リベルニオン ー神剣解放―

白玉

文字の大きさ
5 / 16
序章 ルフスの日常

Prologue:5 声

しおりを挟む
 魔法研究所でソアに魔法礼装を預けてから数時間後。
 満月の夜。

 誰も居なくなった薄暗い部屋の中で一人、レイルはいつものように深夜0時過ぎまで資料の整理と剣の状態のチェックをおこなっていた。

 すると突然、
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
 喋る筈もない無機物の剣から聞こえてきた第一声はそれだった。

「……え」

 ノイズ交じりで確かに聞こえた女性の声。
 レイルは目を見開いてピタリと動きを止めて、資料に向けていた視線をゆっくりと剣の方へと向けるが当然そこには誰も居ない。
 この時間帯まで研究室に籠っているはこの都市を探してもレイルくらいだ。

 次に研究室を見渡すが自分以外に人の姿は無い。
 、と背筋が凍るような感覚が走り、全身に鳥肌が立つ。

 どれだけ見渡しても視界に映るのは剣が入った透明なガラスケースとそれを囲うように設置された鉄の箱のみ。後ろを振り返り研究室の出入り口を確認するもしっかりとロックが掛かっており、固く閉ざされている。

 物陰に隠れているだけだろうか……?と魔力を感知してみても、人の反応は無い。

 そもそも此処は一番警備が厳しい厳重なエリア。
 此処は、神話の時代に生み出されて以降今現在も世界に残存する貴重な神の遺産の一つを管理、研究するための施設。イタズラ目的で誰かが気軽に入れる空間ではない。

 まさか、幽霊――。
 ざわざわと心の底より恐怖が這い上がってくる。

「は、働き過ぎてとうとう幻聴が聴こえるようになってきたのかな……。
 毎日15時間労働はやり過ぎかぁ、あは、あはは!」

 その恐怖心を誤魔化すように独り言を言ってみる。
 すると再び、神剣が音を発した。

『ザ――。君 を 闇、ザッザザ。狙 っ て い――――ザ―』

「っ……!」

 全身の感覚が様々な方法で身の危険を伝えてくる。

(神剣が喋った……? 誰かのイタズラ? でもこの嫌な雰囲気……誰かの冗談とも思えない)

 警戒しつつ神剣に近づく、ガラスケースに保管されている神剣は淡い光を放ったまま。
 ガラスケースを叩いてみるが反応は無い。自分を落ち着かせるように深呼吸をして、レイルは神剣に問いかけた。

「神剣が、喋っているのか……?」

 返答は返ってこない。

「気のせいか……?」
『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』
「っ(同じ内容を繰り返し言っているのか……?俺を闇の獣が狙っている、って言いたいのか?」

『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』

「言いたい事はわかったから、もう……」

『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』

『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』『ザザ――、ザッ。君のザ――。“闇の獣”が――ザザッ狙っ、ザ、ザザ。』

 狂ったロボットのように神剣は同じ内容を繰り返し始めた。一定のリズムで一言一句狂うことなく、ノイズすら同じタイミングで。ただひたすらリピートを続ける。

「なんっ――」
 ゾッ、と鳥肌が立つ、全身を言葉では言い表せない恐怖が包む。
 これは明らかに異常だ、とレイルは逃げる様に急いで神剣研究室から出ていった。

『ザザ――……』

 レイルが居なくなったことに気付いたのか、神剣は沈黙。
 しん、と静まり返る研究室。

 暫くして、その静寂を神剣の声が破る。

『……。
 666回目の襲来。獣の数字。淵の邪神。もう世界は止まらないよ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

処理中です...