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序章 ルフスの日常
Prologue:5 声
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魔法研究所でソアに魔法礼装を預けてから数時間後。
満月の夜。
誰も居なくなった薄暗い部屋の中で一人、レイルはいつものように深夜0時過ぎまで資料の整理と剣の状態のチェックを行っていた。
すると突然、剣が強い光を放つ。
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
喋る筈もない無機物の剣から聞こえてきた第一声はそれだった。
「……え」
ノイズ交じりで確かに聞こえた女性の声。
レイルは目を見開いてピタリと動きを止めて、資料に向けていた視線をゆっくりと剣の方へと向けるが当然そこには誰も居ない。
この時間帯まで研究室に籠っている物好きはこの都市を探してもレイルくらいだ。
次に研究室を見渡すが自分以外に人の姿は無い。
ぞくり、と背筋が凍るような感覚が走り、全身に鳥肌が立つ。
どれだけ見渡しても視界に映るのは剣が入った透明なガラスケースとそれを囲うように設置された鉄の箱のみ。後ろを振り返り研究室の出入り口を確認するもしっかりとロックが掛かっており、固く閉ざされている。
物陰に隠れているだけだろうか……?と魔力を感知してみても、人の反応は無い。
そもそも此処は一番警備が厳しい厳重なエリア。
此処は、神話の時代に生み出されて以降今現在も世界に残存する貴重な神の遺産の一つ神剣を管理、研究するための施設。イタズラ目的で誰かが気軽に入れる空間ではない。
まさか、幽霊――。
ざわざわと心の底より恐怖が這い上がってくる。
「は、働き過ぎてとうとう幻聴が聴こえるようになってきたのかな……。
毎日15時間労働はやり過ぎかぁ、あは、あはは!」
その恐怖心を誤魔化すように独り言を言ってみる。
すると再び、神剣が音を発した。
『ザ――。君 を 闇、ザッザザ。狙 っ て い――――ザ―』
「っ……!」
全身の感覚が様々な方法で身の危険を伝えてくる。
(神剣が喋った……? 誰かのイタズラ? でもこの嫌な雰囲気……誰かの冗談とも思えない)
警戒しつつ神剣に近づく、ガラスケースに保管されている神剣は淡い光を放ったまま。
ガラスケースを叩いてみるが反応は無い。自分を落ち着かせるように深呼吸をして、レイルは神剣に問いかけた。
「神剣が、喋っているのか……?」
返答は返ってこない。
「気のせいか……?」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
「っ(同じ内容を繰り返し言っているのか……?俺を闇の獣が狙っている、って言いたいのか?」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
「言いたい事はわかったから、もう……」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
狂ったロボットのように神剣は同じ内容を繰り返し始めた。一定のリズムで一言一句狂うことなく、ノイズすら同じタイミングで。ただひたすらリピートを続ける。
「なんっ――」
ゾッ、と鳥肌が立つ、全身を言葉では言い表せない恐怖が包む。
これは明らかに異常だ、とレイルは逃げる様に急いで神剣研究室から出ていった。
『ザザ――……』
レイルが居なくなったことに気付いたのか、神剣は沈黙。
しん、と静まり返る研究室。
暫くして、その静寂を神剣の声が破る。
『……。
666回目の襲来。獣の数字。淵の邪神。もう世界は止まらないよ』
満月の夜。
誰も居なくなった薄暗い部屋の中で一人、レイルはいつものように深夜0時過ぎまで資料の整理と剣の状態のチェックを行っていた。
すると突然、剣が強い光を放つ。
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
喋る筈もない無機物の剣から聞こえてきた第一声はそれだった。
「……え」
ノイズ交じりで確かに聞こえた女性の声。
レイルは目を見開いてピタリと動きを止めて、資料に向けていた視線をゆっくりと剣の方へと向けるが当然そこには誰も居ない。
この時間帯まで研究室に籠っている物好きはこの都市を探してもレイルくらいだ。
次に研究室を見渡すが自分以外に人の姿は無い。
ぞくり、と背筋が凍るような感覚が走り、全身に鳥肌が立つ。
どれだけ見渡しても視界に映るのは剣が入った透明なガラスケースとそれを囲うように設置された鉄の箱のみ。後ろを振り返り研究室の出入り口を確認するもしっかりとロックが掛かっており、固く閉ざされている。
物陰に隠れているだけだろうか……?と魔力を感知してみても、人の反応は無い。
そもそも此処は一番警備が厳しい厳重なエリア。
此処は、神話の時代に生み出されて以降今現在も世界に残存する貴重な神の遺産の一つ神剣を管理、研究するための施設。イタズラ目的で誰かが気軽に入れる空間ではない。
まさか、幽霊――。
ざわざわと心の底より恐怖が這い上がってくる。
「は、働き過ぎてとうとう幻聴が聴こえるようになってきたのかな……。
毎日15時間労働はやり過ぎかぁ、あは、あはは!」
その恐怖心を誤魔化すように独り言を言ってみる。
すると再び、神剣が音を発した。
『ザ――。君 を 闇、ザッザザ。狙 っ て い――――ザ―』
「っ……!」
全身の感覚が様々な方法で身の危険を伝えてくる。
(神剣が喋った……? 誰かのイタズラ? でもこの嫌な雰囲気……誰かの冗談とも思えない)
警戒しつつ神剣に近づく、ガラスケースに保管されている神剣は淡い光を放ったまま。
ガラスケースを叩いてみるが反応は無い。自分を落ち着かせるように深呼吸をして、レイルは神剣に問いかけた。
「神剣が、喋っているのか……?」
返答は返ってこない。
「気のせいか……?」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
「っ(同じ内容を繰り返し言っているのか……?俺を闇の獣が狙っている、って言いたいのか?」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
「言いたい事はわかったから、もう……」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
狂ったロボットのように神剣は同じ内容を繰り返し始めた。一定のリズムで一言一句狂うことなく、ノイズすら同じタイミングで。ただひたすらリピートを続ける。
「なんっ――」
ゾッ、と鳥肌が立つ、全身を言葉では言い表せない恐怖が包む。
これは明らかに異常だ、とレイルは逃げる様に急いで神剣研究室から出ていった。
『ザザ――……』
レイルが居なくなったことに気付いたのか、神剣は沈黙。
しん、と静まり返る研究室。
暫くして、その静寂を神剣の声が破る。
『……。
666回目の襲来。獣の数字。淵の邪神。もう世界は止まらないよ』
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