咲かない桜

御伽 白

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4章

Part 319 『後継者』

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 突然の引退宣言に俺だけでなく乱丸もあんぐりとしていた。

 「え、なんでですか。あんなに毎日毎日やっていたのに・・・・・・」

 「お前の持ってる刀な。能力を上昇させるもんじゃねぇ。それは、将来の自分がたどり着ける最高を自身に宿すもんだ。」

 自分の将来に辿り着く最高の境地に辿り着く。それは、破格の性能をした妖刀である。

 「じゃあ、このまま続ければあの作品をもう一度作れるってことですよね。」

 「ああ、おそらくな。けど、それだけだ。俺は自分の限界を知っちまった。そして、それを目指す意味もな。だから、引退だ。」

 自分自身の限界を知る。伸び代を知る。それは、自分には絶対に辿り着けない境地を知ること。

 それは、高みを目指す上で決定的な現実だ。

 それでも限界が見えているのだとしてもあれだけの作品を作り上げることが無駄だとは思えない。

 「良いんじゃねぇか?  別に好きにすれば」

 俺が篝さんを止めようとした時、乱丸が口を開いた。

 「おやっさんも歳だしな。後人の育成に力を入れる歳になったってことだろ。」

 「まあ、そう言うことだ。自分の限界も知った。これで後腐れなく教育に専念出来る。」

 篝さんは、そう言って俺を見た。その表情は真剣そのものだった。

 「利根、お前、本気で呪術師になる気はないか?」

 「・・・・・・峰ですけど・・・・・・」

 「あ、すまん。峰、呪術師になれ」

 「あれ? さっきと言い方が違うんですけど!?」

 「正直、嫌なら逃げても良いがな。お前の代で呪術師は廃業だ。先人の残した技術も終わりになるな。」

 「圧が凄い・・・・・・」

 明らかに断りにくくしてくるのが悪質だった。

 「だが、実際お前にとっても悪い話じゃないぞ。なにせ、呪術は妖怪に干渉できる技術だからな。お前の女の精霊に何かあった時の助けになるかもしれない。」

 現代の医学が精霊にまで効くとは思えないので確かにこの選択肢は正解かもしれない。

 自分が何になりたいかなんて、大学に通いながらも見つからない。

 自分は、どうなりたいのか。揺らいで結局、なんとなくで将来を選択する。

 特別な人になりたい。

 自分が誇れる何かが欲しい。

 その気持ちは、ずっと俺の中で貪欲に生きている。

 なら、これはチャンスだ。

 「分かりました。これからもご指導よろしくお願いします。」

 俺がそう言って一礼すると篝さんは「厳しいからな。覚悟しろよ。まあ、先に妖精の指輪だが」と応えた。

 サクヤの呪具は未だ完成していないままだ。

 しかし、春までは時間がある。一度は、完成までこぎつけたのだから、必ず間に合わせてみせる。

 そう思っていた。
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