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第一章 開幕の襲来
続く春、変わらない空
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「そうなんだ、でも実戦が無いってことは平和ってことで、いいことじゃないか」
「うんー……平和なのが一番なんだけれども、ちょっと刺激が足りないのよね。
もっと魔物退治とかいきたい!」
「あっはは、少し前までは神剣の魔力につられた魔物が都市を襲ったりしてたけど、今じゃ魔力遮断技術が進化し過ぎて一切魔物も寄り付かなくなっちゃったもんね……」
「そうそう、本当恐るべし機工都市!って感じだよ~」
国の憂いは杞憂か、今現在想定されていた神剣を狙う脅威は機工技術だけで事足りる状況だった。
レイルは床に散乱した資料を集め終えてデスクに纏めるとソアの隣に行き外の様子を眺める。
「資料お掃除終わった?」
「うん、一枚たりとも残さず片してやったよ」
「偉い偉い。じゃあ朝ご飯食べに行こうかぁ、私もうお腹ぺこぺこ!」
そう言いつつ、ソアが自身のお腹をさするとタイミングよく盛大にお腹が鳴った。それも割と長めで。
自己主張の激しいお腹に顔を赤らめるソアと、思わず吹き出してしまうレイル。
「笑わないでよ! あーもう恥ずかしいっ、はやくいこ!」
「かしこまりました、腹ペコお嬢様」
「からかうなぁ!!」
外に出た二人を爽やかな風が出迎える。
居住区の大きな道の両脇は色とりどりの花が植えられた花壇とピンク色の花が咲く木々。それらが風に揺られて、花が舞う。
暖かい日差しと色とりどりの花々がレンガ造りの街を彩る、ここだけ切り取って見れば鉄の壁で囲まれた都市とは思えないだろう。
「今日も、気持ちい風。いいねぇ春って。ま、他の季節って私知らないんだけどさぁ」
「俺もプリマヴェーラから出たことないからなぁ」
季節は春真っただ中。
いや、正しくは永遠に季節は春真っただ中と言った方が正しいだろう。
彼らが住む世界。
ゼネラル大陸は巨大な山脈によって東西南北に四分割され、その山脈から発せられる権能と呼ばれる特殊な魔力によって世界の流れがゼネラル大陸だけ“固定化”され、その影響で季節の変化が無く、永遠と同じ季節が続いている。
と言われているが正直のところ理由はあまり解明されていない――。
所説では大地の地下深くに季節を司る獣が封印されているため、等々各所で様々な言い伝えが存在する。
「やっぱり私、ゼネラル大陸でどこに一番住みたいって言われたらこのプリマヴェーラを選んじゃうかなぁ~」
「春が一番過ごしやすいって何かの本で読んだな」
「うんうん、他の地方は暑かったり寒かったりで……あ、でも秋のアートノインもいいかも」
「一度でいいから行ってみたいね」
「大陸一周とかしてみたい!」
和気あいあいとそんな話をしていると彼らの目的地である食堂がある建物が見えてきた。
機工都市ルフスの中央にそびえたつ巨大な塔“機工式魔法障壁制御塔”、通称・中央塔。
ルフスのシンボルである中央塔は主に都市を覆う魔法障壁を制御、コントロールする他に“防衛部隊・フェンリル”の本部や“神剣研究所”の研究施設として利用されている。
レイル達が目指す食堂はこの“機工式・魔法障壁制御塔”全三十七階の四階のワンフロアにある。
本部と研究施設があるということで当然利用者は体育会系が集う防衛部隊員と文化系の研究員で食堂内はいつもアウトドア派とインドア派が入り乱れる両極端でカオスな状況となっている。
その両極端な利用者のニーズに答える為、この食堂には多彩なメニューが用意されていた。
そんな食堂の光景を見つつレイルは言った。
「今日も朝食選手権無差別級って感じの光景だ」
「みんなとっても仲良くお食事してるよねぇ」
早速二人は朝食の注文をするためにトレーを取り、比較的短い行列に並ぶ。しばらくして背後から声をかけられた。
「よっすレイル、ソアちん」
「おはようディアス」「おっはよ~」
声をかけたのはディアスだった。
「この時間にいるの、珍しいね」
「非番だかんな、こうして優雅に朝食をとれちゃうんでザマス」
「お、おう」
得意げにそう言うとディアスもトレーを取り、彼らと共に列に並んだ。
「ソアちんは今日演習あるだっけか?」
「そうなんだよね~だからたくさん食べておかないと!」
「ふっいい心がけだ。レイルは今日も遅くまで研究か?」
「えっと」
ジロリ、とソアの鋭い視線が刺さる。
「いや、今日は早めに帰る……よ」
「なんだ珍しい。明日は雪でも降るのかねぇ?」
「じゃあ毎日雪が降っちゃうねぇ」
「あ、あはは……」
列が進んで行き、レイル達の番がくる。
ソアは一般的な朝食(量多め)を頼みレイルは卵とソーセージ、そしてルフスの近くで採れるピリッと辛いイエローカラカラマッシュルームをパンで挟んだルフス特製ホットドック。
