咲かない桜

御伽 白

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3章

part 222 『お説教』

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 いくつもの戦いを見て大抵の事は恐ろしくも慣れたと思っていた。

 けれど、恐ろしいものはもっと別にあったのかもしれない。

 何も言わずに襖の向こうからとびきりの笑顔で手招きをしている真冬さん。しかも、何も言わないが、まるで全身が凍えそうなほど寒い圧力を感じていた。

 俺は、周囲の妖怪達に助けを求める視線を送るが全員、示し合わせた様に俺から視線を外した。

 おい、レンジ、お前、一緒に頑張った仲間だろ・・・・・・ふ、所詮、ただの協力関係なんだな・・・・・・

 俺はゆっくりと立ち上がり、真冬さんの前に恐る恐る近づいた。

 「ま、真冬さん。お、おおお、おひさしぶりです。」

 どもりながら俺は、真冬さんに挨拶をする。すると、変わらない笑顔で真冬さんは、右拳をぎゅっと握った。

 「・・・・・・歯を食いしばっていただけますか?」

 「死ぬから! 死んじゃうから!」

 鬼に殴られたら人間は間違いなく即死だ。せっかく生還したのにこんなところで死にたくない。

 「心配していた人に、お久しぶりです。なんて、殴られても文句言えませんよ?」

 「す、すみません。ご心配お掛けしました。」

 確かに配慮が足りなかった。手紙を出したとはいえ、心配させた相手に能天気に「お久しぶり」という挨拶ではなかった。

 「まあ、サクヤさんにはちゃんと謝ってください。心配して食事も喉を通らない事はなかったですけど、心配していましたから」

 「ちゃんと食べてるじゃないですか!」

 「言われてみれば食事に関しては、ちゃんと食べてましたね。まあ、とにかく心配はしていたので、きちんとお詫びをしてください。」

 「それは、勿論、分かってます。」

 「さて、じゃあ、お説教があるので、ここから失礼しますか。」

 「え、今のがお説教だったんじゃ・・・・・・」

 「あれは、オードブルみたいなものです。この後、スープ、魚料理ポワソン口直しソルベ肉料理アントレ、最後はデザートデセールで終わりです。」

 「フルコース!? 」

 「それでは、一旦帰って改めて挨拶に参りますので、失礼しますね。」

 そう言ってムゲツ達に向かって頭を下げると俺の首ねっこを片手で掴み持ち上げられる。まるで猫の様だ。

 「あの、自分でも歩けるんですけど・・・・・・」

 「何か?」

 「なんでもないです。」

 連れていかれる俺を「頑張れよ。」みたいな表情でレンジがしていた。いや、お前が元凶だろうが・・・・・・今度会ったら殴ってやる。絶対にダメージにはならないだろうが・・・・・・

 俺はそう心に誓うのであった。
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