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第一章 開幕の襲来
目覚ましビンタと爽やかな朝の日差し
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翌日。
昨夜の意味不明な謎の声との対話でガッツリ精神ポイントを削られたレイルはなかなか眠りにつくことが出来ず、眠くなるまで資料整理をすることにしたが、ガッチガチの研究馬鹿が眠くなれるハズもなく、これに没頭。
色々な資料を読み漁っていたらあっという間に四時間が経過しており慌ててベッドにもぐりこんだが結局眠れず、そのまま朝を迎えてしまった。
徹夜で仕事か……、と憂鬱な気分で支度をしていたら何故か立ったまま意識を失うという器用なことをやってのけ、そのまま一時間直立睡眠――。
そして現在。
直立睡眠中だった彼は幼馴染のソアによってビンタで叩き起こされた。
異様に腫れ上がった右頬を撫でながらレイルはソアに問いかける。
「改めて、おはようソア……ところでなんで俺はビンタされたんですかね」
「いや……だって立ったまま寝てるんだよ? レイルくんついに魂持ってかれちゃったのかなって心配になって……ごめんね? 本当にごめんねっ?」
直立で寝ているというよくわからない場面に出くわしたソアは天然パワーがさく裂、ビンタで叩き起こそうとするのも中々だが、何故かビンタを繰り出す際に“強化魔法”を発動してしまったらしく。
こうしてレイル・ラウバーンの右頬は綺麗に腫れ上がったというわけだ。
「大丈夫、お陰でシャキっと目が覚めひゃから、痛っ……腫れてると喋りにくいね」
「う、うん……マジごめんなさい。
ところでレイルくん。この散らかりようは何かあったの?」
デスクの上と、その周辺の床に散乱している紙の束に目を向けてソアは言う。
「昨日変な事があって眠れなくてね、それで夜遅くまで資料整理しててかくかくしかじか」
「へんなこと?」
「誰のイタズラか知らないけど、昨日の夜研究室で変な声が聞こえてさ。お恥ずかしながら眠れなくなってしまいまして」
「それで朝立ったまま寝てたのかぁ、納得」
納得できるのか、とツッコミを入れたくなる気持ちを抑えてレイルは散らばった資料を整理し始めた。
「あんまり神剣の事に気を取られてたらダメだよ? きっとそのイタズラ、夜遅くまでお仕事してるレイルくんを叱る為に誰かがやったんじゃない?」
「確かに、そうかもしれないなぁ。今日は早く帰るようにするよ」
「今 日 だ け ?」
「こ、今後そうします」
「う~む。よろしいっ!」
ソアはにっこりと満面の笑みを浮かべた後、窓際へと移動してカーテンの裾に手を伸ばした。
「それに、少しは身体も動かさないと。最近訓練してないでしょー」
「バレた?」
「バレバレ、リンクさん嘆いてたよ~? レイルが俺の言う事聞いてくれない~反抗期だうぇ~ん! ってね」
声を低くして“リンク”という男性の声真似をするソア。正直全く似ていなかった。
真似をした対象がまるで声帯にもカッチカチの筋肉がついていそうな野太い重低音ボイスの持ち主なため、似ていなくて当然なのだが……!
そんな全身筋肉達磨の色黒むさ苦しい漢が両手を顔に当ててわんわんと泣いている姿を想像して苦笑いするレイル。
(き、今日の夜。ちょっと顔出してみるかぁ)
「そ~れっと!」
ソアが元気よくカーテンを開けると、待ってましたと言わんばかりに朝の日差しが部屋いっぱいに差し込み、二人を照らした。
「ん~! 今日もいい天気」
声を漏らしながら大きく伸びをする。
窓からは眩しい朝日とずらりと並ぶ煉瓦造りの民家、高くそびえ立つ鉄塔。遠くには城壁のような鉄の巨大な壁、空を見上げればそこには例の白い鉄の球体が優雅に空を飛んでいる。
「そういえばさ、明日って何かの記念日だったよね。ほら、最重要なんちゃら~って」
「最重要防衛指定区域?」
「それそれ! ん~と、えへ。今年で何年目だっけ……?」
「確か、十二年目だね」
明日は機工都市ルフスが“最重要防衛指定区域”に指定されてから十二年目の記念日。特に大きな祭りごとがあるわけではないがこの都市にとっては特別な日だった。
“最重要防衛指定区域”とは簡単に言ってしまえばゼネラル王国が住まう城と同じレベルで国にとって重要な場所、ということである。
「早いねぇ~もうそんなに経つんだ」
「うん。神剣の研究が始まってから、この都市も色々と変わったね」
十二年前のこの日、ルフスはゼネラル王国より“神剣”を管理、調査する任を受けたことによって大きな変化がもたらされた。
昔、ここは鉱山に囲まれ鉄が豊富にとれることから鉄の都市と呼ばれていたが各地から神剣の研究のため優秀な魔法使い、研究者がルフスに集められ、機工と呼ばれる技術が誕生。
以降この都市は機工都市に変名。
ルフスは神剣の為にその姿形を変えた都市だった。
機工技術は神剣を調査し、安全に保管し尚且つ外敵に奪われることを防ぐ為に活用された。
「そういえば。最近“フェンリル”の仕事はどう? 忙しい?」
「全っ然よぉ、後方支援の部隊は訓練ばっかり!」
だがいくら優れた技術だからといって機工の力だけでは万全とは言い難い、何故なら神剣は魔を引き寄せる特殊な力場を常に発生させているからだ。
そこでゼネラル王国はこの都市を自国の城と同じ“最重要防衛指定区域”に指定し大陸各地から信頼できる一流の戦士を集めた特殊防衛組織を用意した。
