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第一章 開幕の襲来
お肉と野菜と筋肉達磨
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眼前に現れた料理の名前とメニュー表に書いてある自分が選んだメニューの名前を記憶で照らし合わせる。
頼んだのは“あっさり豆スープ~魚介ちょい顔出し~”だ。
どう考えても違う――。
「あの、おば……おねーさん? 頼んでいたモノと違うんですけれども……なんというか、その普通朝からこんなもの頼まないですよね? それなのに何故俺のトレーにはこんな物理的にも精神的にも重いものが乗っかってらっしゃるのでしょうか」
「あん? サービスに決まってんだろう! 男はだまって肉を食いなさい! ねぇレイルちゃん」
「……。
そうだぞディアス、こんなんじゃリンクさんみたいになれないぞ」
「えぇええ……ナニソレェ……」
「さぁいつまでそこでゴボウみたいに突っ立ってるんだい! 行った行ったァ!」
これは、駄目だ。とディアスは深く溜息をついてカウンターから肉肉しく、とても朝に食べるものとは思えない『男は黙って肉セット』を受け取り席へと移動した。
「これは一種の体罰なのではないのでしょうかレイル博士」
「んー、面白いからオッケー」
「なんでや……」
席に移動している途中、近くのテーブルに座っている防衛部隊の人々が興味深いことを話しているのが耳に入った。
「知ってるか? お前」
「何が」
「最近よ、プリマヴェーラ各地で変な爆発事故が起きてるらしいのさ」
「爆発事故?」
「あぁ、ゼネラル騎士団が調査してるらしいが原因は不明、誰がやってるのかも皆目見当がつかないんだと」
「怪しいな」
「だろ? 事件の件で判ってるのは爆発が闇属性の魔法によるものということと、爆発の跡地が異様に黒く染まっていることだけ」
「ルフスに被害が及ばないといいが」
「幸い、フェンリルの管轄領域からは遠く離れた場所で発生してるらしい。ルフスを避けてるのかもしれねぇなぁ」
「ま、俺らに手を出したらどうなるか……ガキでもわかるからな」
「「ははははは」」
(闇の爆発か……)
「おまたせ」
ソアが待つ席にトレーを置いて、椅子に腰かける。
ディアスのトレーに乗っている大量の肉を見て「ほえー、同じ朝食とは思えないねぇ~」と、能天気にハムをつつきながらソアは言う。
「俺には絶対食べられない量だ、流石は防衛部隊員。まずは胃袋から鍛えるわけですねっ!」一方、完全に他人事のレイル。
「レイルてめぇ後で覚えとけよ!!」
ディアスはわんわんとわめきながらフォークで勢いよく肉を突き刺し、ぱくぱくと口の中に運んでいく。
その時、後方より誰かが言った。
『わんわん子犬みてぇに泣きながら食う肉は上手いか、ディアス』
「う、うるせぇ! この野郎……んん?」
俺の気も知らないで呑気なこと言いやがって!と不貞腐れているディアスの手がピタッと止まる。まるで彼だけ時間が止まったかのように。
そして(俺は今誰に向かってうるせぇ、って言ったんだ?)という素朴な疑問が浮かぶ。
知っている声だが声質は明らかにレイル達のものではない、もっと低くてまるで声帯にまでバキバキの筋肉がありそうな声――。
「ほう? 総隊長様に対してうるさいとは、貴様もずいぶんと偉くなったものだな。ディアス・フィルト?」
今度は違う声。
こちらも聞き覚えがある、というかこの声の主に虐められ過ぎて夢にまで出てきたくらい、ディアスの鼓膜にこびりついている声だ。
「えっ、まっ……ちょ……」
肉を噛む口が止まる、そして全身の穴という穴から冷や汗が溢れ出し眩暈にも似た感覚に陥った。
死を覚悟しつつ涙でうっすらとぼやけた視界を、視線を、ゆっくりと声の方向へ。
「朝からいい食べっぷりじゃねぇか、感心、歓心。それ美味いよな……俺も昼それにしよう」