ディアスは軽めの朝食を頼んだつもりが何故か防衛部隊野郎共専用の『ドキッ肉だらけ!男は黙って肉セット!』を頼んだことになっていた。
「Why???」
「うんー……平和なのが一番なんだけれども、ちょっと刺激が足りないのよね。
もっと魔物退治とかいきたい!」
「あっはは、少し前までは神剣の魔力につられた魔物が都市を襲ったりしてたけど、今じゃ魔力遮断技術が進化し過ぎて一切魔物も寄り付かなくなっちゃったもんね……」
「そうそう、本当恐るべし機工都市!って感じだよ~」
国の憂いは杞憂か、今現在想定されていた神剣を狙う脅威は機工技術だけで事足りる状況だった。
レイルは床に散乱した資料を集め終えてデスクに纏めるとソアの隣に行き外の様子を眺める。
「資料お掃除終わった?」
「うん、一枚たりとも残さず片してやったよ」
「偉い偉い。じゃあ朝ご飯食べに行こうかぁ、私もうお腹ぺこぺこ!」
そう言いつつ、ソアが自身のお腹をさするとタイミングよく盛大にお腹が鳴った。それも割と長めで。
自己主張の激しいお腹に顔を赤らめるソアと、思わず吹き出してしまうレイル。
「笑わないでよ! あーもう恥ずかしいっ、はやくいこ!」
「かしこまりました、腹ペコお嬢様」
「からかうなぁ!!」
外に出た二人を爽やかな風が出迎える。
居住区の大きな道の両脇は色とりどりの花が植えられた花壇とピンク色の花が咲く木々。それらが風に揺られて、花が舞う。
暖かい日差しと色とりどりの花々がレンガ造りの街を彩る、ここだけ切り取って見れば鉄の壁で囲まれた都市とは思えないだろう。
「今日も、気持ちい風。いいねぇ春って。ま、他の季節って私知らないんだけどさぁ」
「俺もプリマヴェーラから出たことないからなぁ」
季節は春真っただ中。
いや、正しくは永遠に季節は春真っただ中と言った方が正しいだろう。
彼らが住む世界。
ゼネラル大陸は巨大な山脈によって東西南北に四分割され、その山脈から発せられる権能と呼ばれる特殊な魔力によって世界の流れがゼネラル大陸だけ“固定化”され、その影響で季節の変化が無く、永遠と同じ季節が続いている。
と言われているが正直のところ理由はあまり解明されていない――。
所説では大地の地下深くに季節を司る獣が封印されているため、等々各所で様々な言い伝えが存在する。
「やっぱり私、ゼネラル大陸でどこに一番住みたいって言われたらこのプリマヴェーラを選んじゃうかなぁ~」
「春が一番過ごしやすいって何かの本で読んだな」
「うんうん、他の地方は暑かったり寒かったりで……あ、でも秋のアートノインもいいかも」
「一度でいいから行ってみたいね」
「大陸一周とかしてみたい!」
和気あいあいとそんな話をしていると彼らの目的地である食堂がある建物が見えてきた。
機工都市ルフスの中央にそびえたつ巨大な塔“機工式魔法障壁制御塔”、通称・中央塔。
ルフスのシンボルである中央塔は主に都市を覆う魔法障壁を制御、コントロールする他に“防衛部隊・フェンリル”の本部や“神剣研究所”の研究施設として利用されている。
レイル達が目指す食堂はこの“機工式・魔法障壁制御塔”全三十七階の四階のワンフロアにある。
本部と研究施設があるということで当然利用者は体育会系が集う防衛部隊員と文化系の研究員で食堂内はいつもアウトドア派とインドア派が入り乱れる両極端でカオスな状況となっている。
その両極端な利用者のニーズに答える為、この食堂には多彩なメニューが用意されていた。
そんな食堂の光景を見つつレイルは言った。
「今日も朝食選手権無差別級って感じの光景だ」
「みんなとっても仲良くお食事してるよねぇ」
早速二人は朝食の注文をするためにトレーを取り、比較的短い行列に並ぶ。しばらくして背後から声をかけられた。
「よっすレイル、ソアちん」
「おはようディアス」「おっはよ~」
声をかけたのはディアスだった。
「この時間にいるの、珍しいね」
「非番だかんな、こうして優雅に朝食をとれちゃうんでザマス」
「お、おう」
得意げにそう言うとディアスもトレーを取り、彼らと共に列に並んだ。
「ソアちんは今日演習あるだっけか?」
「そうなんだよね~だからたくさん食べておかないと!」
「ふっいい心がけだ。レイルは今日も遅くまで研究か?」
「えっと」
ジロリ、とソアの鋭い視線が刺さる。
「いや、今日は早めに帰る……よ」
「なんだ珍しい。明日は雪でも降るのかねぇ?」
「じゃあ毎日雪が降っちゃうねぇ」
「あ、あはは……」
列が進んで行き、レイル達の番がくる。
ソアは一般的な朝食(量多め)を頼みレイルは卵とソーセージ、そしてルフスの近くで採れるピリッと辛いイエローカラカラマッシュルームをパンで挟んだルフス特製ホットドック。
ディアスは軽めの朝食を頼んだつもりが何故か防衛部隊野郎共専用の『ドキッ肉だらけ!男は黙って肉セット!』を頼んだことになっていた。
「Why???」
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