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第一章 開幕の襲来
戦闘開始・第五部隊
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魔物の襲撃時。
居住区や施設への被害を抑えるため、都市の正門から都市の中心にある中央塔を繋ぐ大通りの両脇に巨大な壁が魔法と機工技術によって防御壁“ル・アイアスの壁”が生成され。
大通りにはその道を遮るように四つの土属性防御壁魔法“土門”が展開される。
神剣を保管し十数年、その力に惹かれ現れる魔物等による幾度に渡る襲撃に対して生み出された機工都市ルフス、最大の防御陣形。
数多の機工装置と鉄の壁、一騎当千の戦士達による肉の壁。それらによって完成された難攻不落の城塞よりも強く強固。堅牢無比の盾。
突破した者は皆無――。
機工都市ルフス・正門前。
第五防衛部隊総数四十。
後方支援部隊総数五十。
第五部隊。
かつて都市の機工技術がまだ万能では無く、魔物の襲撃が頻繁に起きていた頃。
時間を問わず行われる魔物との戦闘、それにも関わらず都市の民は誰も不安や不満を抱かなかった。
当然、初期の頃は反感や反対運動も勃発したが、今では誰もがそれを日常として受け入れている。
何故なら、防衛部隊が確かな力による確固たる信頼を獲得したからだ。
正門を守る第五部隊は、どのような敵がどのように攻めてこようともそのことごとくを撃退。一ミリたりとも魔物が都市を侵すことは無かった。
卓越された盾の技と統率の取れた動き。故に彼らはこう呼ばれていた。
“鉄壁”と。
近接戦闘及び防御手段な豊富な第五部隊と魔法使いで構成された後方支援部隊が本部からの指示を受けて、それぞれ配置につく。
防衛部隊が装備する大型の盾“タワーシールド”がズラリと並ぶ様は確かに鉄壁と呼ぶに相応しい。
第五部隊の部隊長は後方支援部隊に指示を出す。
「第一から第二魔法射出隊、魔法詠唱開始!」
正門崩壊あと数十秒。
数多の魔物の攻撃により正門に亀裂が走る。魔物の唸り声や悲鳴、ありとあらゆる魔の者の音がその亀裂からこちら側に漏れ、空間を漂う。
あと十秒。
正門に小さな穴が開き、瓦礫が地に落ちる。
その穴から一瞬見えた魔物の瞳、そこから感じられるものは殺意のみ、知性的なものは何もない。
武器を握るその手に力が籠る。今から戦う者が完全に人ならざる者であり強い残虐性を持つ獣だと理解する。
あと、三秒。
正門全体に亀裂が走る。
二秒。
部隊長が隊員達に向けていた視線を正門に戻す。
一秒。
零秒――。
正門の崩壊と共に押し寄せる魔の軍勢。
物理的に遮られていた魔物のうめき声が瓦礫が崩れる音と共に隊員達の鼓膜を刺激する。
およそ数百の魔物がなだれ込んでくるその光景は圧巻の一言。例えるなら地獄絵図。
蛇のような頭をした化け物が、四足の化け物が緑色の肌をした巨体の化け物が、人とは違う姿形をしたありとあらゆる魔の塊が一斉にこちらに向かってくる。
「ふん。どいつもこいつも面白い顔だ、後方支援部隊、その顔に一つぶち込んでやれ……!!」
詠唱を終えた第一射出隊が赤く燃え盛る掌を天に向けた。
赤く燃え盛る火の弾が防衛部隊の頭上を通り越して、魔物へと迫る。
眼前に迫る魔法に対して防御策を講じてくる様子は無い。この魔物等にまともな思考能力は無く、ただ本能のままに動いているようだ。
魔物とは世界の淵と呼ばれる何処かにある“穴”から這い出る“闇”より生まれる“負の産物”。今もこの世界の何処かで絶えず産み落とされている。
今、都市に侵攻してきている魔物はそのどれもが使い捨ての粗悪品、ろくな知能も持ち合わせていない下級の存在だろう。
