リベルニオン ー神剣解放―

白玉

文字の大きさ
7 / 16
第一章 開幕の襲来

続く春、変わらない空

しおりを挟む
「そうなんだ、でも実戦が無いってことは平和ってことで、いいことじゃないか」

「うんー……平和なのが一番なんだけれども、ちょっと刺激が足りないのよね。
 もっと魔物退治とかいきたい!」

「あっはは、少し前までは神剣の魔力につられた魔物が都市を襲ったりしてたけど、今じゃ魔力遮断技術が進化し過ぎて一切魔物も寄り付かなくなっちゃったもんね……」

「そうそう、本当恐るべし機工都市!って感じだよ~」

 国の憂いは杞憂か、今現在想定されていた神剣を狙う脅威は機工技術だけで事足りる状況だった。

 レイルは床に散乱した資料を集め終えてデスクに纏めるとソアの隣に行き外の様子を眺める。

「資料お掃除終わった?」
「うん、一枚たりとも残さず片してやったよ」

「偉い偉い。じゃあ朝ご飯食べに行こうかぁ、私もうお腹ぺこぺこ!」

 そう言いつつ、ソアが自身のお腹をさするとタイミングよく盛大にお腹が鳴った。それも割と長めで。
 自己主張の激しいお腹に顔を赤らめるソアと、思わず吹き出してしまうレイル。

「笑わないでよ! あーもう恥ずかしいっ、はやくいこ!」
「かしこまりました、腹ペコお嬢様」
「からかうなぁ!!」



 外に出た二人を爽やかな風が出迎える。
 居住区の大きな道の両脇は色とりどりの花が植えられた花壇とピンク色の花が咲く木々。それらが風に揺られて、花が舞う。

 暖かい日差しと色とりどりの花々がレンガ造りの街を彩る、ここだけ切り取って見れば鉄の壁で囲まれた都市とは思えないだろう。

「今日も、気持ちい風。いいねぇ春って。ま、他の季節って私知らないんだけどさぁ」
「俺もプリマヴェーラから出たことないからなぁ」

 季節は春真っただ中。
 いや、正しくはに季節は春真っただ中と言った方が正しいだろう。

 彼らが住む世界。
 ゼネラル大陸は巨大な山脈によって東西南北に四分割され、その山脈から発せられると呼ばれる特殊な魔力によってがゼネラル大陸だけ“固定化”され、その影響で季節の変化が無く、永遠と同じ季節が続いている。
 と言われているが正直のところ理由はあまり解明されていない――。

 所説では大地の地下深くにが封印されているため、等々各所で様々な言い伝えが存在する。

「やっぱり私、ゼネラル大陸でどこに一番住みたいって言われたらこのプリマヴェーラを選んじゃうかなぁ~」

「春が一番過ごしやすいって何かの本で読んだな」

「うんうん、他の地方は暑かったり寒かったりで……あ、でも秋のアートノインもいいかも」

「一度でいいから行ってみたいね」

「大陸一周とかしてみたい!」

 和気あいあいとそんな話をしていると彼らの目的地である食堂がある建物が見えてきた。

 機工都市ルフスの中央にそびえたつ巨大な塔“機工式魔法障壁制御塔”、通称・中央塔。
 ルフスのシンボルである中央塔はを制御、コントロールする他に“防衛部隊・フェンリル”の本部や“神剣研究所”の研究施設として利用されている。

 レイル達が目指す食堂はこの“機工式・魔法障壁制御塔”全三十七階の四階のワンフロアにある。

 本部と研究施設があるということで当然利用者は体育会系が集う防衛部隊員と文化系の研究員で食堂内はいつもアウトドア派とインドア派が入り乱れる両極端でカオスな状況となっている。
 その両極端な利用者のニーズに答える為、この食堂には多彩なメニューが用意されていた。

 そんな食堂の光景を見つつレイルは言った。

「今日も朝食選手権無差別級って感じの光景だ」
「みんなとっても仲良くお食事してるよねぇ」

 早速二人は朝食の注文をするためにトレーを取り、比較的短い行列に並ぶ。しばらくして背後から声をかけられた。

「よっすレイル、ソアちん」
「おはようディアス」「おっはよ~」

 声をかけたのはディアスだった。

「この時間にいるの、珍しいね」
「非番だかんな、こうして優雅に朝食をとれちゃうんでザマス」
「お、おう」

 得意げにそう言うとディアスもトレーを取り、彼らと共に列に並んだ。

「ソアちんは今日演習あるだっけか?」
「そうなんだよね~だからたくさん食べておかないと!」
「ふっいい心がけだ。レイルは今日も遅くまで研究か?」
「えっと」

 ジロリ、とソアの鋭い視線が刺さる。

「いや、今日は早めに帰る……よ」
「なんだ珍しい。明日は雪でも降るのかねぇ?」
「じゃあ毎日雪が降っちゃうねぇ」
「あ、あはは……」

 列が進んで行き、レイル達の番がくる。
 ソアは一般的な朝食(量多め)を頼みレイルは卵とソーセージ、そしてルフスの近くで採れるピリッと辛いイエローカラカラマッシュルームをパンで挟んだルフス特製ホットドック。

 ディアスは軽めの朝食を頼んだつもりが何故か防衛部隊野郎共専用の『ドキッ肉だらけ!男は黙って肉セット!』を頼んだことになっていた。

「Why???」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...