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第一章 開幕の襲来
礼装開放
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頭上に輝く太陽に照らされながら、ふらふらと大通りを歩く。
こんな時間に昼食を取る以外で外に出ることはあまりないレイルは適当に歩いて辿りついた近くの公園のベンチに腰掛けて何をしようか、と考えることにした。
「うーん」
せっかく時間があるのだ、何か有意義なことをしよう。
例えば何処か美味しいランチが食べられるお店に行ってみる、とか自分でご飯を作ってみたり……。
(でもそういうのって誰かと一緒の方が楽しいよなぁ)
誰か暇な人いないかなと知り合いの顔を思い浮かべても、今日は祝日ではない。みんなそれぞれ仕事がある。
(……困ったな)
思考すること数分、結局レイルは考えがまとまらずふらふらと歩き始めることにした。
機工都市ルフスはおおまかに三つのブロックに分けられている。
防衛部隊の施設や研究所がある中央区、商店が並ぶ商業区、都市に住まう人々が暮らす居住区。それぞれの割合は4:3:3……といった感じだろう、居住区と同じくらい商業区は広く賑わっている。
昼時ともあっていつも以上に活気のある商業区をきょろきょろと見て回り、レイルは一つ気になったお店があったので意を決してそこに入ることにした。
店の看板にはこう書いてあった。
『激辛専門店・熱傷悪魔』中々に物騒な店名だ……。
―――――
魔法研究所 第七魔法研究室。
ソアは昨日レイル達が持ってきた魔法礼装を調べていたが、これといった成果を得られずにソアは頭を抱えていた。
赤い線の入った炭の黒い十字架の魔法礼装について解っていることは少ない、明確に解っていることと言えば装備者に魔力無効化の効果を与えることのみ。そしてこの礼装自体にもその効果が発生しているということ。
どのようにして作られたのか、その出どころは。レイル達が気になっていることは何一つ解明されていない。
(魔法の痕跡を調べようにも……魔法礼装が全部跳ね返しちゃうし)
道具に蓄積された時間を読み取る魔法や、道具に触れた者の情報を引き出す魔法等……自分が習得している役に立ちそうな魔法を片っ端から試してみても、魔法礼装の効果によって弾かれてしまう。
(礼装本体の状態から何か判るかもって思ったけど、魔法都市、古代アレア文明、呪術……どの様式にも使われてない意味不明な技法で作られてるみたいだし。出どころもちんぷんかんぷん!)
はぁ、と深いため息をつき背もたれに寄りかかる。
「私一人じゃ無理だなぁ、おとなしく先輩たちに手伝ってもーらお……。
気が緩んだらお腹すいちゃった、お昼ご飯たーべよ」
黒い十字架から視線を逸らし、昼食用にと買ってきたサンドイッチに手を伸ばそうとしたその時だった。
キィン――。
鼓膜を僅かに刺激する謎の音と肌を通り過ぎて行く微弱な魔力。それを見逃さなかったソアはその発信源である黒い十字架に視線を戻す。
十字架の皹に入った赤い線が光っている。
(何かに反応している……?)
