咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
249 / 352
4章

Part 248 『入門』

しおりを挟む
 しばらく、椿と篝さんの仕事を見ながらお茶を飲んでいると、篝さんが道具を置いて汗を拭った。

 先ほどまでの集中がゆっくりと解けていくのが分かった。どうやら、一段落ついた様だった。

 そして、視線がこちらに向き「おお、来てたのか。」と俺に向かって手を挙げた。

 「それで、決まったのか? フネ」

 「峰です。このやり取り何回するんですか!」

 二文字なのに名前を一向に覚えてくれる気配がない。もしかして、呪いでもかかっているんだろうか。

 「すまんすまん。孫と友達になってくれたのか。」

 「いえ、マスターは私のマスターです。」

 椿さんは、篝さんにはっきりと迷いなく俺の記憶にない事を言いはじめる。

 「いつの間にか所有者扱いされてる!?」

 「はい。私を拾った時点で所有者登録は完了されました。登録を解除するには、本社へとご連絡ください。なお、解除の際には、手数料が掛かりますのでご了承ください。」

 「なんて、悪質な押し売り・・・・・・」

 拾った時点で所有者になった挙句、解約金がいるとは、飛んだ悪徳商法だ。

 「私の・・・・・・見ましたよね?」

 「お前・・・・・・孫のを見たのか」

 「小説をね!? ていうか、椿もなんでそんな意味深な言い方をするんだよ!」

 ほら、意味深な言い方をする椿に篝さんは、険しい表情を浮かべている。孫が不純異性交遊に及んでいるのは、流石に・・・・・・

 「まあ、お盛んなのは良いが、ゴムは付けろよ。」

 「お、エロい話? 俺も入れろよ。」

 「誰も止めるやつがいねぇのか! ここには・・・・・・」

 俺は、大きく溜息を吐いて篝さんに話を戻す。

 「俺に呪術士の技術を教えてください。そのための努力は、怠らないつもりです。お願いします。」

 俺がそう言うとあっさりと篝さんは「・・・・・・そうか。分かった。」と了承してくれる。

 もう少し覚悟とかそう言うのを試されるのかと思ったのだが、どうやら、そんな事はないらしい。

 「ただ、一つ言っておかなきゃいけねぇ事がある。それさえ分かってりゃあ、絶対にお前さんを呪術師にしてやれる。」

 篝さんは、部屋の奥に視線を向ける。その先には、達筆な文字が書かれた掛け軸があった。

 『一瞬の近道、極みへの遠周り』そう書かれた掛け軸を見ながら篝さんは、俺に言った。

 「極めるのに近道なんかねぇ。そういうのは、天才とかがやるもんだ。俺達は地道に一歩づつ、コツコツと積み重ねていくしかねぇ。近道をしようとすんなよ。全身全霊でやれ。それだけだ。」

 「はい。よろしくお願いします。」

 最初から手抜きなんてする気は無い。俺がそういうと篝さんは、軽く笑って俺に握手を求めた。

 「よろしくな。いね」

 「峰です。」

 なんとも締まらない入門だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...