」
私、そんな話をしたでしょうか? 少し思い返して見ます。心当たりがいまいち出て来ません。
「ほら、初めて一緒にサンドイッチを食べた店に置いてある人形見るのが楽しいって言ってただろ?」
そう言われて、ハッと思い出します。初めて峰さんと喫茶店に行った時にその話をしました。
覚えててくれた・・・・・・その事実に先ほどまで、締め付けられるように感じていた胸の痛みが引いて暖かいものが胸をいっぱいにします。
私の事をちゃんと考えてくれてるんだ。なんて事を思って嬉しくなります。少し調子が良すぎる自分の気持ちが憎らしいですが、仕方ありません。嬉しいものは嬉しいのです。
「いらないなら、まあ、俺が持ってるけど・・・・・・」
「いります! 峰さん」
私は、半ば奪い取るように私は、人形を受け取ります。
「ありがとうございます。大好きです! 峰さん!」
私がそう言うと峰さんは、顔を赤くして「お、おう。気に入って良かった。」と言ってそっぽを向いてしまいます。
その姿に私は安心します。大丈夫です。ちゃんとゆっくりと私達は進んでいます。
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