それが都市防衛部隊・フェンリル。
ディアスが所属する、この都市を守る最強の盾であり最強の矛である。
昨夜の意味不明な謎の声との対話でガッツリ精神ポイントを削られたレイルはなかなか眠りにつくことが出来ず、眠くなるまで資料整理をすることにしたが、ガッチガチの研究馬鹿が眠くなれるハズもなく、これに没頭。
色々な資料を読み漁っていたらあっという間に四時間が経過しており慌ててベッドにもぐりこんだが結局眠れず、そのまま朝を迎えてしまった。
徹夜で仕事か……、と憂鬱な気分で支度をしていたら何故か立ったまま意識を失うという器用なことをやってのけ、そのまま一時間直立睡眠――。
そして現在。
直立睡眠中だった彼は幼馴染のソアによってビンタで叩き起こされた。
異様に腫れ上がった右頬を撫でながらレイルはソアに問いかける。
「改めて、おはようソア……ところでなんで俺はビンタされたんですかね」
「いや……だって立ったまま寝てるんだよ? レイルくんついに魂持ってかれちゃったのかなって心配になって……ごめんね? 本当にごめんねっ?」
直立で寝ているというよくわからない場面に出くわしたソアは天然パワーがさく裂、ビンタで叩き起こそうとするのも中々だが、何故かビンタを繰り出す際に“強化魔法”を発動してしまったらしく。
こうしてレイル・ラウバーンの右頬は綺麗に腫れ上がったというわけだ。
「大丈夫、お陰でシャキっと目が覚めひゃから、痛っ……腫れてると喋りにくいね」
「う、うん……マジごめんなさい。
ところでレイルくん。この散らかりようは何かあったの?」
デスクの上と、その周辺の床に散乱している紙の束に目を向けてソアは言う。
「昨日変な事があって眠れなくてね、それで夜遅くまで資料整理しててかくかくしかじか」
「へんなこと?」
「誰のイタズラか知らないけど、昨日の夜研究室で変な声が聞こえてさ。お恥ずかしながら眠れなくなってしまいまして」
「それで朝立ったまま寝てたのかぁ、納得」
納得できるのか、とツッコミを入れたくなる気持ちを抑えてレイルは散らばった資料を整理し始めた。
「あんまり神剣の事に気を取られてたらダメだよ? きっとそのイタズラ、夜遅くまでお仕事してるレイルくんを叱る為に誰かがやったんじゃない?」
「確かに、そうかもしれないなぁ。今日は早く帰るようにするよ」
「今 日 だ け ?」
「こ、今後そうします」
「う~む。よろしいっ!」
ソアはにっこりと満面の笑みを浮かべた後、窓際へと移動してカーテンの裾に手を伸ばした。
「それに、少しは身体も動かさないと。最近訓練してないでしょー」
「バレた?」
「バレバレ、リンクさん嘆いてたよ~? レイルが俺の言う事聞いてくれない~反抗期だうぇ~ん! ってね」
声を低くして“リンク”という男性の声真似をするソア。正直全く似ていなかった。
真似をした対象がまるで声帯にもカッチカチの筋肉がついていそうな野太い重低音ボイスの持ち主なため、似ていなくて当然なのだが……!
そんな全身筋肉達磨の色黒むさ苦しい漢が両手を顔に当ててわんわんと泣いている姿を想像して苦笑いするレイル。
(き、今日の夜。ちょっと顔出してみるかぁ)
「そ~れっと!」
ソアが元気よくカーテンを開けると、待ってましたと言わんばかりに朝の日差しが部屋いっぱいに差し込み、二人を照らした。
「ん~! 今日もいい天気」
声を漏らしながら大きく伸びをする。
窓からは眩しい朝日とずらりと並ぶ煉瓦造りの民家、高くそびえ立つ鉄塔。遠くには城壁のような鉄の巨大な壁、空を見上げればそこには例の白い鉄の球体が優雅に空を飛んでいる。
「そういえばさ、明日って何かの記念日だったよね。ほら、最重要なんちゃら~って」
「最重要防衛指定区域?」
「それそれ! ん~と、えへ。今年で何年目だっけ……?」
「確か、十二年目だね」
明日は機工都市ルフスが“最重要防衛指定区域”に指定されてから十二年目の記念日。特に大きな祭りごとがあるわけではないがこの都市にとっては特別な日だった。
“最重要防衛指定区域”とは簡単に言ってしまえばゼネラル王国が住まう城と同じレベルで国にとって重要な場所、ということである。
「早いねぇ~もうそんなに経つんだ」
「うん。神剣の研究が始まってから、この都市も色々と変わったね」
十二年前のこの日、ルフスはゼネラル王国より“神剣”を管理、調査する任を受けたことによって大きな変化がもたらされた。
昔、ここは鉱山に囲まれ鉄が豊富にとれることから鉄の都市と呼ばれていたが各地から神剣の研究のため優秀な魔法使い、研究者がルフスに集められ、機工と呼ばれる技術が誕生。
以降この都市は機工都市に変名。
ルフスは神剣の為にその姿形を変えた都市だった。
機工技術は神剣を調査し、安全に保管し尚且つ外敵に奪われることを防ぐ為に活用された。
「そういえば。最近“フェンリル”の仕事はどう? 忙しい?」
「全っ然よぉ、後方支援の部隊は訓練ばっかり!」
だがいくら優れた技術だからといって機工の力だけでは万全とは言い難い、何故なら神剣は魔を引き寄せる特殊な力場を常に発生させているからだ。
そこでゼネラル王国はこの都市を自国の城と同じ“最重要防衛指定区域”に指定し大陸各地から信頼できる一流の戦士を集めた特殊防衛組織を用意した。
それが都市防衛部隊・フェンリル。
ディアスが所属する、この都市を守る最強の盾であり最強の矛である。
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