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2章
Part 53 『迫り来る脅威』
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「ていうか、公園で一人で何してたんだ?」
俺は、ユキと話をしながら歩く。ちらほらと通行人とすれ違うが一体どういう風に見えているのだろうか。
「なんにも、ただ、家にいるとお母さん心配するから」
「心配?」
普通は逆じゃないのか? と俺は、彼女に尋ねる。
「普通の子供は、学校が終わったら友達と遊ぶのが普通だから」
「普通って・・・それは、変な話だな。」
けれど、親としては、普通に友達と遊んでいる方が安心できるのだろう。確かに遊びにもいかずに家にずっといる子供は親としては心配なのかもしれない。友達がちゃんといるのかとか、虐められてないかとか。
彼女は、妖怪が見えるらしいので、気味が悪いと敬遠される事もあるのかもしれない。それに、この周りとは違う見た目だ。転校生なら仲の良い子もすぐには出来なくても仕方ない。
「お母さんには言ってるのか? 妖怪とかそう言うのが見えるって事」
「うん、だけど、あんまり信じてもらえてないみたい。」
「そっか」
見えないものを信じると言うのは、難しいものだ。俺だって見える前までは、幽霊や妖怪なんている訳がないと思っていた側の人間だったのだ。
妖怪達は俺達に対して敵意を抱いている場合は、ほとんどないので危険はない。けれど、害がないかと言われれば、そうでもない。彼らの姿が見えることによって遮られて本来見えるはずのものが見えなくなったり、妖怪の声で他の人間の声が聞こえなくなったりなどの問題ーーこれは実際に講義を受けている時にあって困ったーーなんかもある。
それに会話までしてしまうと完全に変人だと思われてしまう。
「まあ、その辺りを理解してもらうのは難しいよな。俺は最近、見えるようになったからそういう実感が薄いけどさ。」
「見える人に初めて会えて嬉しいです。」
「俺もそれに関しては同じだな。最近は、人間より妖怪の方が関わることが多いし・・・」
「そう言えば、魔女を探してるって言ってましたよね。なんで探してるんですか?」
「ああ、それはーーー」
「あれ? お兄ちゃん、どうしたのこんなところで」
背後から聞き慣れた声が聞こえる。しかし、その聞き慣れた声は、家で聞くよりもずいぶん柔らかい印象だ。俺は、その声のする方に振り返る。そこには、妹の春香が笑顔でこちらを見ていた。
「春香・・・春香も今帰りか?」
「うん。そうだよ。お兄ちゃんも今帰ってきたんだ。お疲れ様」
いつもの春香からは想像もつかないほどに親しげな振る舞いに少し背筋が寒くなる。妹は基本的には外では、品行方正で人当たりのいい女の子を演じているのだ。陰口とか悪口は言わないし、人の嫌な仕事でも積極的にやったりする。つまるところ、今は良い子ちゃんモードなのだ。
「ところで、お兄ちゃん、隣の子は、お兄ちゃんのお知り合い?」
「ああ、えっと、ユキって言うんだ。」と答える。笑顔は崩れていないがその目は一切笑っていない。笑顔の中にゴミを見るような侮蔑の眼差しが混じっているのを俺はヒシヒシと感じていた。
意訳するならこうだろう。『このロリコン、一回死ねばいい』とかそんな感じ
「初めまして・・・ユキです。」
ユキが深くお辞儀をすると春香も「丁寧にありがとうね。私は、あの人の妹の春香っていうのよろしくね。ユキちゃん。」ととても優しげな笑顔を向けて対応する。
「ところでユキちゃんとお兄ちゃんとはどこで知り合ったの?」
「公園で会ったんだよ。倒れてる女の子がいると思って・・・大丈夫かと思って」
「そうなんだ~。さすがお兄ちゃんは優しいなぁ。自慢のお兄ちゃんだよ。」
なぜだろう。暖かい台詞のはずなのにどんどん寒くなっていくのは・・・
「はい。助けてもらって、それに私の・・・綺麗って・・・」
嬉しそうにそんな言葉を続けるユキを前に春香が一瞬だけ般若のような顔をしていた気がした。いや、なんで、一瞬でそんなに表情を変えられるんだよ。ある意味超能力じゃないか。
「と、とりあえず、ユキを送って行ったら俺も帰るから」
「うん。分かった。ユキちゃんもまたね」
そう言って春香はユキに向かって手を振るとユキもそれを返した。俺は逃げるように先に進む事にした。
そして、春香からだいぶ距離をとった頃、ユキが少し嬉しそうに「春香さん、いい人ですね。優しくて可愛くて」と褒めるので「あ、うん。」と微妙な声で同意してしまった。
俺、多分、この後、その優しくて可愛くていい人の春香に罵詈雑言を浴びせられる事になるんだけど・・・
「あ、ここからなら、帰る場所わかります。」
俺達がしばらく歩いているとユキがそう言った。
「なら、ここまででいいか?」
「はい。ありがとうございました。」
「いや、別にいいよ。俺も見える子に会えてよかったし」
「あ、あの、また会えますか? その時間のある時でいいので・・・」
控えめにユキはそう言った。その表情は、どこか不安げではあった。俺は、彼女の頭を撫でて「ああ、勿論だ。いつでも会いにきてくれていいよ。」と答えるとユキは、花が咲いたように微笑んだ。
「それじゃあ、また。」