「リ、りんふさん!! ろひたいひょー!」
「口にものを入れてガタガタ喋るな雑兵、汚らわしい殺すぞ」
そこに居たのはとても大きな、山のような大男と呼ぶに相応しい漢と凛とした整った顔立ちの美少年。
どちらもとても貫禄があった。それもそのはず。
「おはようございます、リンクさん」
「おう!おはようさん」
“リンク・クレイオス”
丸太のように太い腕、鍛え抜かれた肉体。ワイルドさを際立たせる無精ヒゲと黒髪オールバック。巨大という言葉は彼の為に存在するかのような大男。
この都市を魔の手から守る防衛部隊・フェンリルの総隊長を務める。
その隣にいる青髪の青年は“ロイ”。
若くして、選りすぐりの精鋭で構成された第一部隊の隊長を務める男。
「どうしたんですか? お二人ともこんな時間に」
「あぁ、ちょっとレイルに用があってな」
レイルは首を傾げながら答える。
「俺に、ですか?」
「闇の魔力に関する情報をまとめた資料、確かレイルが一度借りてたよな」
レイルは頭の中で一秒ほど考えて、最近使ったことを思い出しリンクの問いに声耐えた。
「はい、それならもう保管庫にしまってありますけど、もしかして使います?」
「その通り! いやぁちっとばかし昼の会議で使う事になってな。まぁいい、部下に探させておこう」
と言いつつチラリとディアスを見るリンク、ディアスは皆の顔をキョロキョロと見ながら自分を指差して「俺っすか!?」と言っているかのようなリアクションを取る。
レイルはくすりと笑いながら。
「それなら俺、この後保管庫に行く予定があるので昼までに見つけてあとで渡しに行きますよ」
「む、いいのか?」
「はい」
「そうか、んー悪いなレイル。今日晩御飯奢ってやる」
「ほっ」
安堵の溜息をつくディアスの頭を小突くリンク。
「お前は後で作戦室に来い」
「えっ!? 何でですか! 俺今日ひば……「大事な話だ」
ディアスの言葉を遮るロイ。ディアスは何か重大なことなのだと察し、一呼吸おいて「了解」とだけ答えた。
その後リンクとロイはレイル達と少し言葉を交わした後、総隊長室へと戻っていった。
頼んだのは“あっさり豆スープ~魚介ちょい顔出し~”だ。
どう考えても違う――。
「あの、おば……おねーさん? 頼んでいたモノと違うんですけれども……なんというか、その普通朝からこんなもの頼まないですよね? それなのに何故俺のトレーにはこんな物理的にも精神的にも重いものが乗っかってらっしゃるのでしょうか」
「あん? サービスに決まってんだろう! 男はだまって肉を食いなさい! ねぇレイルちゃん」
「……。
そうだぞディアス、こんなんじゃリンクさんみたいになれないぞ」
「えぇええ……ナニソレェ……」
「さぁいつまでそこでゴボウみたいに突っ立ってるんだい! 行った行ったァ!」
これは、駄目だ。とディアスは深く溜息をついてカウンターから肉肉しく、とても朝に食べるものとは思えない『男は黙って肉セット』を受け取り席へと移動した。
「これは一種の体罰なのではないのでしょうかレイル博士」
「んー、面白いからオッケー」
「なんでや……」
席に移動している途中、近くのテーブルに座っている防衛部隊の人々が興味深いことを話しているのが耳に入った。
「知ってるか? お前」
「何が」
「最近よ、プリマヴェーラ各地で変な爆発事故が起きてるらしいのさ」
「爆発事故?」
「あぁ、ゼネラル騎士団が調査してるらしいが原因は不明、誰がやってるのかも皆目見当がつかないんだと」
「怪しいな」
「だろ? 事件の件で判ってるのは爆発が闇属性の魔法によるものということと、爆発の跡地が異様に黒く染まっていることだけ」
「ルフスに被害が及ばないといいが」
「幸い、フェンリルの管轄領域からは遠く離れた場所で発生してるらしい。ルフスを避けてるのかもしれねぇなぁ」
「ま、俺らに手を出したらどうなるか……ガキでもわかるからな」
