439 / 454
9章 祝福
ファイト
しおりを挟む
「レクス、ちょっとこれを見てくれ」
「どうしたの、セレスさん?」
レクスはセレスから渡された書類に目を通す。そこには─────所々印が付けられた財政に関する報告の紙だ。勿論、レクス区の。
一目見ただけでは特に何も分からない。一見すると異常はないような収支報告のようだが……………
「…………この印のついている部分は?」
「それは─────収支を操作している所だ」
「操作?」
「ああ。操作っていうのは意図的に収支の数字を変えることだ」
「それはなんとなく分かるけど……………なんのために?」
「端的に言うとだな─────自分のところに入ってくる金を増やすためだ。例えば、収入を実際ものより少し下げて、支出を上げて支出の方が収入より多くなるようにする。すると当然、その店は赤字って事になる。黒字経営なのにも関わらず、だ。そこに赤字の補填でいくらか金が出されれば─────」
「あっ…………! 何もしなくてもお金が増える……………!」
「そういうことだ」
「そっか…………」
それが段々貯まっていけば────莫大なものになる。塵も積もれば山となる、とはこの事だろう。
「この印をつけたところに直々に督促状を書く。レクスには印を押してもらいたい」
「分かった」
レクスはセレスの言葉に頷くと、引き出しから紙を取り出し渡す。例の督促状だ。セレスさんの書くスピードが速い。…………というか、速すぎる気がする。レクスなんか目で追ってるが、あれ? もう九枚目? ってスピードだ。
「よし、これで全て書き終わった。レクス、後はここに印を頼む」
「ああ、うん…………セレスさん、速いね…………?」
「私の取り柄は書類整理だけだからな……………そこだけは誰にも譲らんってな」
冗談めかしたようにそう言うセレス。レクスもそれにつられて少し笑った。──────と。
「あのあの、セレスさんはかっこいいと思うよ!」
「うぉ!?」
レクスは突然のシュエイルの登場に驚いたような声を出す。
「おっと、シュエイルか。びっくりしたぞ」
言葉とは裏腹に全く驚いた様子もなくセレスはそう言った。これが大人の余裕というやつなのかもしれない。
「私は反応が鈍くてな。だから、うわぁ! とかいった驚くような反応をする前にある程度気持ちが落ち着いてしまうんだ。だから、私が冷静なわけではないぞ」
「………………心読んでたりする?」
「ははっ、表情に出やすいんじゃないか?」
(……………そんなに分かりやすいかな、僕)
レクスは苦笑しつつ、そんなことを考えた。
「それで、どうしたんだ? 顔が赤いが」
シュエイルの方に向き直るセレス。
「あ、えーっと…………セレスさんにはもっと取り柄があると思う! かっこいいし、仕事もてきぱきこなすし、それに──────」
顔を赤らめながら早口でそう言うシュエイル。恐らく、セレスを励ましているのだろう。それが伝わったのか──────
「ありがとな」
ポンポンと頭を撫でるセレス。シュエイルの顔は更に真っ赤になってしまった。それを見たレクスも流石に察しがついたのか──────
(道は遠いだろうけど………頑張ってね、シュエイル)
なんて心の中でささやかなエールを送ったのだった。
◇◆◇◆◇
一方、こっそり執務室を覗き見していたミーシャ達は………………。
「……………完全に子供扱いね」
「……………そうだね」
「……………シュエイル、諦めるにはまだ、早いかも……………?」
「頑張れっ…………!」
とりあえず、シュエイルの想いが届くのはまだ先になりそうだ──────みんな、そう思ったのだった。
「どうしたの、セレスさん?」
レクスはセレスから渡された書類に目を通す。そこには─────所々印が付けられた財政に関する報告の紙だ。勿論、レクス区の。
一目見ただけでは特に何も分からない。一見すると異常はないような収支報告のようだが……………
「…………この印のついている部分は?」
「それは─────収支を操作している所だ」
「操作?」
「ああ。操作っていうのは意図的に収支の数字を変えることだ」
「それはなんとなく分かるけど……………なんのために?」
「端的に言うとだな─────自分のところに入ってくる金を増やすためだ。例えば、収入を実際ものより少し下げて、支出を上げて支出の方が収入より多くなるようにする。すると当然、その店は赤字って事になる。黒字経営なのにも関わらず、だ。そこに赤字の補填でいくらか金が出されれば─────」
「あっ…………! 何もしなくてもお金が増える……………!」
「そういうことだ」
「そっか…………」
それが段々貯まっていけば────莫大なものになる。塵も積もれば山となる、とはこの事だろう。
「この印をつけたところに直々に督促状を書く。レクスには印を押してもらいたい」
「分かった」
レクスはセレスの言葉に頷くと、引き出しから紙を取り出し渡す。例の督促状だ。セレスさんの書くスピードが速い。…………というか、速すぎる気がする。レクスなんか目で追ってるが、あれ? もう九枚目? ってスピードだ。
「よし、これで全て書き終わった。レクス、後はここに印を頼む」
「ああ、うん…………セレスさん、速いね…………?」
「私の取り柄は書類整理だけだからな……………そこだけは誰にも譲らんってな」
冗談めかしたようにそう言うセレス。レクスもそれにつられて少し笑った。──────と。
「あのあの、セレスさんはかっこいいと思うよ!」
「うぉ!?」
レクスは突然のシュエイルの登場に驚いたような声を出す。
「おっと、シュエイルか。びっくりしたぞ」
言葉とは裏腹に全く驚いた様子もなくセレスはそう言った。これが大人の余裕というやつなのかもしれない。
「私は反応が鈍くてな。だから、うわぁ! とかいった驚くような反応をする前にある程度気持ちが落ち着いてしまうんだ。だから、私が冷静なわけではないぞ」
「………………心読んでたりする?」
「ははっ、表情に出やすいんじゃないか?」
(……………そんなに分かりやすいかな、僕)
レクスは苦笑しつつ、そんなことを考えた。
「それで、どうしたんだ? 顔が赤いが」
シュエイルの方に向き直るセレス。
「あ、えーっと…………セレスさんにはもっと取り柄があると思う! かっこいいし、仕事もてきぱきこなすし、それに──────」
顔を赤らめながら早口でそう言うシュエイル。恐らく、セレスを励ましているのだろう。それが伝わったのか──────
「ありがとな」
ポンポンと頭を撫でるセレス。シュエイルの顔は更に真っ赤になってしまった。それを見たレクスも流石に察しがついたのか──────
(道は遠いだろうけど………頑張ってね、シュエイル)
なんて心の中でささやかなエールを送ったのだった。
◇◆◇◆◇
一方、こっそり執務室を覗き見していたミーシャ達は………………。
「……………完全に子供扱いね」
「……………そうだね」
「……………シュエイル、諦めるにはまだ、早いかも……………?」
「頑張れっ…………!」
とりあえず、シュエイルの想いが届くのはまだ先になりそうだ──────みんな、そう思ったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8,261
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。