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第一章 開幕の襲来
神剣研究所にて
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三時間後。
レイルは保管庫で資料を手に入れリンクに渡した後、神剣研究所で昨日の出来事を同僚の研究者達に話していた。
「神剣が喋った――ネェ」
メガネをくい、と上げて。白衣姿のひょろ長い男は言う。
「ほーん。興味深いっすね」気怠そうに茶髪パーマは毛先を弄りながらまるで興味なしのような態度で答える。
「やっぱり、誰かのイタズラなんですかね」
「マァ、そう考えるのが妥当だろう――ケド、決めつけるのはナンセンスだ」
メガネは独特の口調で語る。
「神剣は我々より上位の存在、世界を知る神がもたらした力。突然ふざけた喋りでレイルクンに接触を図ってもおかしくはナイ」
「……」
「しかしマァ、この剣が喋る機能、あるいは魔法を自発的に発動できるのであれバ。もっと早くに使って欲しかったものだがネ」
「ですよねぇ~……。あれ以来話しかけても、うんともすんとも言わないんです……」
「一先ず――。
この件は保留ダ。先ずは研究所内のメンバーとコンタクトを取り、入出記録もチェック。イタズラではないかを証明していこうじゃナイか」
「はい……!」
「あ、ちなみに。僕はそんなかったるいことしませんッスからねえ。 レイルさんがハードワーカーのやべぇ奴ってことには同意しますけど。直すのなら面と向かっていいますよ」
「私もだ。これに懲りたら少しは休息を取るのだゾ」
「あ、あはは……ソア達にも言われました。気を付けます」
「しかし、興味深い脅し文句を選んだものダ」
「というと?」
「使われていた闇の獣というワード。
……神話の時代、その圧倒的な力で大陸の七割を支配し、人々に恐怖の烙印を刻印して幾多の人々を生贄に捧げた邪神の遣い。創造神がこの世に降臨し、一人の勇者に神剣を授けるキッカケとなった存在で。
神剣使いと幾度に渡って激戦を繰り広げたという」
メガネはレイルに視線を向け、続ける。
「憶測だが、これ以上神剣に関わり続ければ君は神剣と完全に繋がった存在になってしまうと警告したかったのかもシレナイ。」
「完全に繋がる、ですか?」
「君は過去の事件で暴走中の神剣に接触したにも関わらず無事で済み、更には力を得た。これからも関わっていけば伝説の英雄神剣使いとして過酷な道を歩むことになるやもしれん」
レイルは自分の手に視線を落とし、ただ見つめる。
過去の事件、レイルがまだ幼い頃に起きた不慮の事故――。
「ちょっとぉメガネさん。レイル君に嫌な事思い出させないであげてくださいよ~」
「ム、すまないレイルクン。私は決してそういうわけでは……」
「んぇ? いえいえ全然、大丈夫ですよ!」
にこり、と作り笑いを浮かべる。
その脳裏である出来事がフラッシュバックされる。
もう何年前のことなのだろうか、十年が経過した頃だろうか?
それ程の年月が経過していても、こうして思い出すと胸をえぐられる気持ちになる。
今とあまり変わらない神剣研究所で幼い自分が見てしまったモノが鮮明に蘇る――。
物心つく前にレイルは母親を亡くした、父親から聞いた話では村を襲った魔物の仕業だという。それからレイルは父親と共に過ごし、男手ひとつで育てられたレイルの中で父親という存在はとても大きく偉大なものになっていた。
父は優秀な研究者だった。
当時失われていたとされていた神剣が発掘され、此処ルフスで神剣の研究が開始された時、父は神剣研究所の初期メンバーとして活動していた。
レイルはそれがとても誇らしかった。大人になったら父のような人になろうと本気で思っていた。
しかしある日、実験中に神剣が暴走。
父はその暴走に巻き込まれ命を落とした――。
諸事情で実験に参加していたレイルは目の前でソレを見てしまった。
神剣の光に包まれて苦しみもがく父の姿を。
当時の記憶は今でも鮮明に頭にこびり付いていた。
「兎に角」
メガネの声でレイルの意識が現実に引き戻される。
いつの間にか茶髪パーマの手がレイルの左肩に置かれていた。
「今日はもう帰りたまエ」
「えっ、でもまだ昼「い~からいいから。構いませんよ一日二日あなたが居なくたって僕らだけで何とか出来ますんで。それとも僕らを信用してないんですかぁ~?」
「なっ、そういう訳じゃないけど……!」
あの事件以来、神剣は暴走状態を保ったままとなり、あの日最初に神剣に触れたレイル以外誰も神剣に触れることができなくなってしまった。
何故自分にしか触れることができないのか、その理由はまだ解明できていない。だからこそ何かあった時の為に自分は常に神剣の傍にいるべきなのだとレイルは考えていた。
「心配ゴ無用、何かあったら私の転移魔法で呼びにいきますのデ」
「この人。転移魔法の才能だけはピカイチっすからね~」
「だけとは何だだけとは。君こそ怠けるくらいの才能しかないのではないか?」
「ほほ~ん。言いますねえ」
(あと、この二人だけにすると何が起こるか判らないからってのもあるんだけど……あ、あははは……)
メガネと茶髪パーマのいがみ合いを苦笑いしつつ眺めながらレイルはふぅ、と小さく息を吐いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えても……」
「ム。そうしたまえ」
「へいへい~。そんじゃお疲れさまッス! レイルさん」