「「ははははは」」
(闇の爆発か……)
「おまたせ」
ソアが待つ席にトレーを置いて、椅子に腰かける。
ディアスのトレーに乗っている大量の肉を見て「ほえー、同じ朝食とは思えないねぇ~」と、能天気にハムをつつきながらソアは言う。
「俺には絶対食べられない量だ、流石は防衛部隊員。まずは胃袋から鍛えるわけですねっ!」一方、完全に他人事のレイル。
「レイルてめぇ後で覚えとけよ!!」
ディアスはわんわんとわめきながらフォークで勢いよく肉を突き刺し、ぱくぱくと口の中に運んでいく。
その時、後方より誰かが言った。
『わんわん子犬みてぇに泣きながら食う肉は上手いか、ディアス』
「う、うるせぇ! この野郎……んん?」
俺の気も知らないで呑気なこと言いやがって!と不貞腐れているディアスの手がピタッと止まる。まるで彼だけ時間が止まったかのように。
そして(俺は今誰に向かってうるせぇ、って言ったんだ?)という素朴な疑問が浮かぶ。
知っている声だが声質は明らかにレイル達のものではない、もっと低くてまるで声帯にまでバキバキの筋肉がありそうな声――。
「ほう? 総隊長様に対してうるさいとは、貴様もずいぶんと偉くなったものだな。ディアス・フィルト?」
今度は違う声。
こちらも聞き覚えがある、というかこの声の主に虐められ過ぎて夢にまで出てきたくらい、ディアスの鼓膜にこびりついている声だ。
「えっ、まっ……ちょ……」
肉を噛む口が止まる、そして全身の穴という穴から冷や汗が溢れ出し眩暈にも似た感覚に陥った。
死を覚悟しつつ涙でうっすらとぼやけた視界を、視線を、ゆっくりと声の方向へ。
「朝からいい食べっぷりじゃねぇか、感心、歓心。それ美味いよな……俺も昼それにしよう」
「リ、りんふさん!! ろひたいひょー!」
「口にものを入れてガタガタ喋るな雑兵、汚らわしい殺すぞ」
そこに居たのはとても大きな、山のような大男と呼ぶに相応しい漢と凛とした整った顔立ちの美少年。
どちらもとても貫禄があった。それもそのはず。
「おはようございます、リンクさん」
「おう!おはようさん」
“リンク・クレイオス”
丸太のように太い腕、鍛え抜かれた肉体。ワイルドさを際立たせる無精ヒゲと黒髪オールバック。巨大という言葉は彼の為に存在するかのような大男。
この都市を魔の手から守る防衛部隊・フェンリルの総隊長を務める。
その隣にいる青髪の青年は“ロイ”。
若くして、選りすぐりの精鋭で構成された第一部隊の隊長を務める男。
「どうしたんですか? お二人ともこんな時間に」
「あぁ、ちょっとレイルに用があってな」
レイルは首を傾げながら答える。
「俺に、ですか?」
「闇の魔力に関する情報をまとめた資料、確かレイルが一度借りてたよな」
レイルは頭の中で一秒ほど考えて、最近使ったことを思い出しリンクの問いに声耐えた。
「はい、それならもう保管庫にしまってありますけど、もしかして使います?」
「その通り! いやぁちっとばかし昼の会議で使う事になってな。まぁいい、部下に探させておこう」
と言いつつチラリとディアスを見るリンク、ディアスは皆の顔をキョロキョロと見ながら自分を指差して「俺っすか!?」と言っているかのようなリアクションを取る。
レイルはくすりと笑いながら。
「それなら俺、この後保管庫に行く予定があるので昼までに見つけてあとで渡しに行きますよ」
「む、いいのか?」
「はい」
「そうか、んー悪いなレイル。今日晩御飯奢ってやる」
「ほっ」
安堵の溜息をつくディアスの頭を小突くリンク。
「お前は後で作戦室に来い」
「えっ!? 何でですか! 俺今日ひば……「大事な話だ」
ディアスの言葉を遮るロイ。ディアスは何か重大なことなのだと察し、一呼吸おいて「了解」とだけ答えた。
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