ユキを見送って俺は帰る事にする。その足取りは非常に重たい。
なんて、説明しようかなぁ・・春香に・・・
俺は、ユキと話をしながら歩く。ちらほらと通行人とすれ違うが一体どういう風に見えているのだろうか。
「なんにも、ただ、家にいるとお母さん心配するから」
「心配?」
普通は逆じゃないのか? と俺は、彼女に尋ねる。
「普通の子供は、学校が終わったら友達と遊ぶのが普通だから」
「普通って・・・それは、変な話だな。」
けれど、親としては、普通に友達と遊んでいる方が安心できるのだろう。確かに遊びにもいかずに家にずっといる子供は親としては心配なのかもしれない。友達がちゃんといるのかとか、虐められてないかとか。
彼女は、妖怪が見えるらしいので、気味が悪いと敬遠される事もあるのかもしれない。それに、この周りとは違う見た目だ。転校生なら仲の良い子もすぐには出来なくても仕方ない。
「お母さんには言ってるのか? 妖怪とかそう言うのが見えるって事」
「うん、だけど、あんまり信じてもらえてないみたい。」
「そっか」
見えないものを信じると言うのは、難しいものだ。俺だって見える前までは、幽霊や妖怪なんている訳がないと思っていた側の人間だったのだ。
妖怪達は俺達に対して敵意を抱いている場合は、ほとんどないので危険はない。けれど、害がないかと言われれば、そうでもない。彼らの姿が見えることによって遮られて本来見えるはずのものが見えなくなったり、妖怪の声で他の人間の声が聞こえなくなったりなどの問題ーーこれは実際に講義を受けている時にあって困ったーーなんかもある。
それに会話までしてしまうと完全に変人だと思われてしまう。
「まあ、その辺りを理解してもらうのは難しいよな。俺は最近、見えるようになったからそういう実感が薄いけどさ。」
「見える人に初めて会えて嬉しいです。」
「俺もそれに関しては同じだな。最近は、人間より妖怪の方が関わることが多いし・・・」
「そう言えば、魔女を探してるって言ってましたよね。なんで探してるんですか?」
「ああ、それはーーー」
「あれ? お兄ちゃん、どうしたのこんなところで」
背後から聞き慣れた声が聞こえる。しかし、その聞き慣れた声は、家で聞くよりもずいぶん柔らかい印象だ。俺は、その声のする方に振り返る。そこには、妹の春香が笑顔でこちらを見ていた。
「春香・・・春香も今帰りか?」
「うん。そうだよ。お兄ちゃんも今帰ってきたんだ。お疲れ様」
いつもの春香からは想像もつかないほどに親しげな振る舞いに少し背筋が寒くなる。妹は基本的には外では、品行方正で人当たりのいい女の子を演じているのだ。陰口とか悪口は言わないし、人の嫌な仕事でも積極的にやったりする。つまるところ、今は良い子ちゃんモードなのだ。
「ところで、お兄ちゃん、隣の子は、お兄ちゃんのお知り合い?」
「ああ、えっと、ユキって言うんだ。」と答える。笑顔は崩れていないがその目は一切笑っていない。笑顔の中にゴミを見るような侮蔑の眼差しが混じっているのを俺はヒシヒシと感じていた。
意訳するならこうだろう。『このロリコン、一回死ねばいい』とかそんな感じ
「初めまして・・・ユキです。」
ユキが深くお辞儀をすると春香も「丁寧にありがとうね。私は、あの人の妹の春香っていうのよろしくね。ユキちゃん。」ととても優しげな笑顔を向けて対応する。
「ところでユキちゃんとお兄ちゃんとはどこで知り合ったの?」
「公園で会ったんだよ。倒れてる女の子がいると思って・・・大丈夫かと思って」
「そうなんだ~。さすがお兄ちゃんは優しいなぁ。自慢のお兄ちゃんだよ。」
なぜだろう。暖かい台詞のはずなのにどんどん寒くなっていくのは・・・
「はい。助けてもらって、それに私の・・・綺麗って・・・」
嬉しそうにそんな言葉を続けるユキを前に春香が一瞬だけ般若のような顔をしていた気がした。いや、なんで、一瞬でそんなに表情を変えられるんだよ。ある意味超能力じゃないか。
「と、とりあえず、ユキを送って行ったら俺も帰るから」
「うん。分かった。ユキちゃんもまたね」
そう言って春香はユキに向かって手を振るとユキもそれを返した。俺は逃げるように先に進む事にした。
そして、春香からだいぶ距離をとった頃、ユキが少し嬉しそうに「春香さん、いい人ですね。優しくて可愛くて」と褒めるので「あ、うん。」と微妙な声で同意してしまった。
俺、多分、この後、その優しくて可愛くていい人の春香に罵詈雑言を浴びせられる事になるんだけど・・・
「あ、ここからなら、帰る場所わかります。」
俺達がしばらく歩いているとユキがそう言った。
「なら、ここまででいいか?」
「はい。ありがとうございました。」
「いや、別にいいよ。俺も見える子に会えてよかったし」
「あ、あの、また会えますか? その時間のある時でいいので・・・」
控えめにユキはそう言った。その表情は、どこか不安げではあった。俺は、彼女の頭を撫でて「ああ、勿論だ。いつでも会いにきてくれていいよ。」と答えるとユキは、花が咲いたように微笑んだ。
「それじゃあ、また。」
ユキを見送って俺は帰る事にする。その足取りは非常に重たい。
なんて、説明しようかなぁ・・春香に・・・
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