こうしてレイルは昼間の内から自由の身となるのであった。
レイルは保管庫で資料を手に入れリンクに渡した後、神剣研究所で昨日の出来事を同僚の研究者達に話していた。
「神剣が喋った――ネェ」
メガネをくい、と上げて。白衣姿のひょろ長い男は言う。
「ほーん。興味深いっすね」気怠そうに茶髪パーマは毛先を弄りながらまるで興味なしのような態度で答える。
「やっぱり、誰かのイタズラなんですかね」
「マァ、そう考えるのが妥当だろう――ケド、決めつけるのはナンセンスだ」
メガネは独特の口調で語る。
「神剣は我々より上位の存在、世界を知る神がもたらした力。突然ふざけた喋りでレイルクンに接触を図ってもおかしくはナイ」
「……」
「しかしマァ、この剣が喋る機能、あるいは魔法を自発的に発動できるのであれバ。もっと早くに使って欲しかったものだがネ」
「ですよねぇ~……。あれ以来話しかけても、うんともすんとも言わないんです……」
「一先ず――。
この件は保留ダ。先ずは研究所内のメンバーとコンタクトを取り、入出記録もチェック。イタズラではないかを証明していこうじゃナイか」
「はい……!」
「あ、ちなみに。僕はそんなかったるいことしませんッスからねえ。 レイルさんがハードワーカーのやべぇ奴ってことには同意しますけど。直すのなら面と向かっていいますよ」
「私もだ。これに懲りたら少しは休息を取るのだゾ」
「あ、あはは……ソア達にも言われました。気を付けます」
「しかし、興味深い脅し文句を選んだものダ」
「というと?」
「使われていた闇の獣というワード。
……神話の時代、その圧倒的な力で大陸の七割を支配し、人々に恐怖の烙印を刻印して幾多の人々を生贄に捧げた邪神の遣い。創造神がこの世に降臨し、一人の勇者に神剣を授けるキッカケとなった存在で。
神剣使いと幾度に渡って激戦を繰り広げたという」
メガネはレイルに視線を向け、続ける。
「憶測だが、これ以上神剣に関わり続ければ君は神剣と完全に繋がった存在になってしまうと警告したかったのかもシレナイ。」
「完全に繋がる、ですか?」
「君は過去の事件で暴走中の神剣に接触したにも関わらず無事で済み、更には力を得た。これからも関わっていけば伝説の英雄神剣使いとして過酷な道を歩むことになるやもしれん」
レイルは自分の手に視線を落とし、ただ見つめる。
過去の事件、レイルがまだ幼い頃に起きた不慮の事故――。
「ちょっとぉメガネさん。レイル君に嫌な事思い出させないであげてくださいよ~」
「ム、すまないレイルクン。私は決してそういうわけでは……」
「んぇ? いえいえ全然、大丈夫ですよ!」
にこり、と作り笑いを浮かべる。
その脳裏である出来事がフラッシュバックされる。
もう何年前のことなのだろうか、十年が経過した頃だろうか?
それ程の年月が経過していても、こうして思い出すと胸をえぐられる気持ちになる。
今とあまり変わらない神剣研究所で幼い自分が見てしまったモノが鮮明に蘇る――。
物心つく前にレイルは母親を亡くした、父親から聞いた話では村を襲った魔物の仕業だという。それからレイルは父親と共に過ごし、男手ひとつで育てられたレイルの中で父親という存在はとても大きく偉大なものになっていた。
父は優秀な研究者だった。
当時失われていたとされていた神剣が発掘され、此処ルフスで神剣の研究が開始された時、父は神剣研究所の初期メンバーとして活動していた。
レイルはそれがとても誇らしかった。大人になったら父のような人になろうと本気で思っていた。
しかしある日、実験中に神剣が暴走。
父はその暴走に巻き込まれ命を落とした――。
諸事情で実験に参加していたレイルは目の前でソレを見てしまった。
神剣の光に包まれて苦しみもがく父の姿を。
当時の記憶は今でも鮮明に頭にこびり付いていた。
「兎に角」
メガネの声でレイルの意識が現実に引き戻される。
いつの間にか茶髪パーマの手がレイルの左肩に置かれていた。
「今日はもう帰りたまエ」
「えっ、でもまだ昼「い~からいいから。構いませんよ一日二日あなたが居なくたって僕らだけで何とか出来ますんで。それとも僕らを信用してないんですかぁ~?」
「なっ、そういう訳じゃないけど……!」
あの事件以来、神剣は暴走状態を保ったままとなり、あの日最初に神剣に触れたレイル以外誰も神剣に触れることができなくなってしまった。
何故自分にしか触れることができないのか、その理由はまだ解明できていない。だからこそ何かあった時の為に自分は常に神剣の傍にいるべきなのだとレイルは考えていた。
「心配ゴ無用、何かあったら私の転移魔法で呼びにいきますのデ」
「この人。転移魔法の才能だけはピカイチっすからね~」
「だけとは何だだけとは。君こそ怠けるくらいの才能しかないのではないか?」
「ほほ~ん。言いますねえ」
(あと、この二人だけにすると何が起こるか判らないからってのもあるんだけど……あ、あははは……)
メガネと茶髪パーマのいがみ合いを苦笑いしつつ眺めながらレイルはふぅ、と小さく息を吐いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えても……」
「ム。そうしたまえ」
「へいへい~。そんじゃお疲れさまッス! レイルさん」
こうしてレイルは昼間の内から自由の身となるのであった。
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