その証拠に後方支援部隊が放った火属性の魔法は何物にも拒まれぬまま、魔物の群れに着弾、爆発と共に何十体もの魔物が消滅。
闇の粒子となりこの世界から消えていく。
「第二射出隊! 発射!」
続けざまに魔法の発射を命じる。
先程放たれた炎弾よりも高位の魔法、炎の槍が一斉に放たれる、鋭い矛をもった炎の槍は空気を貫き一直線に発射され、鋭い一突きが魔物達に襲い掛かる。
その槍は魔物の身体を一体貫いただけでは勢いは止まらず、次々とその矛で貫き燃やしていく。
やがて、数十体もの魔物を射貫いた炎の槍は内包された魔力を解放し広範囲を巻き込む炎の爆発を発生させた。
爆発音、魔法音、断末魔、あらゆる音が入り交じる。
爆煙によって遮られた視界、飛び散る火の粉を盾で受け止めつつ煙の中で蠢くソレに意識を向ける。
「ゴァアアア!」
爆煙を破り、僅かな火傷を負った牛頭の魔物が複数接近、その丸太のような腕で人の身体よりも数倍は大きい棍棒を振り下ろす。
当たればひとたまりもない質量での叩き付け、だがそれを前にして隊員達は物怖じせずただ、盾を構えた。
彼らは重厚なタワーシールドで自身より一回り以上は大きい棍棒を完全に防ぎ、ただの人の力で2メートル以上はあるであろう牛頭の魔物を押し返した。
バランスを奪われた牛頭に、別の隊員の追撃。鋭い鉄の槍がその巨体に突き刺さり命を絶つ。
数多くの訓練と経験を積んだ第五部隊を前に為す術無く倒されていく魔物達。
(所詮は有象無象の集まり、どれもが取るに足らぬ。ならばここは慎重さを捨て一気に畳みかける!)
「このまま一気に押し攻めるぞ!」
勝てる、そう確信した。
部隊長の命令を受け、隊員達は前進を開始。
それを支援するように後方より一斉に魔法が発射される。
その時、様々な音が響くこの戦場で誰もがその雄たけびを耳にした。
「Giiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!!!!!!!!!!!!」
居住区や施設への被害を抑えるため、都市の正門から都市の中心にある中央塔を繋ぐ大通りの両脇に巨大な壁が魔法と機工技術によって防御壁“ル・アイアスの壁”が生成され。
大通りにはその道を遮るように四つの土属性防御壁魔法“土門”が展開される。
神剣を保管し十数年、その力に惹かれ現れる魔物等による幾度に渡る襲撃に対して生み出された機工都市ルフス、最大の防御陣形。
数多の機工装置と鉄の壁、一騎当千の戦士達による肉の壁。それらによって完成された難攻不落の城塞よりも強く強固。堅牢無比の盾。
突破した者は皆無――。
機工都市ルフス・正門前。
第五防衛部隊総数四十。
後方支援部隊総数五十。
第五部隊。
かつて都市の機工技術がまだ万能では無く、魔物の襲撃が頻繁に起きていた頃。
時間を問わず行われる魔物との戦闘、それにも関わらず都市の民は誰も不安や不満を抱かなかった。
当然、初期の頃は反感や反対運動も勃発したが、今では誰もがそれを日常として受け入れている。
何故なら、防衛部隊が確かな力による確固たる信頼を獲得したからだ。
正門を守る第五部隊は、どのような敵がどのように攻めてこようともそのことごとくを撃退。一ミリたりとも魔物が都市を侵すことは無かった。
卓越された盾の技と統率の取れた動き。故に彼らはこう呼ばれていた。
“鉄壁”と。
近接戦闘及び防御手段な豊富な第五部隊と魔法使いで構成された後方支援部隊が本部からの指示を受けて、それぞれ配置につく。
防衛部隊が装備する大型の盾“タワーシールド”がズラリと並ぶ様は確かに鉄壁と呼ぶに相応しい。
第五部隊の部隊長は後方支援部隊に指示を出す。
「第一から第二魔法射出隊、魔法詠唱開始!」
正門崩壊あと数十秒。