ソアは椅子から立ち上がりそれに触れようとした。
「これは――。きゃっ!?」
刹那、沈黙を貫いていた黒い十字架が突然活動を開始、十字架を包んでいた魔法礼装の効果が消え、抑え込んでいたと思われる礼装の“動力源”である膨大な量の魔力を強力なパルスとして放出。
魔力パルスは周囲の機工装置を瞬く間に破壊し、パルスの効力を保ったまま広範囲に広がっていく。
魔力パルスは魔法研究所全体の機工装置をショートさせ、中央区全体へと広がっていき、やがて機工都市全域を包み込むほどに範囲を拡大。
都市に存在する全ての機工装置を強制的に停止させた。
当然、空を飛ぶ白い鉄の鳥や、都市を覆っていた魔法防御障壁の制御装置も、都市を守る全ての機工も完全に止まってしまった。
都市に住む人々が異変に気付いたのは、暫くして激しい地鳴りと上空から雷鳴の如く響く轟音、空を暗闇が覆い、まだ来るはずもない“夜”が訪れてからだった――。
「なん……だ」
外が急に暗くなり、人々は空を見上げる。そこにあったのは漆黒、星の光などないただ見渡す限り黒い空と感じたことも無い胸を締め付けるような嫌な魔力。
開幕は襲来した――。
こんな時間に昼食を取る以外で外に出ることはあまりないレイルは適当に歩いて辿りついた近くの公園のベンチに腰掛けて何をしようか、と考えることにした。
「うーん」
せっかく時間があるのだ、何か有意義なことをしよう。
例えば何処か美味しいランチが食べられるお店に行ってみる、とか自分でご飯を作ってみたり……。
(でもそういうのって誰かと一緒の方が楽しいよなぁ)
誰か暇な人いないかなと知り合いの顔を思い浮かべても、今日は祝日ではない。みんなそれぞれ仕事がある。
(……困ったな)
思考すること数分、結局レイルは考えがまとまらずふらふらと歩き始めることにした。
機工都市ルフスはおおまかに三つのブロックに分けられている。
防衛部隊の施設や研究所がある中央区、商店が並ぶ商業区、都市に住まう人々が暮らす居住区。それぞれの割合は4:3:3……といった感じだろう、居住区と同じくらい商業区は広く賑わっている。
昼時ともあっていつも以上に活気のある商業区をきょろきょろと見て回り、レイルは一つ気になったお店があったので意を決してそこに入ることにした。
店の看板にはこう書いてあった。
『激辛専門店・熱傷悪魔』中々に物騒な店名だ……。
―――――
魔法研究所 第七魔法研究室。
ソアは昨日レイル達が持ってきた魔法礼装を調べていたが、これといった成果を得られずにソアは頭を抱えていた。
赤い線の入った炭の黒い十字架の魔法礼装について解っていることは少ない、明確に解っていることと言えば装備者に魔力無効化の効果を与えることのみ。そしてこの礼装自体にもその効果が発生しているということ。
どのようにして作られたのか、その出どころは。レイル達が気になっていることは何一つ解明されていない。
(魔法の痕跡を調べようにも……魔法礼装が全部跳ね返しちゃうし)
道具に蓄積された時間を読み取る魔法や、道具に触れた者の情報を引き出す魔法等……自分が習得している役に立ちそうな魔法を片っ端から試してみても、魔法礼装の効果によって弾かれてしまう。
(礼装本体の状態から何か判るかもって思ったけど、魔法都市、古代アレア文明、呪術……どの様式にも使われてない意味不明な技法で作られてるみたいだし。出どころもちんぷんかんぷん!)
はぁ、と深いため息をつき背もたれに寄りかかる。
「私一人じゃ無理だなぁ、おとなしく先輩たちに手伝ってもーらお……。
気が緩んだらお腹すいちゃった、お昼ご飯たーべよ」
黒い十字架から視線を逸らし、昼食用にと買ってきたサンドイッチに手を伸ばそうとしたその時だった。
キィン――。
鼓膜を僅かに刺激する謎の音と肌を通り過ぎて行く微弱な魔力。それを見逃さなかったソアはその発信源である黒い十字架に視線を戻す。
十字架の皹に入った赤い線が光っている。
(何かに反応している……?)
ソアは椅子から立ち上がりそれに触れようとした。
「これは――。きゃっ!?」
刹那、沈黙を貫いていた黒い十字架が突然活動を開始、十字架を包んでいた魔法礼装の効果が消え、抑え込んでいたと思われる礼装の“動力源”である膨大な量の魔力を強力なパルスとして放出。
魔力パルスは周囲の機工装置を瞬く間に破壊し、パルスの効力を保ったまま広範囲に広がっていく。
魔力パルスは魔法研究所全体の機工装置をショートさせ、中央区全体へと広がっていき、やがて機工都市全域を包み込むほどに範囲を拡大。
都市に存在する全ての機工装置を強制的に停止させた。
当然、空を飛ぶ白い鉄の鳥や、都市を覆っていた魔法防御障壁の制御装置も、都市を守る全ての機工も完全に止まってしまった。
都市に住む人々が異変に気付いたのは、暫くして激しい地鳴りと上空から雷鳴の如く響く轟音、空を暗闇が覆い、まだ来るはずもない“夜”が訪れてからだった――。
「なん……だ」
外が急に暗くなり、人々は空を見上げる。そこにあったのは漆黒、星の光などないただ見渡す限り黒い空と感じたことも無い胸を締め付けるような嫌な魔力。
開幕は襲来した――。
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