数多の魔物の攻撃により正門に亀裂が走る。魔物の唸り声や悲鳴、ありとあらゆる魔の者の音がその亀裂からこちら側に漏れ、空間を漂う。
あと十秒。
正門に小さな穴が開き、瓦礫が地に落ちる。
その穴から一瞬見えた魔物の瞳、そこから感じられるものは殺意のみ、知性的なものは何もない。
武器を握るその手に力が籠る。今から戦う者が完全に人ならざる者であり強い残虐性を持つ獣だと理解する。
あと、三秒。
正門全体に亀裂が走る。
二秒。
部隊長が隊員達に向けていた視線を正門に戻す。
一秒。
零秒――。
正門の崩壊と共に押し寄せる魔の軍勢。
物理的に遮られていた魔物のうめき声が瓦礫が崩れる音と共に隊員達の鼓膜を刺激する。
およそ数百の魔物がなだれ込んでくるその光景は圧巻の一言。例えるなら地獄絵図。
蛇のような頭をした化け物が、四足の化け物が緑色の肌をした巨体の化け物が、人とは違う姿形をしたありとあらゆる魔の塊が一斉にこちらに向かってくる。
「ふん。どいつもこいつも面白い顔だ、後方支援部隊、その顔に一つぶち込んでやれ……!!」
詠唱を終えた第一射出隊が赤く燃え盛る掌を天に向けた。
赤く燃え盛る火の弾が防衛部隊の頭上を通り越して、魔物へと迫る。
眼前に迫る魔法に対して防御策を講じてくる様子は無い。この魔物等にまともな思考能力は無く、ただ本能のままに動いているようだ。
魔物とは世界の淵と呼ばれる何処かにある“穴”から這い出る“闇”より生まれる“負の産物”。今もこの世界の何処かで絶えず産み落とされている。
今、都市に侵攻してきている魔物はそのどれもが使い捨ての粗悪品、ろくな知能も持ち合わせていない下級の存在だろう。
その証拠に後方支援部隊が放った火属性の魔法は何物にも拒まれぬまま、魔物の群れに着弾、爆発と共に何十体もの魔物が消滅。
闇の粒子となりこの世界から消えていく。
「第二射出隊! 発射!」
続けざまに魔法の発射を命じる。
先程放たれた炎弾よりも高位の魔法、炎の槍が一斉に放たれる、鋭い矛をもった炎の槍は空気を貫き一直線に発射され、鋭い一突きが魔物達に襲い掛かる。
その槍は魔物の身体を一体貫いただけでは勢いは止まらず、次々とその矛で貫き燃やしていく。
やがて、数十体もの魔物を射貫いた炎の槍は内包された魔力を解放し広範囲を巻き込む炎の爆発を発生させた。
爆発音、魔法音、断末魔、あらゆる音が入り交じる。
爆煙によって遮られた視界、飛び散る火の粉を盾で受け止めつつ煙の中で蠢くソレに意識を向ける。
「ゴァアアア!」
爆煙を破り、僅かな火傷を負った牛頭の魔物が複数接近、その丸太のような腕で人の身体よりも数倍は大きい棍棒を振り下ろす。
当たればひとたまりもない質量での叩き付け、だがそれを前にして隊員達は物怖じせずただ、盾を構えた。
彼らは重厚なタワーシールドで自身より一回り以上は大きい棍棒を完全に防ぎ、ただの人の力で2メートル以上はあるであろう牛頭の魔物を押し返した。
バランスを奪われた牛頭に、別の隊員の追撃。鋭い鉄の槍がその巨体に突き刺さり命を絶つ。
数多くの訓練と経験を積んだ第五部隊を前に為す術無く倒されていく魔物達。
(所詮は有象無象の集まり、どれもが取るに足らぬ。ならばここは慎重さを捨て一気に畳みかける!)
「このまま一気に押し攻めるぞ!」
勝てる、そう確信した。
部隊長の命令を受け、隊員達は前進を開始。
それを支援するように後方より一斉に魔法が発射される。
その時、様々な音が響くこの戦場で誰もがその雄たけびを耳にした。
「Giiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!!!!!!!!!!!!」
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